種馬と鳳家

 朝起きたら全裸の若い女達に囲まれていた。

 男なら誰もがウオオ!と思う……事な訳ないだろ!全員見知った顔でも普通に怖えーよ。

 そんな弱者の気持ち等最強の雄が思うはず無く、ヤッベ連絡すんの忘れてた。と口にし全裸で起き上がるのは主人公。

 自信の現れか、見られ慣れているせいか隠そうと等微塵もしない。

「何なんですか?この雌豚達は!えっ、今女神わたしを睨みましたね。睨んでない?現人神サタンに対する異論は天につばはく行為と心得てください!」

 栗の花と思われし匂い香る寝室でギャアギャア喚きだしたのは、バッチリ着込んでいるヒロイン。

 彼女のそういうところが進矢は嫌いだった。

 そりゃもう女神様だって、理解が及ばない衝撃の初体験を前にすればこうもなろう。

 まぁ、それを見据える女達の目は鋭い。

 女に対する値踏みと言えば、大半は外見だけで同性だろうと異性だろうと済ますだろう。

 が、鳳の姓を名乗る女達はそれだけで済まさない。

 起きてから異変に気付くまでの反応速度、起き上がる際の身のこなし、視線の置き方。

 優勢思想に取り憑かれた一族だからこそ、名前も知らない女の身体が見た目だけのハリボテでない事を……発達した神経回路がタップリ中身につまっている事を認識。


 そんな日記に書かれてもよく分からない事態を終わらすのは綺麗な音一つ。 

 それを出したのは少女と見間違う小さな影。

 息子の親友。といった方が聞こえいい進矢に会いに……民草からの苦情もあってここに、勿論当然服は着ている。

 仮に脱いでたら、姓が違う鳳の跡取りは家出が確定するであろう。

 遺伝子厨の彼でも進矢の子が弟か妹になる事実は……流石に耐えられないであろう。

 そんな物語に関係無い、出てこない存在の説明はハショリ。

 再び寝室の場面。

 だが、セレナは気づいている。身のこなしが練度の熟練さから成長障害を患っている個体だと……故に幼子にあらずと

「ボクの息子といい……男って生き物は連絡一つよこさないから困ったものだね。二人とも弟みたいに幼い頃から厳しく躾けるべきだったよ。……ってゲー最悪イビルディア人がいる。うん?……うん、うん?この方は絶対に女神様じゃんどうしよう。」

 憎まれたり嫌われたりするよりは……で甘やかした結果が揃いも揃って、血統の有無に関わらずワガママDQNのコレである。

 息子の方はまだ何もしてないだろ?後に留学先で、後の人質先で思いっきりシでかしますが何か?

 まだ時系列的にシてないと思われているだけですけど何か?

 誰もが知る事をさも真理の様に語る存在に対して、美鶴さんがウチに来るのは珍しいですね。と下着を履きながら進矢は答える。

「これからおっぱじめるのに何故!服を着る必要が?……」

「いやいや、全員相手にしてもらわないと困るだけど……」

「貴方を知ってから他の男が全員ヒョロガリのチビにしか見えないの。だからお願い。」

 大好きな色をした瞳に囲まれ、一途な程に向けられ……進矢は理解した。

 セっちゃんの目をこの色にして、自分以外見えないようにする夢を。

 

 全裸で土下座というシチュエーションに興奮……は常人なら、普通の神経をしていたらしないだろう。

 事実女神はこの光景に引いていた。

 宗教国家のトップならこんなの慣れてるだろ。という意見には、己を客観的に見るのは難しいが答え。

 さらに言えば人間風情にする理由が意味不明。

「この醜態は何ですか?東亜皇国の女にはプライドが無いんですか?そもそも女神わたしの愛人に向かって何ですかその対応は!シン君は現人神サタンの所有物です。完全独占契約をしてあります。……そもそも殿方と授かりの儀をしたいなら他にいくらでもいるでしょうし?ほら八百屋の殿方なんて禿頭とくとうになる程ですし、男性ホルモンの供給量は膨大ですよ。だから速やかに消えてください。」

 進矢が大嫌いな瞳の色で好き勝手な事をほざく様は、まさしく傲慢不遜な女神様。

 まぁ知らん宗教の現人神なんて、何だコイツ頭湧いてんのか?としか世間には思われないモノ。

 進矢、この方だけは辞めておけ。と正しさを口にするのは美鶴。

 ここまで胸がデカくて知能以外優秀な変えはいないが。と付け足された事もあり……そこは必ず用意する。と嘘でも言ってくださいよ。と麒麟児からの返答。


「そもそも最強の雄を独占とかあり得なくない。……パッとしなくて金もないオッサンの正妻より、土地持ち強者の愛人が幸せでしょ?」

「そうよ、そうよ。女と違って撒き散らすだけでいいんだから。チャンスは平等に配分すべきよ。……まぁ財産は息子の実力順という事で」

「何?私達から優秀な子供を産むチャンスを奪って楽しいの?ハハン分かった自分がショボいガキを産んだ時……母親として負けるのが怖いんだ。だから独占しようとするんだ。マジで中身が腐ってるね。」

