第11話 ちょっと大事な話があって

 いやはや、飛鳥ちゃんもいい相棒を見つけれて本当によかった。これで私もひと安心と言うやつだよ。

 クランに用事の有った私は社内を歩く。

 前のパーティ…アルモニア?だっけ?たしかにあっちのほうがパーティとしての完成度は高い。でも、長年寄り添った私なら解る。


「蒼井 一樹くん…いいねぇ。」


 彼にしか、彼女は任せられない。さてと…にしても人使いの荒い人だなぁ。その扉の前に立ちノックする。


「三浦です。」


「おお、梨央か入れ。」


 中からそう聞こえた。扉を開けた先にいたのは初老の男性。このクランの創設者でもあり、現在人類最強とも呼ばれた男、三浦 壮介そうすけ。私の父だ。


「おや、ご機嫌だね。」


「まあ、ちょっとね。それで、用件は?」


「まあ、焦るな。時に、ダンジョンが形成され始め今年で何年目になるか解るか?」


「10年…ぴったりだったかな?」


「そうだ。そしてその数は今も増え続けている。」


「そうだね。」


「最近の研究でダンジョンには核があり、それを中心に形成されることが解った。」


「…もったいぶるね。本題は?」


「ここからだ。その核の危険性。それから今後についての話し合いだ。」


「核の危険性?」


「おまえもダンジョンに潜る身だ。解るだろう?あの高揚感。」


 たしかに、ダンジョンに入ると直前まで冷静でも多少高揚感に支配される。


「あれは、核のもたらす影響だと解った。」


「なんだって!?」


「これ以上のことはまだ調査中だ。その核に汚染され続けたものがどうなるか…まだ解っていない。」


「な、なるほど…読めてきたよ。これから私はダンジョンに潜り続けるかどうか…と言うことだね?」


「ああ、そうだ。」


「潜るよ。私は。」


「…やはり、そうなるよな。もはやこの『探索者』と言う職業が生まれてしまった以上、この情報も公には開示はできん。その事はくれぐれも頼む。」


「解ったよ…。」


 そこでふとよぎったのは彼の存在。ダンジョンにはいる時の高揚感は核がもたらすもの…。


「父さん。私からも1ついい?」


「なんだ?」


「ダンジョンの中に取り残され、数年間生き延びた青年に会った。」


「なんだと!?」


「私が見るに、彼は随分と普通に見えた。もしかしたらその影響を凌ぐなにかを持っているかもしれない…。」


「その青年の名は?」


「蒼井 一樹…。」


「蒼井くん…か。その青年にコンタクトをとることは?」


「可能だけど…どうだろう?彼はたぶん、レオンに属しているから私たちじゃどうしようもないよ。」


「そうか…。いや、レオンであれば多少話しはつくかもしれん。センチピードの連中よりかな。」


「そうだね。私のほうからも話しは回しておくよ。」


 と、言うわけで家族会議は終了する。色々と考えなければならないことはあるが、ともかく…この状況は飛鳥ちゃんに連絡をいれなければ。

 スマホを取り出し、手早く彼女の連絡先を開く。


「うーん…。」


 少し考え、キーボードを打つ。


『明日時間ある?』


 そう送るとすぐに『あるよ』と返ってきた。


『ちょっと大事な話があって、蒼井くんと一緒に来れるかい?』


 そう送ると、大丈夫!と絵文字つきで送られてきた。集合場所は行きつけのカフェにする。


「さてと…探索者…これからどうなっていくことやら。」


―――――――――――――――


「…クソが…クソが!!」


 力任せに机を叩きつけた。薄暗い部屋。青白いモニターに写し出される自分の配信。

 燃えた。

 何が行けなかった?皆刺激を求めてるんだろ?皆エモさを求めてるんだろ?見せてやったじゃないか?かつての仲間を救出する物語を。


「どいつもこいつも…。」


 あいつらだって、私よりもアスカのことばかり。


 そんなとき、インターホンがなった。生憎と、今出ていくような気力はない。


『あれ、二宮にのみやさーん?』


 何度も何度も…聞きなれない声とインターホンが鳴り響く。


「チッ…うぜぇなぁ!!」


 どうしようもないので、仕方なく応答する。


「誰だよ、ったく。」


 ボソッと呟き、扉を開けた。


「あぁ、やっぱりいた。」


 宅配業者かと思ったが、裏腹にそこにいたのは黒いスーツを着た男性だった。


「私、こういうものでして。」


 そう言って名刺を差し出された。


 クラン センチピード

人事部 百出ももで 春仁はると


「二宮 天音あまねさんですね?うちのクランに入ってみませんか?」

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