第10話 3倍アイスクリィィイム!!!

 男女2人、町中を歩く…これってなんかすごく…。


「デートみたいだね?」


「ひゃい?」


 まって、すっごい変な声出た。


「ちょ、緊張しすぎだって。」


「す、すみません…。」


「もう、本当に堅いんだから。」


 そうやって笑う七瀬さん。サングラス越しに柔らかい目元が見える。そんな彼女にどこか惹かれてしまう。

 はっきり言おう。俺に女性経験なんてあるわけ無いだろ!!こちとら数年ダンジョンに引きこもってた(引きこもらざるを得なかった)陰キャやぞ!!

 自分で言ってなんだがそんなに自信を持つことではない。


 そうして、俺たちは目的のデパートへと到着する。


「それじゃ、行きつけの場所紹介してあげる!」


「行きつけの場所…?」


 ―――――おい…おいおい、たけぇなぁ!おい!!


「こ、これ…ハイブランドものでは?」


「そうだよ?」


「いやいやいや!いくら行きつけとはいえこんなに高いの…。」


「解ってないねぇ新米探索者くん。いいかい?ここのブランドは主に探索者をターゲットとしている。一見薄い生地であっても見た目よりも丈夫だし耐熱性があるものもある。自分の身を守るものなんだから妥協なんてしてられないよ?」


「は、はあ。たしかにそうですけど…。」


「あー!今君、普通の防具でいいのでは?とか思ったでしょ?」


 エスパーか何かかな…?


「ほら、約束したでしょ?一緒に配信しようって。なら、多少身なりに気を付けてもらわないと困るのです!」


 そうだった…そう言えばそんなこと約束したんだった…色々ありすぎて完全に抜け落ちてたわ。


「な、納得です。」


 そう言うわけで言いくるめられ…あれやこれやと買って行って…。


「…!?」


「いつもありがとうございます!アスカさん!」


「いえいえ!またお願いします!」


「!?!?」


 待て…これ俺桁間違ってないよな?あかん…駄目だこれ…感覚がイカれちまう。


「ん?どうかしたの?」


「い、いえ…何も…。」


 なんも…言えねぇです。

 いやぁ…俺は庶民の感覚覚えとくようにしないと。何て考えていると聞きなれない声が聞こえてきた。


「あれ?飛鳥ちゃん?」


「ん?え、梨央りおちゃん?」


 振り替えると随分と小柄な女の子。え?誰?


「無事だったんだね!!本当に心配したんだから!!」


「ごめんね、心配かけちゃって。」


 そんな風に仲睦まじく抱き合われても…また俺置いてけぼりですか?


「ん?そこの彼はもしかして?」


「そう、私を助けてくれた―――――。」


「彼氏くん?」


「…いやいやいや!違います!!」


 なんでそうなった…。


「あ、そうなの?」


「えと…あのダンジョン内で知り合っただけですよ。」


「の、割には仲良さそうだね?どうなんだい、飛鳥ちゃん?実のところ?」


「ほ、本当に助けてもらっただけで…そ、そう言う関係じゃないから…!!」


「ほう…詳しく聞いても?」


 めちゃくちゃ興味津々じゃん。

 そう言うわけで俺たちはフードコートに来ていた。


「梨央ちゃん、相変わらずそれ好きだねぇ…。」


「3倍アイスクリィィイム!!!」


 今時通じるかどうか怪しいぞ?それ?


「こほん、で、馴れ初めは?」


「「付き合ってないから!!」」


 そう言うわけで、俺達の今までの出来事を彼女に語る。なんだかんだ短いようで長かったな。何て思い返しながら、ふと、腹部をさする。


「なるほどねぇ。にしても君、よく生きてたね?」


「まあ、死にかけましたけど。」


「それでも素晴らしいよ。愛する者のために立ち上がれる男って言うのは。」


 なんでこの人ロマンスに引っ張られてるんだ?


「と、そう言えば自己紹介が遅れたね。私は三浦みうら 梨央。これでもAクラスの探索者で飛鳥ちゃんとは幼馴染みなんだ。」


 幼馴染みだったのか。


「これからも飛鳥ちゃんのことを頼むよ。しっかり者なんだけど、ちょっと弱いところもあるから。」


「は、はい。」


 なぁんか…やっぱりこの人の中で彼氏前提で話が進んでいるような気がするけど…悪い人ではないだろう。


――――――――――


アスカが迷い混んだの、今までで一番深いダンジョンだったんだな


33階層だっけ?よく生きて帰れたよ


アマネの配信見る限りもう1人いたっぽいけどどうなったんだろ?


アマネの配信見てんのかよ


あいつ流石に性格悪すぎだろ

今回の配信だって悪趣味すぎる。アスカを出汁にバズろうって魂胆バレバレすぎ


――――――――――


「―――――チッ…。」

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