望人学園

 窮屈な学園。化け物の住む学園。


 願いの石という、茶色と紫の鉱石を食べた人間は化け物になる。体の全てが光を弾き返し、一度一つの球体になる。球体の状態を『光球こうきゅう』と呼ぶ。そしてそれが膨らみ、化け物を形作る。完成された体は何か一つの色に染まる。その姿は『モノクロ』と呼ばれる。モノクロになるともとの人物がずっと思っていた願いを一つだけ叶える。願いを叶えたモノクロは昏睡状態となる。そこから目覚めた例は一つもない。


 しかし10年前から、化け物になった後も意識を保ち、願いも叶え、そのまま生き続ける例が発見された。意識はあるが化け物のままの姿で、そこから人間の姿に戻るような訓練方法の確立に5年かかった。


 意識を保てるモノクロの最年長は15歳、最年少は3歳だった。

 願いの石を食べた、半分化け物の子供たちはP社が運営する学園に送られ生活をする。概ね普通の子供とは変わらない生活が保障されている。

 しかし、学園から無断で外出することは許されず、外部の人間との交流も許されない。


 僕が最初に言った窮屈な学園とはこの意味であり、私たちの通う望人もちびと学園に他ならない。

 半分化け物の子供たちに勉強を教える施設でもあるし、半分化け物の子供たちが青春を謳歌するための施設でもある。


 高校生までこの施設での時々ある検査と、普通の学校生活を送り、その中で青春をし、感情に振り回されすぎない大人になるための場所。

 一つの学年に40人程度で少ないが、それでも少年少女は好きに過ごしていた。

 自分も相手も半分以上が異形の存在であっても、それでも普通の子供と変わりなく、いや、普通の子供の理想の形と変わりなく。

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