第20話 ヴァネッサの処遇
「まずはこれだけ訊こう。危険はないのか?」
父上はまだ大剣を構えたままオレに尋ねてきた。めちゃくちゃ警戒してるね。
家の周りには武器を持った住民たちまで続々と集まって、もうなんだか一触即発な雰囲気だ。
早く誤解を解かないと!
「ありません。あれは私を主として認めてくれました」
「主? アベルよ、何を言っているんだ?」
「どこから話したものか……。父上もゴブリンのダンジョンはご存じですよね? 今日、私は一人であのダンジョンに修行に行ったのですが――――」
「なに!? あそこはアベルにはまだ早いと言っただろう!」
「すみません。どうしても行きたくなってしまって……。それで、ボスを倒したのですが、その時、ボス部屋のさらに奥に進む道を見つけたのです。あの飛空艇はその時見つけました」
「飛空艇? ワシが知っている飛空艇とは全然形が違うが……。しかし空を飛んでいたしな……」
「たぶんですけど、あの飛空艇はアーティファクトです!」
まぁ、アーティファクトなのは間違いないけど、本当は飛空艇じゃなくて航空戦艦なんだけどね。
「なに!? アーティファクトの飛空艇を完全な形で見つけたのか!?」
父上の驚きっぷりはすごかった。
そんな父上を見て、村人たちがお互いに顔を見合って驚いていた。
まぁ、そうだね。実は、先史文明の遺跡はここ以外のも各地で見つかっている。当然、その中にはヴァネッサのような航空戦艦も見つかっているけど、そのすべてが壊れているんだ。
完全な状態で見つかることも初めてなら、まだ稼働する航空戦艦も初めての発見である。世紀の大発見だね。父上が驚くのも無理はない。
「私はこの艦の主人に認められました。そうだろう、ヴァネッサ?」
『肯定いたします。アベル・ヴィアラット様は当艦の所有者です』
「しゃべった!?」
「はい、父上。この艦は意思を持っています」
「アーティファクトの中には意思を持つ道具があると聞くが……まさか、それか……?」
さすが、父上。アーティファクトについても知識があるようだ。
その後、なんとか父上や住民たちに説明して、ヴァネッサへの敵意を解いてもらった。どうやらアーティファクトというのと、ヴァネッサがしゃべったことが決め手になったらしい。アーティファクトならなんでもありだよね。それを見つけたアベルくんすごい! となったようだ。
それでいいのかと思わなくもないけど、まぁ、納得してもらったならよかったよ。
まぁ、彼らはヴァネッサが土砂の山を吹っ飛ばすような兵器を搭載してるって知らないからね。バレたらヤバそうだから、ヴァネッサの兵器はロックしておいたよ。
この時、初めて明るい所でヴァネッサの外観を見たけど、鋭角な三角形のような見た目で、メタリックシルバーでかっこいい見た目だった。テンション上がるね!
「しかし、アベルがあんなに大きな飛行艇のアーティファクトを見つけるとはなぁ」
日も暮れて、夕食の時間。ホーリーライトの明かりが照らす食堂の中で父上がしみじみと呟いた。
「これで貿易なんてしたらどうでしょう? たぶん、儲かると思うんですけど……」
「ん? 使っていいのか? あれはアベルのものだから、自由に使っていいんだぞ?」
「え?」
マジか。オレとしては取り上げられても仕方がないとまで思っていたのだが、どうやら父上はオレからヴァネッサを取り上げるなんて微塵も考えていなかったようだ。
こういうところが好感持てるんだよなぁ。さすがオレの目標である父上だ!
こういう父上だからこそ、オレは応援したいのである。
「私は日頃は鍛錬に忙しいですし、特に行きたい所もありません。よかったらヴァネッサを父上が使ってください」
「いいのか?」
父上が目を見開いてオレを見ていたので、オレは大きく頷く。
それに、父上が貿易などをするなら、少しは裕福になれるかもしれない。そしたら、食卓も豊かになるよね!
「実は、子どもの頃だが、もし飛空艇を手に入れたらと考えたことがあるんだ。やってみたいことがあるんだが、いいか?」
父上はちょっと恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「もちろんですよ! 私は父上の夢を応援します!」
「ありがとう! 楽しくなってきたな!」
「あなた、わたくしのことを忘れてもらっては悲しいですわ。わたくしも飛空艇に乗ってみたいです」
「そうだな! まずは飛行艇に慣れるために、二人で旅行でも行ってみるか。アポリーヌの実家にも長らく挨拶に行けていないしな」
「まあ! いいですね!」
「親子で旅行に行くのもいいな! ははっ! 夢が膨らむぞ! ありがとう、アベル! お前は最高の息子だ!」
「ありがとうございます、アベル。わたくしも今からわくわくしていますわ」
父上と母上の慈愛の視線に見つめられて、今度はオレの方が恥ずかしくなってきちゃったよ。
やっぱり、無理をしてでもヴァネッサを手に入れてよかったなぁ。
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