第34話 鏡餅の婚活
「僕ブロッコリー、お見合いにきた」
「豆苗です。よろしくお願いします」
我はカップルクラッシャー。眼前でブロッコリーと豆苗がお見合いをしているのを眺めている女の子だ。
「鈴木様は未来のダーリンだわ!」
現在、鏡餅の猛アタックをくらっている。
「どうしてこうなったのでござるか……?」
◇
先日、我と田中殿に婚活パーティーの案内を送られてきたのでござる。
「田中殿……同人誌のネタが」
「NTRが、僕たちに降ってきたっすぅぅぅ!」
「そうと決まれば!」
「NTR本のためにたくさん寝取ってやるっす!」
我と田中殿は一蓮托生。殴り込みに行くことにしたのでござる。
◇
乗り込んだまではよかったでござる。
でもまさか食材達の婚活パーティーだったなんて思わなんだ。そもそも食材の婚活ってなんでござる? 交配?
そしてさっきから我に対する鏡餅のアピールがすごいでござるし。我は食材じゃなくてれっきとした人間でござる。
ていうか周りの観客がそうそうたる顔ぶれでちびりそうでござるよ。
国内外の芸能人、政治家、音楽家、資産家、Vtuber、インフルエンサー、スポーツ選手が出席。さらに海外の王族も出席しているこの婚活パーティー。
我の存在は場違い極まりないでござる。
「みなさーん! 今日は食材達の婚活パーティーですよ~!」
「意味がわからないでござる!? 食材の婚活パーティーってなに!?」
「みなさーん。ドラマ水戸黄門の従者を答えよ」
◇Aすけさん Bにんじん Cかくさん Dみのさん
不意に変な四択クイズ?
どこの層に需要があるでござるか!
しかしこの問題に手を挙げたのは意外にも田中殿だった。
「そりゃ、みのさ~ん!」
違うでござる。AとCでござるよ。あと誰でござるかみのさ~んって。
答えが間違ってるなどと微塵も思ってない田中殿は、鏡餅に因縁をつけていた。
「おいそこの鏡餅! せっかく僕が答えてるのに、なに鈴木にうつつを抜かしているっすか!」
「鈴木様に夢中で見てなかったわ」
「見逃すなっす!」
すると司会者が唐突に実況を始めたでござる。
「内角低めに全く手が出ず! せーの!」
「みのさ~ん(見逃し三振)」
正直なこと言っていいでござろうか。
まったくノリについていけない。帰りたいでござる。
◇
時はあっという間に過ぎ、我はとうとう鏡餅に告白されてしまったでござる。
カップルクラッシャーの教示。カップルは滅し。しかしカップル寸前はその限りではない。
この場合、何が正解なのでござろうか。カップルになった瞬間、破談に持ち込めばいいのでござろうか?
しかし前、それやって刺されたしなぁ。いいや、カップルクラッシャーはそれくらいで挫けない。やるしかないでござる!
「ちょっと待ったぁぁぁ!」
「そ、その声は田中殿!」
しめたでござる。田中殿の乱入はこの場合だと吉になる。この感じだとほぼほぼNTRしにきた感じでござるし。
田中殿にNTRしてもらえば、我は鏡餅なんかと拗れず穏便に関係を終わらせることができるでござる。
田中殿は我の横を通り過ぎ、ブロッコリーと豆苗に向かっていく……
「ブロッコリーと結婚するのは僕っす! 豆苗風情がしゃしゃるんじゃないっす!」
「僕ブロッコリー。しゃしゃんなや」
そっちぃぃぃ!?
我じゃなくて野菜を寝取りにきたのでござるか!? ていうか我野菜に負けたのでござるか?
とんだ屈辱でござる……
◇
このあと鏡餅にはちゃんとごめんなさいしたでござる。
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