〜Ⅰ-Ⅲ〜悪魔召喚
「『悪魔の仕業』…という情報が必ず入るね」
「…そもそも『悪魔』と断言出来るのは何故なんだ…」
配下から聞き出した情報に、ユーリス達は頭を悩ませる。
そんな中、また一人の配下がユーリス達の元に帰って来た。
今までと違うのは、その配下が手にしている一冊の本か。
「その本は?」
「『事件』の目撃者が見付けたそうです」
配下がユーリス達にその本を差し出す。
見た目からして、怪しさ満点の黒い表紙の本。
取り敢えず、シェズが本を開いてみる。
「『悪魔召喚の方法』………何かめちゃくちゃ胡散臭い内容だが…」
「『事件』の目撃者の証言と一致はするよね」
本の内容をざっくり読んでみる。
『悪魔召喚』の為に必要な『儀式』のやり方。
召喚した悪魔は己を召喚した人物の願いを一つだけ叶えてくれる。
但し、願いを叶えるには悪魔に『代償』を払わないといけない。
『代償』は召喚した人物に関わる『何か』。
『代償』を悪魔に払うとその悪魔と『契約』を交わした事になる。
『契約』は召喚した人物の願いを叶えるまで継続される。
願いを叶えて『契約』を終えたら、召喚した悪魔は元いた場所に帰って行く。
「…いかにも、という感じはするけど…」
「今回の『事件』に当て嵌まるか、と言われたら微妙だな…」
「うん。『契約』の内容が無差別の人の消失、っていうのがね…召喚した人物の願いが無差別の人の消失なら、その召喚主って猟奇的殺人犯みたいなものだし…」
シェズが難しい顔をして考え込んでいるのを眺めながら、ユーリスはまた、自分に命を与えた悪魔に思考を移す。
彼は、『代償』など求めなかった。
そもそも、ユーリスには悪魔に払える『代償』など無かった。
あるとしたら、『命』しか無い。
だが、それだと矛盾が生じてしまう。
「シェズ、『代償』を必要としない悪魔って居るのかな…」
ユーリスが問うが、シェズが反応を返さない。
ユーリスが不審に思い、シェズが居た筈の場所に視線をやる。
そこには、シェズの姿が無かった。
「…シェズ?ちょっと、悪戯にしては酷くない?何処に隠れたのさ」
ユーリスは慌ててくまなく部屋を調べる。
シェズは何処にも居ない。
部屋を出た痕跡も無い。
ユーリスは背中に冷や汗が流れる感覚に陥る。
これでは、まるで『事件』と同じ状況ではないか。
何時も側で支えてくれたシェズの消失。
ユーリスの心は、焦りと不安に埋め尽くされていく。
「『悪魔召喚』…」
ふと、開いていた本に視線を移す。
召喚した悪魔は召喚主の願いを一つ叶えてくれる…。
それから先のユーリスの行動は、まさに本に書かれていたのと同じ…『悪魔召喚』。
―――――
愛用しているナイフで片方の掌を切り付ける。
その傷口から流れる血で、『悪魔召喚』の為の『魔法陣』を床に描く。
それが終われば、魔法陣の中央に立ち、念じる。
『我が願いを叶えし者よ、我が呼びかけに応えよ』。
―――――
次にユーリスが意識を戻した時、魔法陣が赤く光りを放っているのを認識した。
まさか、と疑惑を感じつつも、ユーリスは成り行きを見守る。
次の瞬間、ユーリスは闇の中に一人佇んでいた。
一応周りを見渡し、完全に闇の中だと思いまた視線を前に向ける。
すると、その闇の中から一つの人影が姿を現した。
『…ああ、君か…随分と久し振りだ…元気そうだな、安心した』
長い白髪を背中に流し。
額の右側には立派な角。
懐かしむように見つめてくる瞳は限りなく白に近い色。
――『夢』に見た彼が、ユーリスの目前に立っていた…
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