第67話 閑話 キャラ作りに苦労する神殿騎士 ロザリー=スティング=スランディー
「キャラが弱いな」
小さい頃から何度も夢に出てきた神コレークに、初めて出会った最初の言葉がこれだった。
この軽く放ったれた一言が、私の人生を大きく歪める。
スティング家のしきたりによってコレーク生まれとわかった時点で、神殿騎士として生きる事が決まっていた。
父曰く神がまだ地上にいた頃、コレーク様にスティング家を救ってくれたらしい。
それからスティング家ではコレーク生まれの者がでたら、神殿騎士になり神へ恩を少しでも返すのが一族の習わしだ。
コレークに所属しているというだけで父や母には可愛がられ、ある程度我が儘を言っても許され兄弟達には羨ましがられた。
十五になり緊張と興奮と期待に満ちて神殿騎士になる儀式の日、神コレークに出会った。
コレークの神殿騎士は、最速で神に出会える宗教として有名だ。
神殿騎士としての任命式の後、いきなり会う事が出会った神は、青いズボンに黒の上着という非常にシンプルな姿の青年だった。
ただ部屋には伝説でうたわれる武具、絵画、銅像や見た事のないものなど様々な物が乱雑に置かれている。
「スティング家の者か、うん、キャラが弱いな」
下から上まで舐めるように見た後言われてしまった。
その後二、三事言われて神との対談は終わってしまった。
呆気なく終わり、しばらくの間、放心状態になり何も考える事がでなかった。
そして神が言った数少ない言葉を噛み締めるように思い出しながら、先輩方の神殿騎士を見て思った。
確かにコレーク様のいう通りだ。
私の指導係の人も色取り取りの鳥の羽を鎧に貼っているという実用性皆無の鎧を着ているし、他にも白いマスクに赤いばつ印のマスクつけている人、どこで見つけてきたのだろうという右半分だけ覆っている仮面を被っている人、謎の光を発している眼帯をつけている人、サボテンを持ち歩いて腹話術している人など様々な人がいらっしゃる。
この日から私のキャラ作りに奮闘する事になった。
最初に髪型を変えてみる事になる、少しずつ変えていき、最終的にはモヒカンにしてピンク色に染めてみたが周りに「似合わないからやめたら」と言われた。
確かに似合わないし、それにその日だけで同じような先輩が三人程見かけた。
そこで色々試し、なるべく自分らしくそしてインパクト重視の特徴的なキャラクターを作り上げていった。
まず簡単にできる物として語尾に「〜しぃ」という口癖をつけるようにした。
そして様々な格好を試したがどれもしっくりいかず、結局ありきたりだったがピエロの格好をとり得た。
ただ差別化する為に、スペシャリストとしてキノコを研究する事にした。
ピエロ×研究者×キノコ、この組み合わせはいないはずだ。
コレークは他の宗教と違い、入信してしばらくするとゼネラリストかスペシャリストの道を選ばされる。
ゼネラリストは他の宗教と同じくモンスターや盗賊等から街を守る集団だ。
一般的な神殿騎士と違って一定の地でとどまらず、旅に出て人が経験しない体験を得る為、世界中回る事が多い。
その為他の神殿騎士よりもレベルが高いと言われている武闘派集団だ。
もう一つがスペシャリスト、何か一つに特化する事で、他の人が発見できないもの見つける事に重きを置いている。
そこまで戦うの好きではないので、スペシャリストの道を選んだ。
キノコのスペシャリストになった理由は特にない。
どのスペシャリストになるか選ぶ時、他のスペシャリストと被らない者はないか探した時にこのジャンルが長い間空席になっていたのを見つけた。
早速スペシャリストへの転属依頼を出して、父の伝手を使って何の実績もない私が王都の総合研究所、通称アリの巣に就職する事ができた。
名前の由来は何があっても実験資料が残るように、地下へ地下へと穴を掘り進め、いつの間にか無数に穴が広がってしまいアリの巣に似てしまった所と、脇目も振らずに研究に取り組む姿勢が働き蟻のようだと言う所からきている。
特に思い入れは無かったが研究してみると、キノコが他の植物と違い種をもたず胞子をまき成長する。
そしてキノコは森の掃除屋と言われ、分解して土に戻す循環する大事な役割を持っていた。
いつの間にか研究者として、どっぷりキノコの世界に浸かってしまった。
様々な研究をして光るキノコの培養及び光度を調整する方法を見つけ、実用化に成功しこのアリの巣でも照明代わりに使われている。
他にも条件を揃えるだけで、急激に繁殖してクソ不味いけれど栄養価がある非常食になるキノコの開発や、ガラスの強度を上げる為の塗料として使えるキノコの発見など様々な事が評価されていつの間にかゴールド認定を頂けるまでになっていた。
認定をもらったご褒美にまとまった休みをもらう事ができ、実家に帰る事ができた。
「ロザリー、面白い話を聞いたぞ。
新種のキノコだ。どうやらキノコが死体を操っているらしいぞ」
家で寛いでいる時に父親が息を切らせながらやってきた。
「本当ですか?」
「なんだその口の聞き方は!」
「すみませんでしぃ、本当でしか?」
私の口の聞き方に、普段穏やかな父が青筋を立てて怒り出した。
父親は誰よりも私に甘いが、コレークの神殿騎士としてキャラ作りに誰よりも厳しい。
今みたいに咄嗟に出るすの言葉遣いとか、普通の格好で寛いでいると烈火のごとく怒りだす。
「まぁいいだろ、とにかくすぐに行け」
そう言って多額の金額が明記された小切手を手渡した。
せっかくの休日がなくなってしまったが、新たな発見に興奮しながら馬車を走らせた。
温泉街のスロネについてから幸の薄そうな領主と、プリプリ怒っているお姉さんと打ち合わせをする。
スポンサーパワーで精霊使いがいるチームとの同行させてもらう事になった。
名門の神殿騎士、コビットのシーフ、槍使いのリザードマンに刀と剣の二刀流アンデット、そしてヒューマンの精霊使い。
出会ったメンバーは希望通り、いやそれ以上に素晴らしく愉快なメンバーだった。
ただ途中である問題に気づいてしまった。
確かに希望通りの一癖も二癖もあるメンバーだが、このメンバーの中だと私のキャラが一番弱いのではないだろうか。
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