第55話 閑話 みんな一緒に見えるリザードマン ノーマ
ヒューマンっていうのはどれもみんな一緒に見える。
どいつも臆病で面倒臭い奴らばかりだ。
オレ達リザードマンと比べて、他人を気にしすぎだし、服装もゴテゴテしてる。
名前もやたら長いし、小さな事でキーキー騒がしい。
村から出てしばらくヒューマンの生活をしたが、無駄が多くてよくわからない。
特に変なのが役職が高かったり、実績や実力があるのならまだわかるが、偉いやつの子供だったり子孫だったりするだけで、態度や言葉遣いがあんなに変わるんだ。
どこで生まれたとか、収入が多いとか、年がいくつとか、先祖に偉い人がいるのがオレとお前との関係には一切関係ないだろ。
そんな事を言い出したらオレの親だって、戦士長だった。
ただ戦士長の息子だからと言って、特別に扱ってもらった事はない。
悪い事をした場合や、何かを失敗すれば飯を食えない事だって普通にあった。
よくわからない理由でヒューマンと何度も衝突した。
その時決まってヒューマン達は決まって野蛮、モンスターかぶれとか言いだす。
ヒューマンからは野蛮に見えるのかもしれんが、そんなのおたくらが勝手に決めたルールだろ。
もしルールがあるなら先に言え。
リザードマンにだって、ヒューマン達程ごちゃごちゃしていはないが、しっかりルールや組織ある。
農作物や住居の管理等生活面で管理する管理長、火の神に祈りを捧げるシャーマンのトップの神官長、そして狩りや村の外敵から守る自警団のトップ戦士長、この三人の話し合いで村の方針やルールが決まっている。
リザードマン達は血縁関係も、どこに住んでいるかも、年齢も、一切関係なく能力が優秀な者が全ての権限を持つ。
シャーマンになるにはどれだけ神と対話ができるかが求められ、管理長になるには、頭がよく、他のリザードマン達の信頼されているか求められた。
そしてオレがいた自警団は単純に強さを求められた。
素質があるようだったので、シャーマンになるという道もあったが自警団に入る事にした。
戦士長の親父に勝ちたかったからだ。
親父は力強く、皮膚は硬く、そして槍づかいも巧みだった。
何度も挑んだが、毎回ボロボロになっていた。
親父は強く誰もが憧れていたが、同時に皆から嫌われていた。
リザードマンは優秀な者だけが、子を残す事ができる。
その為自警団は成人したリザードマン同士がトーナメントで争い、優秀な成績を残した者だけが子を残す事ができた。
親父はそこで勝ち続け、何人もの兄弟がいる。
普通はある程度子供を作ったら大会に出ない事が多いが、親父は出続けている。
「文句があるなら俺を倒せ」
事がある事にいう親父の口癖だった。
周りは文句を言っていたが、オレは親父が正しいと思う。
群れの事を考えるなら、優秀な奴が子孫を残すのが正解だ。
子孫を作りたいなら、自分の方が優れていると証明すればいい。
親父よりも弱いオレがいけないのだ。
あの親父をぶっ倒す為に日々鍛え続けた。
何度も手合わせをするが、親父を倒す事ができなかった。
ただその親父がヒューマンに負けた。
亜人狩りというやつだ。
村が蹂躙される事もなく、死んだのは親父一人だけだった。
あっという間の出来事で、今でも信じられない。
目標にし続けた親父が、あまりにも呆気なく死んだ。
親父が殺されてからは、やる気がなくなってしまった。
特にヒューマンに恨みはないが、この後何をすればいいのだろうか。
次の戦士長を決める為のトーナメントに参加したが、何の手応えを一切感じず優勝した。
次の戦士長になるように管理長と神官長に言われたが、ここに残ってもオレが求めている強さはないと思い黙って村を出る事にした。
最初についた村はヒューマンも少なく、こちらをモンスター扱いしてろくに会話しようとする奴がいない。
宿にも泊まれず、物を売って貰うのも簡単じゃなかった。
そこで田舎の村を離れ、もう少し大きめの町に行ってみた。
偏見はあったが前よりマシだった。
ヒューマン達の世界で暮らしていくには、何をやるにも金がいる。
飯を食うのも、どこかで寝るのも、街を出るのもとにかく金が必要だ。
金を得る為に冒険者に登録した。
モンスターを狩って金を貰っていたが、あっという間に使い切ってしまう。
ランクが低いせいで、雑魚モンスターしか換金してくれないのだ。
いくら依頼をこなしても、寝泊まりして飯食ったら金がすぐになくなる。
このままだと、何の為に村から出てきたのかわからない。
ランクを上げてもっと強いモンスター、強いヒューマン者と戦い、強さとは何かを知りたい。
Cランク試験の為にやってきた赤い壁の街は、今まで寄った町の中では一番大きかったので少しはマシかと思ったが、誰一人オレに近づこうする奴はいない。
やはり結局ヒューマンはどこに行っても一緒か。
近づくだけで、あからさまに逃げていくか、集団でオレをバカにするかどちらかだ。
そう思ってチームを組むのを諦めかけた時、尻尾を踏んだ変なヒューマンに出会った。
クライフと名乗る男は少し緊張しているが、無駄に怖がる事も馬鹿にするような目をしていない。
そして何を思ったのか、組まないかと提案してきた。
どうやらこいつも、変な死人のせいでメンバーに困っていたらしい。
とりあえずこのヒューマンと組んでみる事にした。
どうせこいつも他のヒューマンと同じなんだろうと、あまり期待はしていなかった。
ただクライフが蜘蛛を狩るのを初めて見た際、クライフの持っている刀が突然青白く輝いた。
そして気がついたらクライフは宙を移動し、蜘蛛の足の数が減っている。
どうやらクライフも精霊を使うシャーマンらしい。
こいつは他のヒューマンと少しだけ違うのかもしれない。
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