西

西へ連れて行っておくれよ

ここにはもう何もないから

今に終わりはあると

誰かに教えて欲しいから


赤黒く 染まる朝の車内

聞き慣れた駅名近づいて

引き寄せる 照らされた枕木

黄色い線足踏みをしてみた


テレビが 告げる夢の残穢

誰もが東へと向かった

「あの頃は」 定番の口上

線路の先から目をそらして


西に連れて行っておくれよ

ここには誰もいないから

違う世界に行けば

すべてを忘れられるから


検索窓 同じ言葉を打つ

吐き出した同じ電話番号

西の先 行き方を教えて 

墨塗りの優しさはいらない


アルファベット 数文字が並んだ

概念化されたアイデンティティ

胸の中 残された陰影

希望を枠組みに収めるな


西に連れて行っておくれよ

ここにはもう何もないから

自分では踏み越えられなくて

ここから離れられないから

今に終わりを見せて

すべてを無くして欲しくて

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