鎮魂の空

秋月ことは

鎮魂の空 ~戦後79年目の空を見て~

 79年前の今日、玉音放送により日本は終戦を迎えました。


 夏になるとよく取り上げられる戦争の話題ですが、近年では昔のようにお盆時期になると、ほぼ毎日といっていいほど取り上げられたドキュメンタリー番組や終戦記念ドラマスペシャルを見かけなくなりました。(夜中には時々ドキュメンタリー番組はあるようですが、ゴールデンタイムでは見かけなくなりました)


 戦争体験者が年々減っていき、戦争の悲惨さを直接聞くことは難しくなってきました。また、全国各地の戦争資料館も資料の維持費や後継者問題により閉館を余儀なくされた所もあるようです。


「戦争なんて映像見るだけで怖いから、そんな番組やらなくていい!」

「夏になると戦争特集やるけど、正直またか!と思う」

「戦争なんて子供に見せるものじゃない!必要ない!」

「戦争なんて過去の出来事、今は関係ない」

「太平洋戦争は日本の黒歴史」

 などの声もよく耳にします。そのような方々のお声や考えも理解できます。


 戦争の映像はモノクロでもカラーで見ても怖いですし、見ていて気持ちの良いものではありません。そのような映像を子供に見せたくないという親御さんの気持ちも分かります。また、戦争体験者の方は、過去の恐怖が思い出されるので目にしたくない気持ちも理解できます。


 確かに、今の日本は空から毎日のように爆撃が落とされることはありません。それらにより、自分の家族、友人や大切な人達が明日知れぬ命かもしれないと毎日恐怖に怯えることはありません。


 しかし、これだけ世界が近くなった今、戦争は関係ないことでしょうか?

 過去の出来事と片付けて良いのでしょうか?


 世界地図を広げてみると、少し日本から離れた国では毎日のように砲撃があり、人々は苦しんでいます。また、別の国では子供達も武器を取り戦いに出ています。戦争は過去のことではありません。今でも、世界の何処かで起こっています。


「夏にと」という考えも分かりますが、逆をいえば「夏に」戦争の話題は挙がりません。戦時中は夏だけの出来事ではなく、何年もの間起こった出来事です。当然、夏以外の季節でも戦争は続いていました。


 太平洋戦争は、日本が敗戦したので黒歴史と仰っる方がいますが、戦争は勝ち負けで黒か白かと決めるものでしょうか?歴史は勝戦国の都合の良いように編纂されると言われてますが、私に言わせれば戦争が起こった時点で勝戦国だろうと黒だと思います。


 先日、電車の中である大学生風の男女の会話が耳に入りました。どうやらご家族の方で戦争の話があったようです。しかし、その男女は広島や長崎の原爆の日を知らない、終戦記念日を知らない、はたまた太平洋戦争はどちらが勝ったのかを話を聞くまで知らなかったようです。

「小学校で習わなかったのか?」と疑問に思いましたが、もしかしたら過去の出来事で自分のことではないと忘れてしまったのかもしれません。


 その時、私は戦争風化の足音を聞いた気がしました。


 人によっては、戦争について語るのは右だ左の考えだと言われたりするので自分の考えをオープンなところで言いたくはないのですが、この大学生風の男女の会話を聞き、少し語りたくなりました。


 私は、幼い頃に祖父を亡くしたので戦争について直接聞くことはありませんでした。祖母も「戦争なんて恐ろしいもの二度とやってはいけない」と言ってましたが、戦争体験については思い出したくないから語りたくないと聞いたことがありません。そのため、私の平和学習といえばTVで見る戦争体験者の方々の話、ドラマ、ドキュメンタリーなどの映像番組や学校の授業だけでした。学校の授業も私は大学では歴史学を専攻してないので、高校が最後です。


 そのため、私の言葉は弱く、納得できる意見ではないかもしれませんが、















 私は「戦争を風化させたくありません」















 これは戦争肯定ということではなく、戦争反対だからこその意見です。


 私自身、戦争なんてしたくありません。どんな理由を掲げようとも戦争は人の命の奪い合いです。自分達だけでなく、相手にも家族や友人などの大切な人達が大勢います。戦争を正当化する理由は、この世には存在しないと思ってます。


 だからこそ、二度と戦争という恐ろしい出来事が起こってはいけないと思います。それは、日本だけでなく世界から戦争がなくなれば良いと強く思ってます。そのためには、戦争の風化は食い止めなくてはいけないと思います。


 歴史は繰り返されるではありませんが、戦争体験者が居なくなると戦争の恐ろしさを知る人間が居なくなるので戦争が起るという話を耳にしたことがあります。


 私は戦争体験者ではありません。戦後生まれの人間です。戦争を体験していないので、何かを伝えるにしてもかなり弱いです。だから、戦争体験者の方で語っても良い方の声を直接聞き、後世に語り継ぐために残していかなくてはいけない気がします。また、戦地には未だに日本に戻って来ていない方々の遺品などが残っているそうです。家で代々語り継がれていても、その方を直接知っている遺族の方々にもタイムリミットが迫ってきています。


 戦争体験者の方々の話を聞くと、当然ですが誰も戦争をしたくなかったことが分かります。あの時代がそうだったといえば、そこまででしょう。

 しかし話を聞き、あの時代の人達が何のために戦っていたのかを考えると、表向きは国のためであっても、本当は国のためではなく、故郷くにに残した家族や友人、そして大切な人を護るためだったことが伝わってきます。

 だからこそ、たった一つの大切な自分の命を差し出しても戦い、少しでも本土上陸を遅らせようと奮闘していたのでしょう。そして、残された私達に平和な未来を託されたのでしょう。


 今、私達がこの世に生を受けたのは父や母が居るから。そして、祖父母が居るからです。その命のを繋げられ、平和な生活ができているのは、あの時代の方達が命がけて掴み取ってくれたからだと思います。


 戦争なんて二度としてはいけませんし、世界から戦争で苦しむ人達がいなくなればいいと思います。だから、日本の黒歴史と言わず私達の祖父母や親族を護ってくれた人々に感謝の意を示しながら、命がけで掴み取っていただいた平和の世が続くように彼らの遺志に耳を傾け、恒久的な平和が続くよう応えていきたいです。


 だから、夏だからと言わず今日この日だけでも良いです。平和を考える日になれば良いと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鎮魂の空 秋月ことは @kotonoha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