落ちた恋は……

 風呂の後は食事。

 短パンTシャツの進矢に対して、セレナは相変わらず顔以外露出をしない女神ファッション。

 勿論、好きな女のために服は用意してある……男が着せたがるモノ等分かるだろ?

 そんな雄の欲望等、裸か着込むかの両極端たる二択しか手札に持たない女神には分からない。

 そんなセレナが進矢は半分嫌いだった。

 事実、熱くない?の言葉には、慣れてます。と涼しい顔で一言。

 風呂場での可愛らしい顔と美しい表情は、幻覚だったのか。と彼が思う程に……ヒロインは嫌いな目の色をしていた。

 そんなコンナで後者すらも終わらせ。

 空の皿を前に女神は手を合わせない!だって合わされる方なのだから。

──想像以上でした。今回を忘れず改善を続けてください。明日はこれ以上を期待しますよ。──

 流石に感謝の欠片もないだろうな。とだいぶセレナの事が分かっていた事もあり……案の定女中が顔を見せない事もあり、当たり前の様に要望が紙に書かれ、テーブルの上に置かれた。


「シン君、何で彼女達は来ないのでしょうか?女神わたしの記憶に少しでも残りたいと思わないのでしょうか?本当に変わっていますね。」

 変わっているのはセっちゃんだよ。と進矢は言わなかった。

 そもそもイビルディア帝国以外の地に神という概念が無い事、仮にソレを語っていたとしても胡散臭い詐欺師にしか見えない事。

 こっちはホテルで伝え、それくらい知っています。と解答があった……まぁ改める気配すら無い。

 が!何も変わらなかった事を、別に責める気はおきない。

 知っているだけで……出来たり、改めたりが可能ならばこの世は楽チンであろう。

 そもそも一日、一週間で人は変われない。

 でも一月あれば適正と心構えされあれば、多少は変わる。

 だいたい一年あれば……心構えだけでも大分変わるだろう。

 うな訳あるかと思う貴方に肉体改造をすすめさせていただこう。

 だから進矢は我慢する事を決めていた。

 本当は夫として見てほしいが愛人でも我慢。

 そもそもいつまで東亜皇国にいれるんだ?妻にした場合イビルディア帝国から使者とかくるのかな?と疑問が湧いたが……まぁ、問題にならない様に周りが動いてくれるだろうと楽観視。

 希望的観測が面倒を生むのは……いつの世も同じ。


 それでも最低限の常識をもって欲しいと思うのは罪であろうか?

 自分に合わせて欲しい。と思うのは傲慢であろうか?

「セっちゃん。東亜皇国は宗教というものに対して、トンデモナイ偏見があるんだ。だから……少しは愛人の頼みを聞いてくれない?セっちゃんも世間に変な人とは思われたくないよね?」

 もう民草の第一印象が、頭お花畑のイカレ女か、傲慢不遜で踏ん反り返っている嫌な女で固定されているであろう状態を進矢は憂いていた。

 領主として隣の女がちゃらんぽらんでは格好もつかない。

 何とか、何とか少しでいいからと歩み寄ろうとする主人公。

 世間体を愛する存在より上に置くその姿は……どこまでも醜く無様。

 だが……上が下に合わせる事はできても、その逆は存在しない!

 事実給金と言わんばかりに、一枚のカードが彼に手渡された。

 そこには龍と一角獣が刻まれ四角に血判。


女神わたしがここに滞在する限り、お金が必要という事くらいはわかります。コレに好きな額を書いてください。最初は一回、一回渡すと言いましたが……その〜、凄く面倒なので毎回請求しないでくださいね。えぇ本当に期待以上の働きでした。報酬額が決められないなら女神わたしが……いえ子供を授かった時でいいですね。ボーナスも込みで考えましょう。」

 隣に立つ妻一人、産まれてくる子供すら背負えない甲斐性無しだと思っているのか!と本気でイライラしても我慢。

 自分に心からの人間らしい笑顔を、好きな目の色を向けるだけで……現世の苦痛から、時の浪費から解放させれるのに。と思う進矢は女神を労働の苦役から、産まれながらの使命から解放してあげたい。と傲慢に独りよがりに願う。

