第30話 最後の戦い
イルドラ王は、ハーレルの王城から夜の闇に紛れて脱出していた。街の有力者の中に機竜を手配できる者がいたようだ。明朝、それを知った射流鹿は「イルドラ王に加担する者には死あるのみ」と宣言する。
既にハーレル城下街は、3分の1が焼き尽くされている。ハーメルン騎士団とラインゴルド騎士団に、城下街の徹底した破壊と住民の処刑を命じて、射流鹿は自らイルドラ王を追う。
イルドラ王はアルザルの街へ向おうとしたが、できなくなる。ハーレルの街が徹底した虐殺にあっていることを知った街の住民がイルドラ王への協力を拒否したためだ。
その情報をもたらしたのは、イルドラ国宰相のラドルグ卿である。
ラドルグ卿は、イルドラ王と共に機竜でハーレルの街を脱出した。しかし、アルザルに受け入れを拒否されたことでイルドラ王に見切りを付け、射流鹿の下を訪れたと言う。
「王の首は、日嗣皇子に差し出します。代わりに、残るハーレルの住人たちをお助け下さい。住民たちには罪はないのです」
ラドルグ卿は、必死にハーレルの住民たちの命乞いをする。
「貴男たちに差し出して頂く必要はありません。僕の手で取りに行きますので、その取引は成立しません」
射流鹿は取り合わない。もう、ラドルグ卿の手口はバレている。
「日嗣皇子よ。許嫁を傷つけられた貴方様のお怒りは承知しております。しかし、だからこそ羅睺羅の次の帝になられる貴方様に、憎しみの連鎖を断ち切る寛容さを示して頂きたいのです」
射流鹿の顔から感情が消えた。右手が腰の剣にかかる……しかし、月夜見様の剣が先にラドルグ卿の首を切り落としていた。
「こんな小物に、お前が剣を抜く必要はない」
剣の血を拭い取る月夜見様に、射流鹿は素直に「はい」と答える。そして、月夜見様は、射流鹿に近づくとその耳元で囁いた。
「やはり、イルドラ王の周囲にいる者は全て消す必要があるな」
射流鹿は、もう一度「はい」と答えた。
夕暮れが近づいた頃、最後の戦いが始まる。
アルザルの街から拒否されたイルドラ王は、他の街からも協力を拒まれる。ハーレルの惨状は、イルドラ王の機竜よりも早く街々に噂として広がっていた。
万策尽きたイルドラ王は、射流鹿の機竜に戦いを挑んできたのだ。
「中途半端な騙し討ちや不意打ちしかできない愚将と思っていましたが、最後は正面から攻めて来ましたか」
イルドラ王の機竜には、機兵が2機合流したと言う。愚王にも、忠臣はいるらしい。対する射流鹿は、3機の機兵を有する。それも第4戦団の精鋭だ。
「敵兵は、一人たりとも生かして返しません」
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