第4話 幼き日の実証実験
この庭園は、太后様の独断で「男子禁制」が敷かれて以来、帝すら足を踏み入れることが禁じられている。
元老院議員の陳情やらの煩わしい喧噪から逃げる場所になっているのだが、時々「女性ならいいのだろう」と考える女性議員が来訪し「太后様の力添えを……」などと言い出すこともある。概ねそう言う場合は、その女性議員の所属する派閥の長が「ゴミの始末」する羽目になる。
死体と言うゴミの……。
この庭園を「男子禁制」としたのは、射流鹿が理由だ。さすがに帝も「男子に女子の装いをさせる」ことには納得しなかった。それで太后様は「男子禁制の場所に入るのだから、女子の装いをするべし」と言い出したのだ。
月夜見様は、女ながらに近衛兵の一軍を任されていた
太后様より1つか2つ年上だったと思う。本当なら、妾の母と同年代のはず……だが、妾と並んでも姉にしか見えない若作りだ。
妾の顔を見た月夜見様が視線を逸らす。「ふん」と鼻を鳴らしたのが聞こえた。
そう。月夜見様は、妾のこと嫌っている。あからさまに「あの女は、
その理由は、わかっている。幼き日の実証的実験!
幼い頃、耳にした伝承。曰く
『ミミズにおしっこをかけるとチンチンが腫れる』
本当なのだろうか?
それをずっと疑問に思っていた。疑問に思っていても、女の妾にはついてないのだから確かめようがない。
そんなある日。この庭園の端にある花壇でミミズを見つけた。
そして、振袖姿の射流鹿が、妾の方へ走って来る。もうその頃から射流鹿は、妾の後をチョコチョコと付いてきていた。
花壇の周辺には、妾と射流鹿しかない。
「おしっこはね、お花の栄養になるんだよ」
「そうなんですか?」
「うん。だから、花壇のお花に栄養をあげようね」
妾はミミズを見つけた辺りを指さす。射流鹿は「はい」と頷く……それからの仕草は女子の装いをしていてもやっぱり男の子なんだなと思った。
それから暫しの時がたち……。
「痛いよ~、痛いよ~」
射流鹿が泣きグズったために、妾の実証的実験は明るみに出てしまう。
太后様は笑っていたが、母からはもの凄く怒られた。その時、その場に月夜見様もいたのだ。
あの日の妾を批難する月夜見様の眸……今の月夜見様の眸と全く同じ。
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