師匠との出会い

「それじゃ引き続き、お仕事を再開しましょうか♪」


「うん、そうだね♪ アリシア、一緒に掃除しよう♪」


「は~い☆!」


 話が終わると、それから私たちは再び仕事を再開したの。


 そういえば思い返してみると……、私が今こうして楽しくお仕事が出来ているのは師匠があの時私に救いの手を差し伸べてくれたからなんだよね♪


 マリア先輩と一緒に掃除を始めていると、私はふと師匠と出会ったあの時のことを思い返していたの。


 

 それは私が魔法学校を卒業してまだ間もない頃……。


「うぅ〜……、先生私どうしたらいいんだろう……?」


「そうねぇ〜……、これはかなり困ったわね……」


 卒業したばかりの私はある日、とある悩みを先生に相談するため再び魔法学校にやって来たの。


「どこも私のことを雇ってくれなくて……、これから先もうどうしたらいいか全然分からないです……」


「う~ん……、流石にどこかはアリシアちゃんのことを雇ってくれると思ったんだけど……、まさかこれほどとはね……」


「うぅ〜……、自分があまりにも情けないです……」


 そして私は悩んでいたあることを先生に涙ながらで相談して打ち明けていたの……。


 そう……。私が悩んでいたあること、それはどこの職場も私のことを雇ってくれなかったことなの……。


 でもそうなる理由は明らかだったの……。確かに卒業自体は一応無事に出来たものの、単位がギリギリというのもあって当然どこの職場も私を雇ってくれることはなく、他の同級生たちが軒並み働き場所を見つける中私だけが今も見つからない状態だったの……。


 こうなることは覚悟はしていたけど、いざ本当にそうなってしまうとやっぱりとても辛いものだね……。


「う~ん……、どこもアリシアちゃんのことを雇ってくれないとなるとそうねぇ〜……、ならここはいっそのことギルドに入って冒険者になってみるのはどうかな?」


「へっ……、冒険者ですか……?」


 すると先生はここで、冒険者になってみるのはどうかと私に提案してくれたの。


「そう♪ 冒険者になったらいろんなクエストに挑戦することも出来るし、とてもやりがいがあると思うの♪ それにアリシアちゃんは冒険がとっても好きそうだしね♪」


「はぁ……、なるほど……」


 先生が冒険者を提案してくれた理由を聞き、私はどこか少し納得していたの。


「確かに冒険者になるのもとても良いですね……。だけど本当になれるかどうか少し不安なところがあります……」


「そっか……。その可能性も充分にあるわね……」


 先生が冒険者を提案してくれたことに私は嬉しかった反面、本当になれるかどうか少し不安な気持ちもあったの……。


 確かに私は魔法だけじゃなく冒険もとっても大好きだし、ギルドに入って冒険者になるのもアリかなってちょっと思ったりはしていたの。だけど魔法を使うのがあまり得意じゃない私にとってそれはかなりハードルが高いものであり、仮に冒険者になったとしてもクエストの達成はおろか、仲間を作ることさえも出来ないのが目に見えていたの……。


 まあだからこそ、どの職場も私を雇ってくれないんだけどね……。結局のところ魔法が上手く使えないと話にならないんだよね……。ハァ〜……、いつか私も魔法を上手く使えるといいな……。


「もし冒険者になれなかったら、私これから先本当にどうしたらいいんだろう……?」


「う~ん……、こればっかりはとても難しいわね……」


「何だかとても深刻そうな話をしているわね」


「あっ……、あなたは……!」


「えっ……、うっ……、嘘でしょ……!?」


 これから先私はどうしたらいいのか先生と一緒に悩んでいると、教室の外から一人の女性の声が聞こえてきたので私と先生は声がした教室の外を振り向いてみると、そこにいたのはとんでもなく凄い人物だったの。そして声の主が誰なのか知った私と先生はまさかの人物が来てくれたことに驚きを隠せなかったの。


