〜Ⅱ-Ⅳ~新たな被害者

――『情報収集をしてくる』


ユーリスは、そう言って一旦姿を消したBlanを思う。

Blanの艶めいた姿が頭にこびり付いている。

あのまま押し切っても良かったが、それは得策では無いとわかっている。


――ピピッ


「ん?クノールからかな?」


『金鹿(きんじか)の国』の王であり、昔からの友人でもあるクノールから通信が入る。

ユーリスは机に向かって椅子に座り、モニターのスイッチを入れた。

てっきりクノールからか、と思っていたが、モニターに映るのはつい最近クノールと結婚したばかりのラファエルという名前の女性だった。


『ユーリスさん?少しお時間宜しいでしょうか…』

「はい、どうかしましたか?」

『そちらの国にクノールがお邪魔していませんか?』

「…?いえ、クノールが来たという話は聞いてません」

『そうですか…』


少し落胆したような雰囲気のラファエルに、ユーリスは問う。


「ディーゼルかエルネスタの国には連絡は?」

『既に取りました。ユーリスさんが最後の連絡相手になります…』

「……俺からも情報収集を行ってみます。心配でしょうが、気をしっかり」

『はい、ありがとうございます』


そこで通信が切れ、モニターは真っ暗になる。

ユーリスは椅子から立ち上がり、窓に近寄り外の景色を眺めながら考える。


(あのクノールが誰にも連絡せずに居なくなったりするかな…ひょっとして人間の消失事件って俺の国内だけじゃない…?)


ユーリスはもう一度机に向かって椅子に座り、モニターのスイッチを入れて『青獅子(あおじし)の国』と『赤鷹(あかたか)の国』の王であり友人であるディーゼルとエルネスタに連絡を取ってみる事にした。


―――――


ディーゼルとエルネスタと話してわかった事。

ディーゼルの恋人であるレズとエルネスタの恋人であるレスが急に姿を消したらしい。

ディーゼルもエルネスタも、姿を消した二人は誘拐されたに違いないと言っていた。

だが、ユーリスにはその二人が誘拐されたとは思えなかった。


(レズ先生とレス先生を誘拐出来る人間なんて、紫蛸にも赤鷹にも金鹿にも青獅子にもいる筈ないしなぁ……)


ユーリスが戦ったとしても決して勝てないだろうあの二人の『化け物人間』を誘拐出来る『人間』は存在しないだろう、と考える。

とすれば、思い当たるのは『人間消失事件』のみ。


「まさか『四の国』全てで『人間消失事件』が起きているなんてな…被害者の数が想定出来そうにないや…」


これは、早い所手を打たないと面倒になるかもしれない、とユーリスは深い溜息を吐いた。

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