 それをセレナが若い限りは望まない事を知らず。

 先に書いておくが現人神になった彼ですら、愛した女を死ぬまで役割から解放できなかった事を……治世の人間なら知っている。

大抵の欲しい物は……何なら世界に一つのモノを強請ってくれても頑張るのに。と思う最強の雄はセレナに男の本懐を捧げたがっていた。

 とある理由で……主人公は完全にヒロインを欲していた。

 だから我慢する!変えが効かない相手に対して人はどこまでも寛容になれるのだから。

 横暴で不遜なDQNですら意外と妻子を持つと落ち着くものだから。


 そんな心根等見えないおかげか、食後の運動と言わんばかりに、ヒロインは柔軟を始める。

 女神の肢体を眺める目は下卑じみても本当に柔けーな。と賞賛する声……も残念ながら色欲にまみれていた。

 大開脚一つとっても、身体が堅い人間とではマルで違う。

 昨夜比較対象が隣にあった事もあり、進矢は初めて見た時素直に手を叩いていた。

「シン君、そのー相手を褒めながら平然とそれ以上の事をするのは辞めた方が良いですよ。」

 似たような事を、いやそれ以上にアクロバットな体制を平然としながら口にする存在へセレナは苦情。

 いや別に俺の身体が柔らかいからって、女性にイタタ!って言われると嫌な気分になるのは変わらないし……セっちゃんはその点最高だよ。と言われたところで、いやまぁその通り何ですけど。としか彼女が言えない解答。

「あまり優秀な殿方は他者を褒めない方が良いですよ。見下されている。と下衆の勘ぐりをする人……では無く民草はたくさんいると思いますし……」

 歯切れが悪くなる理由は現人神たる自分が……人と同じ様な事をしている事に気づいたから。


 不思議と弱者が出すナニかを強者は感じ取る。

 それを五感の一つたる嗅覚が捉えた。

 怯えの匂いを感じ取った進矢は、目の前にいる女性の顔をマジマジと見つめる。

 確実に、自分が好きな目の色に近づきあるソレを完成の瞬間を楽しみに……そうだね。好きな人の頼みごとは聴かないとね。と嫌味を一言。

 女神わたしは人ではありません!と即座に叫ばなかった時点で……彼は笑った。

 弱者の心音の乱れを進矢は楽しみながら、再び女の目を……その瞬間女神わたしは人ではありません。と小さな声。

 神性を少し取り戻したヒロインに……想像より完成は早そうだ。と進矢は笑い。

 産まれて初めての柔軟運動を楽しむ。

「シン君、本当に初めてですか?身体を柔らかくするためには何年も何年も、幾度も幾度も繰り返して出来るのが普通ですよ。」

「エッ、嘘をつく必要性が分からないんだけど。そもそもたかがこの程度ができないで痛い!痛い!って喚く方がおかしいだろ?」

 天才にとっては、凡人の文句等……呼吸ができない。とほざかれるようなモノ。

 強者の傲慢にイラっとした後に……それは別腹と言わんばかりに本能を刺激されたのかセレナの目に色欲が宿る。

 まだ!強者を前にしても彼女は現人神として振る舞っていた。


「女の人生と違って、男の人生と格は己がつみ上げたモノで決まるが!どんな屁理屈を並べようと努力という一代限りの積み重ねは子に宿らん。故に才能が全て!だからこそ適正が全て!セレナちゃんが真実に気づいてくださる日を、子を残すことが許されない小生は楽しみにしているよ。天命?セレナ様。それでも授かりの儀を迫るというなら……小生は関係を持った後に自害します!」

 父の親友が口にした事は、初恋の人が行った拒絶は何よりも正しいと女神は判断していた。

 何故なら差別される側が、淘汰される側がソレを真理と!真実と声高に主張したのだから。

 そうであるなら……上が、恩恵を受ける側が、違う。と発言する事等許されないであろう。

 成長障害を患った小男と、筋骨隆々で長身の少年。

 これで前者を取る雌は、異性に一番求めるものが顔であろう。

 自国民と他所の混血児という条件もあるが……国家の象徴がソレをやるのはマズイでしょ。

 まぁ、イビルディア帝国民の現人神サタンに対する信仰心は、凄い勢いで坂を転がるかのように、右肩が外れんばかりに絶賛大暴落中。

 最後の女神がセレナになった理由は自分を心から信仰してくれない、人である聖帝の方を熱狂的に支持する民草に対して天罰を与えるために……血統を汚した事であろう。

 うん?清めた。の間違いだろ。と麒麟児は言ってない。

 何なら厄災後も言ってないため完全に後世の捏造である。

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