「二人共こんにちは♪」


「ルッ……、ルミーナさん……、どうしてここに……?」


 教室の外にいたのは凄腕の天才魔法使いと言われるルミーナさんで、後に私の師匠となる人だったの。


「ちょっと用事があってそれでね♪」


「なっ……、なるほど……」


 そしてルミーナさんは私と先生が驚いていることをあまり気にせずそのまま教室に入ったの。


「えっと〜……、あなたがアリシアね♪」


「はっ……、はい……! あれ……? でもどうして私の名前を……?」


 ルミーナさんはそのまま教室に入ると私の存在を確認し私に声をかけてくれたんだけど、ルミーナさんがどうして私の名前を知っているのか少し疑問に思ったの。


 ルミーナさんは以前、魔法学校から呼ばれて1日臨時講師として私たちを教えるため特別授業を開いたことがあったの。


 ルミーナさんの特別授業はとても分かりやすく凄く楽しいもので、私も目をキラキラと輝かせるぐらいかなり興味津々だったの♪


 そして授業が終わると、私は少しでも魔法を上手くするためルミーナさんに質問しようとしたんだけど、相手は凄腕の天才魔法使いと言われるぐらいとても有名な人ということもあり、他の生徒たちが我先にと言わんばかりにルミーナさんに対してかなり質問攻めしていたの。その影響で私は他の生徒たちの大群の波に呑み込まれてしまい、結局ルミーナさんに質問出来ずじまいだったの……。


 だから私との面識はそんなにあるわけもなかったから、ルミーナさんが私の名前を知っていることに少し疑問を感じてしまったんだよね……。


「う~ん……、それは私が凄腕の天才魔法使いだからかな♪」


「はっ……、はぁ……」


「ふふっ、冗談よ♪ 本当はアリシアのことをちゃんと覚えていたからだよ♪」


「えっ……、覚えてた……?」


 ルミーナさん曰く、どうやら私のことをちゃんと覚えてくれているみたいで、それを聞いた私はますます疑問に感じてしまったの……。


 つまりあの日にルミーナさんは既に私のことを知っていたってことなんだよね……。う~ん……、一体何でなんだろう……? あと意外と茶目っ気があったのもちょっとびっくりかな♪ でも少しだけ親近感を感じて何だか安心しちゃった♪


 そして師匠とこの日出会えたおかげで、私の運命は大きく変わったんだよね♪


 

「ちなみに……、ルミーナさんの用事って一体何ですか……?」


「う~ん……、それはまだ秘密かな♪ それより何だかとても深刻そうな話をしているみたいだからもし良かったらその話私にも詳しく聞かせて♪」


「はっ、はい、分かりました! ルミーナさんがそう仰るのであれば!」


「わっ、私も賛成です!」


 そして私と先生は、私がまだ働き場所を見つけておらずこれからどうすればいいか悩んでいることをルミーナさんに話したの。


「そっか……。アリシアだけまだ職場を……」


「はい……。情けないことに私だけまだどこも……」


「そうなんです……。私たち学校も出来る限り力になりたいんだけど……、中々上手く行かなくて……」


「なるほどね……。う~ん……、それならその話、私が引き受けてもいいかしら♪」


「「えっ……、えぇ〜っ!?」」


 そして話を聞いたルミーナさんは自らその話を引き受けることを宣言し、それを聞いた私と先生はルミーナさんの突然の宣言にとても驚いていたの。


「いっ、いいんですか本当に!? ルミーナさんがこの話を引き受けても」


「うんうん!」


「えぇ、もちろん♪ それにそもそもここに用事として来たのはアリシアが理由だしね♪」


「えっ……、私ですか……?」


 ルミーナさんが魔法学校に用事として来たのはどうやら私に理由があるみたいなの。私が理由って一体……?


「そう♪ もしアリシアがまだ職場決まってなかったら、実は私がアリシアを雇おうと思ってたの♪」


「えっ、そうだったんですか!?」


「嘘……、ルミーナさんがここに用事として来たのはまさか私を雇うためだったなんて……」


 ルミーナさんが魔法学校に用事としてやって来た理由、それは私を雇うことだったみたいで、先生はその話を聞いて物凄く驚き、私も嬉しさ半分驚き半分の気持ちだったの。


 ルミーナさんがまさかこんな私を雇おうとしてくれるなんて……、私自身ちょっとびっくりかも……。

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