第一章 霊からの依頼
第1話
五階あるビルの四階層。最近ようやく設置されたエレベーターで会社の後輩と上へ登っていく。
五階、全てが会社なわけではない。階層を貸している賃貸で、階を借り四階だけをオフィスとしているのだ。この会社は、様々なことを受け付けている。特殊な依頼でも何でもだ。頼まれれば何でも引き受ける。そんな会社だった。後輩である
「結局猫さん、自力で降りてきましたね」
「そうだな。脚立用意した意味なかったな」
会話からも分かるが、依頼の内容は猫の捜索だった。
エレベーターが、駆動音を立てながら二人を特殊な感覚に包み上へ連れていく。四階に着いたところでポーン、と音を立て、扉が開いた。
エレベーターを降り、足を踏み入れていく。左手に青色の扉がある。円筒錠のドアノブを捻り中に入っていく。
壁を背にするように事務机が一つあり、そこから全体を見渡せるように、二列に向かい合った八つの事務机がそろえられている。壁を背に設置された事務机に座するは、この会社の社長である
整列された机には今、五人座っている。パソコンと睨めっこする者もいれば、休憩する者もいる。
小規模な会社ながら、細々と、何とかやっていけている状況である。
午前十時を回る頃だった。遠くのほうから三回のノック音と思しき音がする。ノック音の後にギギギ、と歪な音を立て、扉が開かれる音がする。その音の意味を察し、顔をそちらへと向ける。耳を澄ませばコツコツという足音が微かにか聞こえる。別にいいか、と思い
三回のノック音の後、社長机と遠く離れたところに位置する扉が開かれる。
茶色の扉。二枚の磨りガラスから見えるシルエットは小柄の少女のように見える。
「し、失礼します」
開かれた扉、そこから出現した少女は、まだ、中学生ぐらいの子だった。
「いらっしゃい、嬢ちゃん一人でどうしたんだい?」
隣の席に座る、茶髪の男——
「ここは、部屋掃除から買い物でもなんでもやる所だ、なにを御所望で?」
扉の前に立つ少女に大袈裟な手振り身振りをしながら悠大が向かっていく。
「あ、あの、神無さんからの紹介でここに来たのですが……」
「かんな……?」
その名前に悠大がキョトンとした表情をする。その名前に反応したのは、ただ一人——隼斗社長だけだった。
「神無がか、いいだろう。お代はあいつにつけとけばいいから、料金の心配はすることはない」
机から立ち上がり社長が近づいていく。その様子に孤駒は嫌な予感をさせながらも一瞥だけし首をすくめた。
「え……? いいんでしょうか……?」
心配そうな顔をする少女に社長は歩み寄って行った。
「あいつも、そう言っていたんじゃないのか?」
「確か……ですが……」
悠大の隣に立ち、隼斗社長は優しく微笑んだ。
隼斗社長は少女を応接間に通し、今回ここに来た理由であるであろう依頼内容を尋ねた。その時に予想通り、孤駒は呼び出されてしまった。
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