第3話 あれ、切れますか?

―――――来る!!


 俺のスキルが言っている。倒せ、と。つまり、倒さないと助からないってことだ。

 いや、ふざけんな??今まであれ倒したことないが?


「きゃっ!!」


 ともかく、俺は七瀬さんを連れて走り回るだけで手一杯だ。

 あいつの頭突き…死ぬねぇ…あれは食らったら確実に死ぬ。だって岩ぶち壊してるもんねぇ…え、倒せるん?


「七瀬さん!装備は!?」


「け、剣なら…!!」


「戦えますか!?」


「やるしかないの?」


「やるしかないです。」


 それで…あれ…どうやって倒すんだ?こういうときにこのポンコツスキルは動いてくれない。あくまでも、生き残る方法しか提示しねぇんだから。


『課題―――後ろを取れ』


 提示してくれたわ。てか至極全うな意見。


「後ろを取りますよ。いいですか?」


「う、うん。」


 そう言って七瀬さんの手を引き、一直線にそいつに突っ込む。


「え?え!?後ろ取るんじゃなかったの!!??」


 回り道より最短距離があるんだから仕方ない。こいつは図体がデカイのだから、股下を潜るに限る。

 とりあえず即死の頭を避け股下を潜り抜ける。


「効くか…?」


 物は試しだ。そのまま腹にナイフを突き立ててみる。

 が、案の定固い鱗に弾かれる。


「ダメか。」


 ともかく、後ろは取った。


「はぁ、はぁ、ダメか、じゃないわよ!?死ぬかと思った…。」


「Sクラスの探索者ですよね?あれ、切れますか?」


「なんで妙に冷静なのよ…多分、できる。」


「流石です。じゃ、次の攻撃の時合わせて切ってください。」


「え!?」


 こういうときにあのスキルが役に立たないのだから、俺が冷静になるしかない。


「え!?じゃない、行きますよ?」


「ちょ、ちょっとまだ心の準備が!」


 こういうときに大事になってくるのがいかに思いきりがいいか。

 正直俺だって怖いさ。死に飛び込むって言うのは。だけど1度飛び込めば案外その後は楽だ。


 頭突きに合わせてまた潜り込む。


「お願いします!!」


「うわぁあぁあぁぁぁあああ!!!」


 悲鳴にも似た叫びと、真一文字の一振。そのまま尾の方まで走り抜ける―――――。


「―――――はあ、はあ、はあ…。」


「七瀬さん…ありがとうございました。」


 肩で息をする彼女にそう言う。

 七瀬さんが居なければ勝てなかった。俺じゃあの鱗を切れなかったから。


「にしても、Sクラスってすごいんですね。まさか本当に切れるとは。」


「ま、まぁね…このくらい…。」


 そう言うわけで、はじめて仕留めたこの竜…さてお味の程はどうなのかと言うところである。

 最も、この地下に調味料なんて物がないのがすごく痛い。


「さて、お昼にしましょうか。」


「…え?」


 竜の写真を取っている七瀬さんにそう声をかける。疲れていてもインプレ稼ぎは欠かさない。強い意思を感じる。

 しっかし…こいつ可食部は何処だ?とりあえず上半身は刃が入らん。やめにしよう。

 その割には随分と下半身は楽である。こいつ、前面の装甲に全降りしてるな。それでも筋肉質なことに変わりはない…。


「…手羽先みたいなのは無理か。」


「手羽先!?」


「まあ、出汁は取れるか。」


 さて、そんなこんなで解体を進めていく。ここまで大きいと血抜きが随分と面倒だが仕方ない。


「なんかこう…砂糖とか塩とか…そう言うのって持ってないですか?」


「流石にないです…。」


 うーん、まあ、引くよね。俺も初見なら引く自信がある。

 まあ今日は凝ったものはやめだ。疲れたし。


「本当に簡単な物で…すみません。」


「いやいや、このくらいしかないもん。しょうがないよ。」


 かろうじて、足の食えそうな部分を捌いて焼いてみた。


「でも、なんかきちんと美味しそう…。」


「まあ、肉ですし。」


「「いただきます。」」


 なんだかんだあったが昼飯にありつくことが出来た。いやぁよかった。さて、はじめて食べる竜の味は―――――。


「うん、鶏肉っぽい。これ案外美味しいじゃん!」


 そう言ってまた写真を1枚。さて、俺から言わせれば…どちらかと言うと蛙っぽい…この事は黙っておこう。


―――――――――――――――


 【悲報】有名配信者アスカ 未開拓ダンジョンのトラップに引っ掛かり転落事故


 ありゃ酷い事故だったが…生きてるのかね?


 リアタイしてたけど最後まで声は聞こえてた


 なんかこれさ人映ってね?


 えマジ?


 ヤラセ?


 てかX動いてる


 え…何この竜…

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