第2話

 神無の紹介と名乗った少女——零名れいなの依頼内容は、に手伝って欲しいとのことだった。

 あること、とはなんなのか、それを聞けば口ごもってしまった。どうしたものかと困っていれば隼斗社長が口を開いた。

 仕切りに囲まれたソファ二つに挟まれる座卓。社長と孤駒こくが座るソファの向かい合わせになるように零名が座っている。足を揃え可愛らしく、ちょこんと座っていた。「座る姿はまるで誰もが魅了される花のよう」と、悠大なら恥ずかしげもなく言えるのだろう。だが、残念ながら悠大ではなく孤駒が席に席に腰かけていた。


「大体は分かっている。——除霊、だろう。それも、かなり強い霊と見える」

 社長が強いというのならよっぽどだろう。話したくなさそうにしていた零名だったが、ようやく話し始めてくれた。


「そうです……生まれた時から私は呪われているんです。いつも視界に映るんです。悍ましいものが」

「見た目を伺っても? できるだけ詳細にお願いします」

 社長が、メモ帳を机に置き、ペンを持ちながらいう。どういう霊なのか、見た目で特定しようとしているのだろう。


「はい、それは色白い霊なのですが、目玉がなく、歯も一本も生えていないのです。長い髪の毛は腰まで伸びていて、白いワンピースのような服を着ているのですが、すごいブカブカなんです。腹部のあたりから血が流れていて、白いワンピースがほとんどが赤く染めあげられているんです」

「それは——……いや、すみません、多分違うと思うので先ほどの言葉は忘れてください」

 社長が自身の細い顎に手を当てながら深く考え事をしている。それを横目で見ながら孤駒は質問をした。


「そういう霊は、下半身がないものも多いんです。そちらはどうなんですか?」

「しっかりとあります、裸足です」

「なら、浮遊するタイプではないのか?」

 独り言を言うようにして天井を見上げると、社長がその言葉に対し、否定した。


「いや、わからない。足があるのに対し、浮遊するものもいる。強ければ強いほどそういう霊は多くなっていく」

「まぁ、浮くか浮かないかは特に関係ないと思いますけどね」

 自ら質問をしたその言葉を訂正するように言う。


「あと、普通に質問なのですが、なぜ神社や寺ではなくこちらで?」

「それが――」

 零名は、すでになんどか神社に出向き、除霊をお願いしていたとのことだった。【金縛り】やポルターガイストといった心霊現象が頻発したといい除霊をお願いしたが、効果が全くなく、ここに辿り着いたとのことだった。

 そういうことならば、ここを執着地点にする。それが、ここの仕事だ。

 それに——


「大体の情報はわかりました。除霊の依頼、引き受けましょう」

 社長が言葉を発すると零名は暗い表情を浮かべていたのを変え、明るい表情になった。


「おねがいします……!」

「任せてください」

 力づくよ発された零名の声に孤駒も力づくよく返した。

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