第24話 脅迫

 わたしの身体を貪った後、再び窓から中庭を見たイルドラ王は愕然とする。



 中庭にはボロボロになったペルセウスが、城壁の側に乗り捨てられていた。3機のジークフリードは無傷のまま、次に機兵庫から出てくる機体と戦っていた。

 王城の機兵庫から出て来るペルセウスは1機。直ぐに2機のジークフリードによって、前後から挟まれてしまう。

 前方からのジークフリードの剣を、ペルセウスは左腕の盾で受け止めた。しかし、振り上げた右手の剣を振り下ろすより先に、後方のジークフリードがガラ空きの背中を斬りつける。背中の装甲が剥がれて、骨組みになっている巨人の骸が砕けて飛び散る。巨人の骸が壊れる時には、雷のような閃光を撒き散らす。

 こうやって、最初の1機も屠られたのだろう。2機目のペルセウスが動かなくなると、3機のジークフリードは、王城の機兵庫へ飛び込んだ。

 既に、夜の闇は地上を包んでいる。機兵庫の中から上がる炎のような閃光は、機兵が放つ光矢ひかりのやだろう。



 遥か遠くからも閃光が上がっていた。ハーレルの城下街を守る防壁の方だ。防壁の外で待機していたハーメルン騎士団の機兵が、防壁を打ち壊そうと攻撃を開始したのだろう。

 王城でも新たな閃光が上がる。ラインゴルト騎士団の機兵は、北の門を破壊して中庭に侵入して来た。



 ゴォォォン

 ゴォォォン

 王城を揺るがす轟音が響き渡る。さっきよりも更に激しく床や壁を軋ませる。ラドルグ卿が、二人の兵士を従えて部屋に飛び込んで来た。


「王よ、機兵庫が……機兵庫が破壊されてしまいました。王城の機兵は動かせません!」


 ラドルグ卿の視線がわたしに向く。振袖のはだけた姿を見て、この部屋で何が行われたかを察したようだ。他にも報告することがあったようだが、言葉を失って喋るのを止めてしまう。


「灯りだ、灯りを持ってこい!」


 イルドラ王は、大声でラドルグ卿の後ろにいた兵士に怒鳴った。そして、妾の腕を掴んで部屋のバルコニーへ連れ出した。少し遅れて、兵士たちが命令通りに灯りを持ってきた。

 その灯りで、バルコニーを照らすと更に大声で中庭に向かって叫ぶ。


「見えるか、羅睺羅の日嗣皇子よ!」


 イルドラ王は、抜き身の剣を妾の喉元へ向ける。


「直ちに機兵を退くのだ。さもなくば、この女を串刺しにするぞ!」


 王城の機兵庫を破壊した3機のジークフリードが東の門から城壁の外へ出た。それを見たイルドラ王はニヤリと笑う。

 しかし。

 北の門を破壊した2機の機兵は、中庭から王城の壁に光矢を浴びせる。そして城門の外では城下街の方へ向けて光矢を放ちながら3機の機兵が移動し行く。

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