第8話 特訓

「ハァ…ハァ…ハァ」

俺は地面に座り込む

だが休憩している暇はない

次のトレイターがやってくる

分かっているが、足が…手がもう動かない

疲労が溜まり、汗も大量にかく

殴られたところもジンジンと痛む

剣を持つ握力も尽きそうだ


この拷問はいつまで続くのだろうか

ふと、ヤンキー犬の方へ視線を向けると、優雅に漫画を読んでいる

もうツッコむ気力も残ってない

ここまで戦ってきたのだからもういいだろう

「ハァ…ハァ…おーい、もう助けてくれ!」

ヤンキー犬は声に気づいてこちらを向き

「このページ終わったらなー」

あいつ俺がもっと力をつけたらシバき倒してやるわ

怒りで力が少〜しだけ漲ってきたがそれで敵を殲滅できる俺ではない

それにあの大群、俺がさっき倒した奴らの10倍近くの数だぞ、俺が倒せるわけないじゃねぇか

こっちへ向かってくるトレイターの大群


あと100メートルくらい

あと90メートル

80メートル

70

60

50

40…


「ハァ…くそっ、殺さないと殺される…」

残り僅かの握力で剣を握りしめ、ふらふらの足でゆっくりと立つ。


深呼吸をして息を整え、敵が来るのを待つ

頭がくらくらするが、ぐっと踏ん張って

背中や肩はジンジン痛むが、ぐっとこらえて

まだ息は荒いが、できるだけ整えて


敵が目の前まで迫る

剣を強く握りしめ

【火の剣】

火の剣を発動させる

覚悟を決めてトレイターへ突っ込む

ザシュッ

一体目

心做しかさっきの奴らより堅い

「はあっ!」

ギンッ

「……!」

気のせいではない、やはり先程の敵よりも強い

フラッ

めまいがする

「やば…い…っ!」

拳はすぐそこへ迫ってくる

だというのにこの手は言うことを聞かない

拳が顔の前まで迫って――――――――――服が引っ張られ、宙へ浮く

「うぉっ…!?」


【白激流円烈波】


下を見ると、ヤンキー犬がいて


ドゴォォォ


ものすごい衝撃とともにヤンキー犬の周りのトレイター達が次々と散っていく

まるで波のように、円状に

中心から広がるように

敵の四分の一を一瞬で根絶やしにする


「えっ…ぐ…」


あんな一瞬で……

「ぐへっ…!?」

落下しているのを忘れていた

傷に追い打ちがかかった。

そんな優太に更に追い打ちをかける――


「ほら、早く動け!!漫画の続きを早く見てぇんだよ!!」


しらねーよォォ!!!俺は命の危機だよ!!

はあぁ…もうずっとコイツに振り回されてばっかだよ…

だけどこれでも3回も俺の命を救ってくれたんだ

(まあそのうち二回はヤンキー犬のせいだけどな)


「くそっ…もう少し頑張るか…」


【火の剣】


剣に炎を纏わせ敵へ突撃する

「はああああああああっ!!!!」




―――――――――――――


優太の成長スピードは異常だ

才能もある

もしかしたらより強くなるかもしれないな

「俺が優太を一人前の悪滅士に育ててやる」


ゴガァァァァ

トレイターが迫ってくる

ドガッ

トレイターは俺の拳一発で消滅する

今はまだ弱いが悪滅団をやってれば強いやつにもたくさん遭うだろう


優太は強くなる

そうなれば過去にあったことをいつか優太に話す時が来るだろう。だがまだその時ではない。


「結局俺も記憶を失っているんだ」

思い出さなければいけない。過去にあったことを。


そして必ずトレイターの王を救ってやる


「お前は俺を救ってくれた。だから次は、俺の番だろ?火川…」


―――――――――――



ザシュッ

目の前のトレイターが消滅する

「ハア…ハア…」

あと少しだ―――

グサッ…

「……!ガッ…!」

油断した

痛む腹を見ると、爪が刺さっている

「痛……!」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

これまで経験したことのない痛みだ

傷はそこまで深いという訳では無いが、腹に刺さるという事自体普通に生活していて起こることはないだろう。

「ウウッ…!!」

爪が腹から抜ける

「アアアアアッ!!!」

血が溢れる

クラッ

「あれっ…」

意識が…



――――――――――


俺が優太の方を向くと、優太は倒れていた

「…!優太!!」

急いで駆け寄る

腹から出血をしていた

元凶を殴る

シュウゥ

幸い傷は深くない、おそらく今までの疲労と初めて腹から出血をした焦りで意識を失ったのだろう

「少し、厳しくしすぎたか…」


俺は残りのトレイターを瞬殺すると、悪滅団本部へと向かった。

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