御坊会②

土曜の朝、自宅アパートの外で缶コーヒーを飲んでいるとT氏の車が近づいてきた。


「荷物それだけ?」


私のリュックサックをみてT氏が言った。

1泊2日なら着替えも少ないからこれで十分だよ。

私がそう答えると「ふーん」と彼は言った。


私が助手席に乗り込むと、後部座席に先客がいた。私が少し驚きつつ会釈をすると、相手の女性も会釈を返した。

私がT氏に「彼女は誰だ?」と目配せすると、T氏は少し笑いながら答えた。


「ああ、紹介するよ。こちら僕の職場の同僚の泉さん。泉さん、こいつが話してた友人の雪丸。今回の助っ人。」


「はじめまして。泉と申します。雪丸さんのことはTさんからいつも聞かされてます。先日も市道5◯号線に行かれたんですよね?」


「こちらこそはじめまして。雪丸です。Tとは大学からの付き合いで、そうです、この前も急に連絡が来て市道に行かされましたよ。でも特になにもなく。結局あれは何だったんだ?」


私がT氏に尋ねると、T氏は苦笑いした。

私はその苦笑いを見てさらに苦笑した。


「雪丸さんは昔からこういう調査に同行されてるんですか?」


泉さんが前のめりになって尋ねる。


「雪丸は昔から僕のフィールドワークに付き合ってもらっててね。オカルトだったり、ちゃんとした調査だったり、いろいろ手伝ってもらってるよ。」


「じゃあ私よりも先輩ですね。私部署異動で今回初めてこういうフィールドワークに参加するんです!よろしくお願いします!」


泉さんの元気な声が車内に響く。私は小さな声で「今回の目的を聞いていませんが。『先生』?」とT氏に言った。


T氏はフェリーに乗ったら話すといい、私は何だかお茶を濁された気がした。


そしてそのまま車はフェリー乗り場へと3人を運んだ。

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