窓のない家

文字を打つ軟体動物

本文

窓がね、怖いんですよ。

外と内を明確に分けている、窓が怖いんです。


例えば扉には、外と内を繋ぐ役割があると思うんです。

でも、窓は……はっきり言って、なにもないじゃないですか。

光を取り込むとか、景色が見えるとかありますけど、それでも……何かが起きる理由としては足りない気がしません?


それなのに、隔てている向こう側が見えてしまう。

だからですね、窓が、怖いんですよ。


――月刊██『変な部屋特集 窓がない部屋編』インタビュー記事より抜粋



 今思えば、あいつ相当参ってたんだなって。

 窓のない部屋なんか作っちゃって、絶対お金かかるでしょ、あれ。


 そう、あいつ心霊スポットのゴミ屋敷に行って。

「うわくっさ。窓以外何も見えないくらいにゴミに埋め尽くされてるな……」とか言いながら。

 それで、唯一見えた窓に、見たっぽいんですよね、驚いた顔して。


 きっと、理由をつけたくて仕方がなかったんでしょうね。

 怖いものを怖いままにしておくなんて、人間にできっこありませんよ、恐怖を和らげるための、必死な逃避行動なんです。


 それで、窓のない部屋なんかに引きこもっちゃって、人との関わりも薄れてって。

 僕からすれば、そっちのほうがよっぽど怖いでしょ、って感じなんですけど。


 ねぇ。

 そんなことしても、無駄なのに。

 僕からは逃げられないのに、かわいいですねぇ。

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