第4話 のんびり

 私はテラスのベッドチェアにて日光浴をしています。


 ポカポカ陽気が気持ちいいです。特に今日のような雲ひとつなく晴れた日は日光浴日和です。


 普通、森の中をイメージすると高い木々や木陰、土と草花を連想するでしょう。木陰が深く、どこか鬱蒼としているような。


 そういった所に家を建てフォレスト派は暮らしていると考えいるでしょう。


 けれど家の周囲は木々が伐採されています。地面も雑草は刈り取り、庭も道もあります。

 ゆえに太陽の光が家や庭に燦々さんさんと降り注いでいます。


 日光浴は大気中のマナを吸収するための行為であります。私達妖精にとってマナは生きていく上で大切なものです。


 そして私達、子供妖精はマナの生成と放出が割に合わないため、マナをよりよく生成するため日光浴をするのです。


 決して寝転がってぐうたらしていたいという言い訳ではないのです。日光浴は子供にとって大切な日課なのです。


 日向ぼっこしていると客が来た。私は気配でセイラだと判ります。


「ネネカ、起きてる?」


 ほら、セイラです。


「ん、起きてる」


 私は目を瞑ったたまま返事をする。そしてセイラに背を向けるように横に向きます。


 するとベッドチェアに座る気配が伝わります。


 ベッドチェアはダブルサイズなので子供が二人以上寝転んでもまだスペースがある。


 セイラは何も言わずにじっとしています。


 まあ、これはいつものことです。


 私がテラスで日向ぼっこをしているとよく隣に座るのです。

 しばらくしてセイラは髪を結い、寝転がります。


 私達は元々互いにあまりおしゃべり好きではないので口数は少ない。だからこそ仲が良い。


  ◇ ◇ ◇


 これは夢だろうか。


 真っ白い世界が広がっている。


 ああ、これは夢だ。


 その真っ白い世界に小さい頃……と言っても今も小さいのだけど、それよりも小さい私がしゃがんで泣いています。


 既視感があります。


 これは昔のこと?

 本当にあったこと?

 どうして泣いているのでしょう?


 私の下に小さいセイラがやって来ました。私を見て、困り、うろうろしています。しばらくしてセイラもしゃがんで泣き始めました。


 次に小さいミウがやって来ました。


 ミウは私達を見て、困り、うろうろ。でも、ミウは急いで大人を呼びました。呼ばれて来たのはミウのお母さんです。


 ミウのお母さんはしゃがんで私達にどうして泣いているのかを優しく聞きます。


 小さい私は言います。独りだからと。


 セイラは私が泣いているからと。


 ミウのお母さんは私とセイラの頭を撫で、「さあ、皆で一緒に遊びましょ」と言う。


  ◇ ◇ ◇


「ん、んん」


 おや、いつの間にか寝ていました。

 隣をうかがうとセイラはまだ寝ている。


 時計で時間を確認するとそんなに時間は経っていません。

 ふと隣のセイラの寝顔を見ていると悪戯心が湧いてきました。


 私はセイラの頬を人差し指でちょんちょんと突く。


「…………」


 ぷにぷにして柔らかい。


 それにしても私が頬を突いていてもセイラは全く起きません。


 もっとぷにぷに。ぷにぷに。


 起きない。


 なら──。


 ぱち!


 セイラの瞼が開きました。


「!」


 私は慌てて指を引っ込めた。


 セイラが目を覚ましたようです。顔を動かさずに目玉だけを動かして、私と視線が合います。


「おはよ」と私が挨拶すると、

「……うん。……ねえ、突っついた?」


 私は小首を傾げて知らんぷり。


 セイラはゆっくり上半身を起き上がらせます。

 まだきちんと覚醒してないのかボケーとしている。


「家に入ろっか?」

 と私は提案する。


「うん」


 私達は立ち上がり家の中へと向かいます。


「ねえ、昔こんなことなかった?」


 私は夢からこんなことはなかったかを聞きます。


 セイラは顔を赤くして、「忘れたわ。そんなこと」と言い、スタスタと先を歩きます。


 ああ、あの夢は昔のことだったか。

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