第5話 邪神の正体と課題
彼は、ただの高校生であった。
アニメや漫画が好きな、オタクと呼ばれる…どこにでもいる普通の高校生であった。
英雄に憧れ、勇者に憧れ、神に憧れ、魔王に憧れ…
正義や悪ではなく、特別な存在という漠然とした存在に憧れながら、ただ叶うことのない妄想を頭の中で描きながら、何の変哲もない日常を過ごす。
彼は、そんな少年であった。
そんな彼はある日、全世界を束ねる神である白髪の超絶美女の女神によって異世界に召喚される。
そしてなんやかんやあって、彼は彼女の力のすべてを継承することとなったのである。
なんやかんやの部分は本編に関係ないから省略させてもらおう。必要になったら説明するよ。
そしてなんやかんやあって神の力を手にした彼は…裏で暗躍する謎のボスキャラ的な存在になることにした。
………意味不明だろう?私もわからないよ。
ちなみに一言一句間違えていないよ。その力を君は何に使うんだと聞いたとき、裏で暗躍する謎のボスキャラ的な存在に俺はなる!と彼は宣言したのだ。
ただの思いつきか、それともそれほどまでにその暗躍する存在?というものに憧れていたのか、私にはわからないが、彼はその道を選んだ。
そうして力を手にし、目標を定めた彼は、まず自分の望む
狂気的なほどの野心を抱えていたどこかの村娘に力を与えて偽物の神として仕立て上げ、その後自分の力を七等分にし、世界にその力の種をばらまく。
まぁ、そうやって力を分け与えたせいでその村娘より弱くなってしまい、神の座を乗っ取られてしまったのだから本当に間抜けとしか言いようが無いんけどね…
と、そうやって彼は『邪神』となったのである。
これが邪神誕生の秘密さ。単純で馬鹿みたいな話でしょう?
え?ところでお前は誰なんだって?
さぁ、誰だろうね。私にもわからないよ。
………………………………
……………
……
「つまり、ここは…」
「あぁ、ゴミ捨て場ってわけさ」
智樹くんに、この奈落の成り立ちについて説明する。
ここはオルクス王国の地下にあるダンジョンなのだが、ここには非常に胸糞悪い闇の歴史がある。
それが、人体実験の失敗作の廃棄施設というものだ。
人間と魔物を組み合わせ、新たな兵器を創り出そうとした彼らだが、当然1度2度の実験でうまく行くほど簡単なものではなく、数多くの犠牲が出た。
その中でも制御不能の失敗作である彼らの処分を面倒臭がった研究者たちが、この奈落に彼らを廃棄していたのである。
「それは、今でもやってるのか?」
「いや?もう何万年も前の話さ。今じゃ古い文献にも載ってないんじゃないかな」
「……そうか。それじゃあ何でそれを俺に聞かせたんだよ。国を滅ぼせってわけじゃないんだろ?」
「うん。勿論そんなこと強制したりはしないよ」
今もやってるとかならまだしも、別に数万年前の人体実験とかどうでもいいしね。
ただ、当然これを聞かせたのには意味がある。
「聞かせた理由は簡単だよ。君が、これを聞いて彼らを殺せるかどうか。それが知りたいんだ」
「…殺せるか?」
「あぁ、そうさ。大罪は持ち主の精神性によって強さが大きく変わる。それにこれから君には色々とやってもらいたいこともあるし、ある程度の冷酷さは必要になってくる。もし殺せないのなら…他の人間に植え直さないといけなくなるからね」
「それは…」
「あっ、安心してくれよ?君には死んでもらう!とかそういう展開はないからね?能力は引き継げるから」
「そ、そうなのか…」
その言葉を聞いて安心したのか、智樹くんはホッとした様子を見せる。
「と、どうやらお客さんが来たようだよ?」
「こいつは…」
通路の奥から、体から触手を生やしたタコのような化物が現れる。
混ざり物の中でもさらに異形の姿をしていて、見ているだけで気分が悪くなる外見をしていた。
「どうすればいい?」
「うーん…普通に戦ってみればいいんじゃない?大体の相手は食べられると思うけど、ある程度魂の位に差があると体力を削ったりしないと暴食で捕食できない場合もあるし」
「はぁ…そういうこともあるのか」
俺の言葉を聞き、剣を構える智樹くん。
姿勢はいいけど、これは…
「ふっ!」
剣を振るうが、刃は触手を薄く傷つけるのみ。
「……ナイア」
「うん、食べていいよ」
智樹くんの意図を理解し、そう許可を出すと、影の龍が待ってましたと言わんばかりに一気にタコに喰らいついた。
うん、やっぱりかっこいいね!
うちの能力の中でも一、二位を争うくらいエフェクトの派手な能力である暴食の能力は、見てて飽きないかっこよさがある。
ぐちゃぐちゃという生々しい音の中で、智樹くんに話しかける。
「やっぱり最初はどんどん食べて力を底上げしたほうがいいかもね〜」
「あぁ、俺もそう思う」
智樹くんの動きは、完全に身体能力が足りない動きであった。
構え方や振り方はちゃんと学んだんだなという動きではあったが、剣を振る筋力が圧倒的に足りないといったところだ。
でも、この容赦のなさはプラス要素である。さっきの話を聞いても全く気にする様子もなく暴食を嗾けるのはなかなかできるものではない。
温室育ちの勇者くんに期待はあまりしていなかったが、これはなかなかいい感じになってくれそうな予感がする。
「よし、それじゃあ第一目標は身体能力の強化ということで、頑張っていこー!」
「お、おー?」
そうして目標を定めた俺達は、ダンジョンの奥に進んでいくのであった。
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