第2話 古代の悪(トレイター)

俺は自分の部屋に戻ってからすぐに鍵をかけた。

だが、その後カチャカチャと音が鳴り


ガチャリ


「…は?」


ヤンキー犬は何もなかったかのように部屋の中に入ってきた。

「いや、お前なんで入ってこれるんだよ」

「俺の鍵開け技術はプロ級だからな」

おそらくその鍵開け技術で玄関のドアも開けてきたのだろう。

ヤンキーってそんな事も出来るのか?

…いや、こいつを普通のヤンキーと比べるのはやめたほうがいい

「てか出てけよ」

「断る」

「はぁ、もうわかったよ…」

俺はもうこいつを追い出すのは無理だろうと諦めて自分のベッドに腰掛けた

「それで、なんの用だ…?」

「…俺を、ここに住ませてくれ」

まぁそんなことだろうとは思っていたが、こいつを家に住まわせるなんておそらく、いや間違いなく損しかないだろう。

だが、こんな危険人物……じゃなくて危険犬?を放しておけばやばいことになりそうだ。

「…親には内緒だぞ」

「いいのか」

「お前を外に放しておけばやばいことになりそうだからな、しょうがなくだ」

こいつと関わるなんて正直絶対嫌だ

「そうか、助かる…それでお前、名前は?」

「犬川優太だ」

だけど一度関わってしまったのだからそいつを放っておくことなんてできない。

それが犬川優太というやつなのだ

「夜露死苦な、優太」

ヤンキー犬は不敵な笑みをうかべる

『よろしく』の言い方がヤンキーなヤンキーこいつに苦笑しつつ


「おう、よろしく」


俺は人生初、犬と握手をした




 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _




その後、一緒に住むようになったヤンキー犬から悪について教えられた。


ヤンキー犬によると―


この世界には古代のトレイターという悪者達がいるらしい

ヤンキー犬はそいつらのボスに犬にされ、長い間眠っていた

そして1週間前くらいに目覚め、そこら辺にあった段ボールと、おっさんから盗んだマジックを使って捨てられた犬を演じ、誰かが拾ってくれるのを待っていたそうだ

古代のトレイターは人を襲うこともありとても危険で、そいつらのボスを倒さないとこの世界から消滅しないらしい


古代のトレイターについては、犯人不明の殺人事件の犯人がそいつらだろう

テレビでも何度かみたことがある

テレビでは幽霊が犯人だ、とか言っていたが

実際は古代のトレイターが犯人だったのだ

てか、こいつ普通に犯罪者じゃねーか


そういえば兄ちゃんが悪いやつを倒す仕事をしている、とか言っていたような…

もしかしてトレイターから世界を守るヒーローだったのか?

そんな事を考えていると、もう空が朱色に染まっていた

時計を見ると6時30分、もうすぐ母ちゃんが帰ってくる時間だった

「もうすぐ母ちゃんが帰ってくるから静かにしてろよ」

「おう、わかった」


しばらくして、玄関のドアが開いた音がした

「…あれ、鍵空いてたわね」

そんな声が聞こえた

ギクぅっっ!!

やべぇあいつが開けてから閉め忘れてた!!

「優太ー、鍵はきちんとしめておくのよー」

「あ、ご、ごめーん、わ、忘れてたー」

ふぅ、誤魔化せた


それからしばらくして

「優太ー、夜ご飯できたわよー」

「あ、わかったー!」

と返事をし、ヤンキー犬には静かにしてろと念を押してから自分の部屋を出た


夜ご飯を食べ、風呂や歯磨きを済ませて自分の部屋に戻るとヤンキー犬がヤンキー漫画を読んでいた

「犬が漫画読めんのかよ…」

もうなんでもありだな…と苦笑しつつ自分のベッドに寝転んだ。

「俺もう寝るぞ」

「おう」

電気を消して…10分もしないうちに優太は眠りについた。

今日は色々あったのだからしょうがない

ヤンキー犬は優太が眠ったのを見届けると


「ヤンキーは隣のやつより先には寝ないぜ」


と、漫画で学んだダサい名言とともに眠りについた

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