 もし感情の代わりざまに音がするなら、これはプツン。と評すべきであろう。

 この痴れ者が!!!という叫びが女神の口から一つ。

 人間風情の発言に……憤怒の表情を浮かべるセレナ。

 ナニかが少し抜けた事を進矢には見えていた。だから完成をもう少し待つ。

 その隣で、ま、マズイこのままじゃイビルディア帝国にヤラれる。と頭をかかえる小女に収集を期待するのは無駄だと……理解しながら。


 親すらいない進矢の主、が今この国にいない事もあり美鶴が代役を務める。

 本来は主の妻が行うべきであろう事なんだがな。と怒り顔。

 自分に近い血族の男が皆未だ独身とか、頭オカシクなっても仕方ない。

 さっさと孫の顔を見せろ。と思っても仕方ない。

 配下の結婚が先とか、世間体考えろよ。と息子に憤怒。

 弟はまぁほら成長障害だし……と不問。

 最強の雄とはいえ……進矢は立場上身分的に下なのだから。

 何で、怒っているんだろう?と、わけわからない事もあり主演二人は顔を見合わせる。

「で!どうしてもその方と結婚するんだな。いくらでも世話してやったのに鳳の顔を潰すんだな。あぁ別に降格処分とか領地没収はしないからな。他家に引き抜かれたら、謀反とか考えられても困るし。……そもそもイビルディア帝国が攻めてきた際に必要な人材だし。とりあえずセレナ様は早く帰られては?」

 人の関係と風習たる結婚なんてしません。シン君は愛人です。と余計な一言、当然小女は無視。

「そもそも家庭に入るとか家庭を守るという気概が、乱世の領主に嫁ぐ自覚が女神様からは見えないのですが……」

 えっ?醜く老いる時か、子に任せられる様になるまでナカに入るつもりはありませんよ。と多様性あふれる使命兼仕事熱心な一言。

 原文では三十五歳と書いてあったが……まぁ乱世と治世の平均寿命は違い過ぎるし。という建前で変更。

「進矢マジで辞めておけ!この方は良くも悪くも傑物だ。数多の厄災を一人で蹴散らすくらいの男……いやもはや人外でなければ共に歩くのは無理だ。」

 しれっと未来予知しているかの様なセリフを作るな。とこの場にいる全員が思っても……時は止まらない。

 

 そんな状態で空気をよめない、いや読む気がないの両取りたるセレナ。

「ずっと女神わたしが思っていた事を美鶴に聞いてもいいですか?」

 うん?初対面の年長者を呼び捨て!と反応をしめすが、発生源から悪意も生意気さも感じない。

 そりゃそうだ。好きでも無い人間に敬称をつける等……下の存在を敬う物好きはいないであろう。

 神の意思を悟ったのか、構いませんよ。という大人な対応。

「東亜皇国の人間なのに、えらく女神わたしに気をつかいますね。昔会った事は絶対無いでしょうし、いつでも祈れるように私の肖像画を今度送りましょう。その信仰心なら毎日……反応的に美鶴自身は興味無いようですね。あららこれは初めてのパターンです。」

 国家の象徴が他国にいれば誰でも気を使うだろう。と君は思うであろう。

 が!普通はまさか本人がいると思わない。

 何なら他人の空似だと思い敬意すら払わない。

 そもそも他国のお偉いさんの顔を君はどれだけ知っている?

 隣でラーメン食ってても、外人が美味そうに食っているな。で終わりだろう。


 美鶴は理解した。

 この女神をココに長居させるのはマズイと。

(とはいえイビルディアの人間を呼びたくないが背に腹は……どちらが腹かは分からないし、そもそも殴られに行くようなモンだが仕方ない。)

 彼女は当主たる弟に事後承諾となる形で、イビルディア人との間に子供を作っていた。

 それもさらってきた相手との間に。

 多くの男に乱暴されズタボロになろうと死ぬまで変わることが無かった彼女の信仰心……否精神力。

 そんな心の強さといったゴミは不要、他が欲しい。と思い……急接近。

 だからこそ女神の事は知っていた。

 だからこそ西の人工子宮に頼り、女二人で遺伝子をあわせ……先祖の悲願を作り出す。

 その結晶は今頃留学先で好きかってしているだろうなと……優秀で二枚目な息子を思い母は笑う。

 とんでもない劣等遺伝子の生物を愛する史実を時期的に……絶対知らぬゆえ。

 早く質問に返していただきたいですが!という催促には、ボクの気が変わりました。どうかどうか進矢の事をよろしくお願いします。と返答になっていないナニかが送られた。

 

 二人から離れた後、美鶴はイビルディア帝国の知り合いに手紙を書いた。

 東亜皇国で女神が混血の少年と子作りをしている。と嘘一切無しの言葉に封をし……希望的観測にそまる。

 彼女は知らないのだろう。

 自分との間に息子を作った存在が、フェネクスのご令嬢だと……否それは知っていた。

 たまたま持っていた傷の治りが異様に早い体質を、不老不死である彼女は求めたのだから、無論発現するとすれば次代であるが……雛はそれを証明済みである。

 だが彼女は知らなかったのだろう。

 フェネクスのご令嬢が捕えられた理由は……支配者の義娘を逃がすために身代わりとなった事を。

 その恩を返そうと怪物の妻は情報を集め……死体だけでも取り返し、盛大に弔ってやろうとしている事を……

 美鶴がイビルディア帝国に拉致られるまで……しばしの時間。

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