第12話 ハーレル王城の開門

 第4戦団の機竜での食事は、司令塔の操舵室に食事を運び込んで始められた。遠征軍の食事なので、保存のために塩漬けや燻製にした肉やチーズ、硬く焼いたパン、酢に付けた野菜など。


「これから晩餐会で出てくる料理ほどの味ではないかも知れませんが、毒も薬も入っていないぶんだけマシですから」


 珍しく射流鹿いるかが冗談めかしたことを言ったのを合図に、皆が食事に手を付ける。

 最初は、月夜見つくよみ様と射流鹿とわたしと妾の護衛役だけで始めた食事だったのに、後からかなり数が後追いで参加してきた。それに合わせて、更に食事が運び込まれてくる。

 元老院議員で、の方々は「康平議員と他2名とハーレル王城へ向かった」のを知らせてくれた。機兵を指揮する指揮官は、城門周辺のわだちの跡から王城内外を出入りする重量物を推測して、王城内の機兵の様子を想定する。

 ハーメルン騎士団やラインゴルド騎士団からの連絡係には、晩餐会終了後の状況に応じた対応を確認している。

 普通に軍議の場となっているので、妾は一言も喋れない。

 太陽が中天から西に傾いた頃に軍議も解散した。間もなく、イルドラ国主催の晩餐会が、ハーレル王城の中庭で始まる。



 月夜見様は機竜の操舵室に残り、射流鹿と妾の二人とその護衛役が機竜を降りた。妾の護衛はラインゴルドの騎士1名で、射流鹿の護衛は第4戦団の兵士3名。

 王城内に控室を用意されたと言うが、それは使わずに機竜から直接に中庭の晩餐会場へ向かう。

 射流鹿は白絲威の鎧に身を包み、腰に太刀を吊り下げている。妾は少し派手な柄の振袖だ。


「両国の友好を誓う場に、戦装束とはなにごとですか!」


 また、康平議員である。口から泡を飛ばさんばかりに、射流鹿に噛みついてくる。どうやら、昨日の打ち合わせではと約束したようだ。


「羅睺羅の帝とは武の象徴。戦装束こそが、我ら皇族の正装です」


 昨日までの射流鹿は、これらの議員の機嫌を取るために話を合わせていたのだろう。一夜明けた途端に、急変した態度にイライラを募らせているようだ。



 巨大な城門がそびえ立つ。機兵が立って入城できる高さの城門である。イルドラ国の緑色の機兵『ペルセウス』2機によって、音を立てて開かれる。

 射流鹿と妾は、白い機兵『ジークフリード』2機の間に立ち、開かれた城門を望んだ。

 2機のペルセウスは城門から離れて、2機のジークフリードが城門の扉を握った。城門の主導権を羅睺羅国が得たことを確認してから、水蛭鹿と妾は城門をくぐる。

 その先にはイルドラ国の王と王妃が出迎えている。

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