〜Ⅲ-終〜『ロート』

『冥府谷』へワープしたユーリスは、ふとBlanの異変に気付く。

Blanの瞳は何処かしら憂いを宿し、歯を食い縛っているように見えた。


「Blan?」

『、何だいユーリス?』

「どうかした?何か様子が変に見えるけど」

『…何でも無いよ』


慌てて取り繕うBlanに、ユーリスはモヤモヤした思いをするが、今は用事を済ませるのが先だと目の前に広がる荒廃した大地を見据える。

その中央に、何かが置いてあり、微かに人影がそれに座っているように見えた。


「…誰だろ、こんな場所に一人で」

『………『赤い悪魔』、『ロート』と呼ばれる』

「ロート……」


『赤』、という意味があったかな、とユーリスは考える。

どうも、悪魔というのは『色』に拘りでもあるのだろうか?

疑問に思うが、慌ててユーリスは本来の目的を思い出し、ロートと思われる悪魔の座る方に視線を戻した。

暫し時間が流れる。

ロートらしき人影が動く様子は無い。

ユーリスが困ったようにBlanに視線を移すが、Blanは何も答えない。

仕方無くユーリスがロートらしき人影の方に歩み出す。

豪華な玉座。

そこに威風堂々と腰掛けるのは、赤い長髪に引き締まった筋肉質のガタイのいい身体の美丈夫。

Blanに負けず劣らずの美丈夫だな、と思ったのがユーリスの感想だった。


『よぉ、『紫の羽虫』。それに、『白いゴミ虫』』

「は、?」


『白いゴミ虫』がBlanを指す言葉だと気付いてユーリスは一瞬にして腸が煮えくり返る思いを抱き『赤い悪魔(ロート)』を睨み付ける。


『落ち着けユーリス、悪魔とはああいった存在だ』

「別に俺が何て言われようがいい。でも、Blanへの暴言なら俺は絶対に許せない」


ユーリスを宥めるBlanだが、ユーリスはロートを睨み付けたまま唸る。

そんなユーリスを面白そうに眺めながら、ロートはBlanに視線を向けた。


『相変わらず『羽虫』に好かれるんだな。『前の羽虫』みたいによぉ』

「『前の羽虫』…?」

『………』


ロートの言葉にユーリスがBlanを見ると、Blanは悲痛な面持ちで黙り込んでいる。

それを見たユーリスは、更にモヤモヤした思いを抱いた。

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Blan―白い悪魔― 闇無 @kuranashi2009

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