魔物と遭遇

 テクテク……。


「うぅ〜……、もりのなかにはいってからもうかなりあるいたかも……」


「そうね……。確かに結構歩いているよね……」


 森の中に入ってからしばらくして、私とミナちゃんはかなり歩いていることに気付いたの。


 ルミーナお悩み相談所を出てからずっと歩いていたというのもあって、一応休憩を挟んでいたとはいえ、足がもうパンパンかも……。うぅ〜……、私がほうきで空を飛ぶことが出来ないばかりに……。


「モモちゃん見つかるといいんだけど……。って……、あれ……?」


「ん? アリシアおねえちゃんどうしたの?」


「ねぇ、ミナちゃん。あそこにあるのって……」


「あそこ……? ん〜……、あっ!」


 それからも森の中をしばらく歩いていると、私とミナちゃんは木にもたれかかっている何かを発見したの。


「あれって、クマのぬいぐるみだよね……?」


「うんうん☆! ぜったいにクマのぬいぐるみだとおもう♪」


「だよね♪ やっぱりクマのぬいぐるみだよね♪」


 私とミナちゃんが発見したもの、それはクマのぬいぐるみだったの♪


「もしかしたらモモちゃんかもしれない☆!」


「うん、そうだね♪ きっと絶対にそうだと思う♪」


 そして私とミナちゃんは、発見したクマのぬいぐるみをモモちゃんだと思ったの♪


 ようやく遂にモモちゃんを見つけることが出来たね♪


「でもどうしてきにもたれかかっているんだろう……?」


「う~ん……、多分だけど川に流れた時にこの木にぶつかってそのままもたれかかったんだと思うの……。その証拠として、現にこの木は川の近くにあるしね」


「あっ、ほんとうだ! たしかにそれならなっとくかも!」


 モモちゃんがどうして木にもたれかかっていたのか、私はその原因を推測していたの。


 さっきも言ったように、モモちゃんは川の中に落ちてからそのまま流されて、恐らく森の中にあるこの木にぶつかってそのままもたれかかってしまったと思うんだよね……。そしてもし私の考えが本当に正しかったとしたら、モモちゃんは恐らくもう……。


「ねぇねぇ、アリシアおねえちゃん♪ はやくモモちゃんのところにいこうよ♪」


「えっ!? あっ、うん、そうだね♪ 早くモモちゃんの所に行かなくちゃね♪」


 少し嫌な予感がしながらも、私はミナちゃんと一緒にモモちゃんがもたれかかっている木の所へ向かったの。悪い予感が的中しなければいいんだけど……。


「モモちゃん、みつけるのおそくなっちゃってほんとうにごめんね♪ またあえることができてすっごくうれ――えっ……?」


「嘘……、これって……」


 悪い予感が的中してしまった……。モモちゃんがもたれかかっている木の所へ向かうと、モモちゃんの体はとても汚れていて、更に中身の綿もはみ出るぐらいボロボロになっていて、その姿を見た私たちはショックのあまり絶句していたの……。


 正直この悪い予感は当たってほしくなかった……!


「モモちゃんが……、わたしのだいすきなモモちゃんが……」


「ひどい……。こんなのいくらなんでもあんまりすぎる……」


 ボロボロになったモモちゃんを見て、ミナちゃんはとてもショックを受けてそのまま泣いていたの……。


 モモちゃんの今の状態を見てみると、恐らく原因は川に流れて汚れたじゃなく、森の中でも何らかの魔物が中身の綿をはみ出すぐらい喰い千切ったりしてボロボロになったと見て間違いなさそうだね……。


 とはいえ……、こんな結末はあまりにも辛すぎる……!


「ねぇ……、アリシアおねえちゃん……。このクマさんのぬいぐるみ……、モモちゃんじゃないよね……? モモちゃんがこんなボロボロなわけないもん……。ひょっとしたらモモちゃんはいまもかわのなかでながれているかも……。そうときまったらはやくさがさなくちゃ……」


「ううん……。ミナちゃんが描いてくれたモモちゃんの絵と何度も比べてみたんだけど、ピンク色の服や靴とかもあって、更に服の上にはローマ字で『MOMO』とちゃんと書かれているから、この木にもたれかかっているクマのぬいぐるみは正真正銘のモモちゃんと見て間違いないと思う……」


「そっ……、そんなぁ……」


 ミナちゃんが最後の希望として今ここにあるのはモモちゃんではないという願いのもと聞かれた私は、今にも泣きたい感情を押し殺して本物のモモちゃんだということを素直にミナちゃんに話したの……。


 ミナちゃん……、何も出来なくて本当にごめんね……。


「グスッ……。モモちゃんがどうしてこんなことに……?」


「ミナちゃん……」


「モモちゃん……、モモちゃん……、モモちゃん……、うっ……、うっ……、うわああぁぁ〜〜ん……!! モモちゃんが……、モモちゃんが……、うわあぁ〜ん……!」


 モモちゃんがボロボロになってしまったことに、ミナちゃんはそのショックでとても大泣きしてしまったの……。


「うわあぁ~ん……、うわあぁ〜ん……!」


「ぐっ……!」


 そして私はそんなミナちゃんを見てどう声をかければいいか分からず、何も言葉が出なかったの……。


 苦労してやっとモモちゃんを見つけたのに……、それがとても辛い結果になるなんて……、こんなの……、こんなのあんまり過ぎるよ……。


 ミナちゃんを笑顔にするって心で決めたのに……、それが結果的に悲しませてしまうことになるなんて……、私のバカ……!


 私は自分で決めた目標を達成出来ず、その不甲斐なさから心の中で悔しさを滲ませ、感情に耐え切れずそのまま涙を流していたの……。



「うわあぁ〜ん……、うわあぁ〜ん……!」


 ガサゴソ……。


「へっ……?」


「何かしら一体……?」


 それからしばらくすると、どこからか音が聞こえてきたの。


 ガサゴソ……。


「やだ……、なんかこわい……」


「ミナちゃん、私のそばにいてね。腕とか掴んでも大丈夫だから」


「うん……、わかった……。そうする……」


 音の気配に気付いた私とミナちゃんは、お互いそばから離れないように警戒心を強めていたの。


 多分だけど何かが私たちに近付こうとしているわね……。


 ガサゴソ……。


「ヒッ……!」


 ガサゴソ……、ガサ……。


「なっ……!?」


「あっ……、あっ……」


 そして現実は更に追い討ちをかけるぐらいとても残酷なものになっていたの……。音の主は私たちの所に辿り着き、私たちは音の正体を知ってそのあまりの怖さにただただ怯えていたの……。


 恐らくミナちゃんが泣き叫んだ影響により、音の正体はそれが耳に入り私たちを襲おうとしてきたわけね……。


「グオオオオォォォォ〜〜〜〜ッ!!!!」


「いっ……、いや……」


「うっ……、嘘……でしょ……?」


 私たちを襲おうとしてきた音の主の正体……、それは魔物であるシャドーウルフの大量の群れだったの……。

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