市道5◯号線
愛知県某市にある市道5◯号線について調べてほしい。
友人であるT氏からのメールにはただそれだけが記載されていた。
了解です。
私はそう返答して、市道5◯号線について検索をかけた。しかし検索しても特段特別な情報があるわけでもなく、いたって普通の情報しか出てこない。
しかしT氏がわざわざ連絡してくるということは、何か面白いものがあるに違いない。
私は貴重な休日を犠牲に、某市へと向かった。
某市に到着した私は、市の図書館へ向かい、郷土資料コーナーで市史を読んでみることにした。
市史によると、市道5◯号線は某市が合併する以前は町道として利用されていた歴史のある路線のようで、区間距離は約3kmで市の郊外部分に位置している。
沿道には商業施設はほとんどなく、山沿いにある〇〇集落と合併以前の旧中心地を結ぶ路線らしい。
しかしそれ以上の情報は出てこない。
私はアプローチを変えようと、〇〇集落について調べてみることにした。〇〇集落は元々窯業が盛んであり、大正時代には集落内にかなりの窯があったらしい。しかし、昭和に入ると次第に衰退して、今では廃村となっているらしい。
私は5◯号線は元々陶磁器の輸送のために作られた道路であると推測した。しかし、特段オカルトに繋がるような情報は出てこない。
強いて言えば、〇〇集落が廃村になったことくらいだろうか。
私はとりあえず5◯号線を車で走ってみることにした。
実際に走ってみると、5◯号線は片側1車線の普通の山間の道路で、何か特別なものがあるとも思えない。旧中心地を外れるとすぐに道沿いには民家も商業施設もなくなり、山間の田舎にある淋しい道路という印象だった。
5◯号線は車通りはほぼなく、歩行者もほとんどいない。時折旧中心地方面に向かって荷車をひく老人何人かとすれ違う程度であった。
終点である〇〇集落(と思しき場所)にも行ってみたが、木々が鬱蒼と茂っており、木の合間から廃屋と思われる建物が確認できる程度だった。
その後夜まで何回か往復したが、特段気になる点はなかった。
私はT氏に電話をし、上記の内容を伝えた。
するとT氏は「やっぱりか…。了解です。ありがとう。」と伝えると電話を切った。
私はなんのことかさっぱりわからず、帰路についた。
運転しながら、ふと今日すれ違った荷車の老人たちについて思い出した。
老人たちは〇〇集落から荷車をひいて旧中心地方面へと歩いていた。
〇〇集落方面は終点まで一本道で、途中民家や畑もない。どこから歩いてきたのだろう。
それに昼間は気にもとめなかったが、荷車をひいた人と、今の時代にそう何回もすれ違うものだろうか。
私は背中が少し冷たくなるのを感じつつ、そのまま家路についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます