第9話 Sクラスのあなたに言われても
あれから数日かけ、ようやく俺はダンジョンを脱出した。幾年か振りの外は、綺麗な星空であった。
「…外だ…。」
「外だよ。」
そして冷静になる。
「あれ?俺居場所無くね?」
そう、俺には家がない。なんなら身寄りもない。拝啓、婆ちゃん。助けて。
「家来たらいいよ。」
「…え?」
「私、一人暮らしだし。」
いや、そうじゃねぇよ。俺男なんですが?大丈夫なの?それ?よくないんじゃないの?仮にも君有名配信者だよね?よくないと思うな、俺な。
「もちろん、一樹くんが良ければだけど。」
「え、えっとぉ…。」
こういう時どうするんだ?でも行く宛なんて無いし…て言うか俺居ていいの?いやまあ確かにここ数日ずっと一緒だったけど…うーん…。
「い、いいんですか?」
流石にきちんとした衣食住の欲求に抗えなかった。
そう言うわけで七瀬さんのお宅に訪問することとなったのだが…。
「え、広…。」
豪邸じゃん。こんなん。どしたん?これ?
「まあ、私も大手クランのエース枠だからね。」
「クラン?」
「あれ?知らないの?クランっていうのはダンジョン探索を生業にする人達が所属する企業だよ。例えば私みたいなストリーマーもそうだし、採掘だったり魔力についての研究だったりね。」
「な、なるほど。」
Sクラスの探索者。これほどとは…。
「さ、入って入って。」
「は、はい。」
中もすごい豪華だ…。
「先にお風呂入ってきな?」
そう促され、俺は入浴することとなった。久しぶりのお風呂…今までの疲れがどっと洗われるようだった。
そうして、リビングへと案内された。
「あの、色々ありがとうございます…。」
「いいのいいのこのくらい。さてと、本題なんだけどね、一樹くん、これからもダンジョンには潜るつもりんだよね?」
「はい。」
「なら、探索者として登録しなきゃいけないの。」
「え?」
「ダンジョン内に入るのであれば必ずその登録が必要になるの。」
「なるほど。」
「そう言うわけで、明日は探索者登録に行こう!!」
「は、はい!」
ええ、正直ちょっと夜期待してました。何かあるんじゃないかなって。
面白いくらい何もなく翌日。
「うーん…服もついでに買いに行こっか。」
言われてみれば俺の服はボロボロである。
「流石に…駄目ですよね。」
「今日は私の服貸してあげるから。」
「ええ!?」
「大丈夫。オーバーサイズのやつならちょうどいいから。」
何て言うのでしぶしぶそれに従い袖を通した。
そう言うわけで、現在七瀬さん所属のクラン、レオンの受け付けにやってきている。大手クランと言っていただけあり随分と大きい。
「アスカさん!!無事で何よりです!!」
「
実際割りとヤバかった…と言うのは伏せておこう。
「それで…そちらの方は?」
「私直々にスカウトしたの。」
「アスカさんが?」
そう言って俺の方を見る受付さん。
「あ、えと、蒼井 一樹です…。」
「もしかして、あのときの配信で映ってた人!?」
「あのときの配信と言うのは?」
「ああ、アマネさんの配信よ。尤も、大荒れだったけど…いやぁ、君も助かってたんだね。よかったよかった。」
「そう、それでね。今日は一樹くんの探索者登録をしに来たの。」
「なるほど…あれ?でもたしかダンジョンの最下層に…。」
「まあ、色々ありまして…。」
そう、色々あった…すごく色々。
「聞かないであげて…すごく色々あったから。」
「あ、アスカさんがそう言うなら…あ、探索者登録でしたね。こっちについて来てください。」
そう言って俺は受付さんについていくこととなった。ビルの中を色々と歩いていく。
登録事態はすぐに終わった。スキルの把握と身体能力の測定だけだ。
「うーん…身体能力が所々異常だね。」
開口一番、僕の登録を担当してくれた人にそう言われた。
「自覚はあります…。」
「走力と握力。あとは跳躍力。一般人のそれじゃないからね?」
「はい…。」
「スキルもスキルだよ。『課題』自分や仲間が死なない為の最善の選択肢を課題として提示する。正直、皆が欲しい能力だ。」
「案外ピーキーですよ?意味の無い場合や助からない場合は何も提示してくれない。それに何が起こるかも教えてくれない。」
「そこまでいったら未来予知じゃん。」
そう言われたらそうですね…高望みでした。
「は、はい。」
「ただ、人間の範疇は言うほど越えてないことも加味してBクラスかね。」
と、そう言う。そんなこんなで、俺の探索者登録は終わった。いやぁ、よかった。そうして受付まで戻ってくる。
「お、お帰り~。どうだった?」
「Bクラスとして登録できました。」
「お、Bクラスか。なかなか凄いね。」
Sクラスのあなたに言われても。
「じゃ、服買いに行こっか。」
そうだった。正直すっかり忘れていた。
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