第2話 水面

昨日から新学期が始まり、一大イベントである席替えが行われた。

高校に上がって初めての席替えだったが結果は最高。

私は後方窓際の席を確保することができた。

こうして空を眺めているのが好き。

8月も過ぎ、まだ猛暑ではあるものの秋に近づいた色をしている空に

流れる雲を見ながら。

私は1時限目の数学をそう過ごした後、次の英語の時間の支度をしていた。


_…さん。さくらさん…?


私は自分の名前を呼ばれていることに気が付いた。

あまりこう話しかけられることが無かったので、少しびっくりしていた。

身長は小柄で、縁のない眼鏡に、低い位置で二つに結った茶色い髪。

二重でぱちっりした目に、小さく微笑む口。

頬の雀斑がよく似合うと思った。


_私の名前、すみれって言うの。

 私、入学式の時からあなたと話したいと思ってて。だけど話すタイミング

 逃しちゃったから、新学期を迎えた今なら、席も近いし…。


そう照れくさそうに微笑む彼女を見て、内心孤独だった私は安堵した。


_それで…これからは、お昼の時間に誘っても良いかな。

 私いつも一人だし、クラスの子らとは合わなくて。

 さくらさんもいつも一人でしょ?

 …あ、何て呼べばいいかな。さくらさんじゃよそよそしいよね。


_好きに呼んだらいいよ。私は何て呼べばいい?


_ほんと!なら、私はさくちゃんって呼ぶ。

 私のことは…そうだな。

 さくちゃんだから、私はすみちゃんじゃない?


そんな他愛も無い会話があって、お昼を一緒に食べた。彼女のお昼ご飯は、お昼ご飯というより

おやつのような。ジャムパンに、いちごミルクに

コーヒー牛乳。

甘くないの?と聞いたが、彼女は最後まで美味しそうに食べきっていた。




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