第6話 パーマと五月と 雪まつりパート2
戻ってみると五月は、野生のスットコが池でマグロをドッコイショしている姿を静かに眺めていた。
ここ、札幌だぞ? あとスットコさんは名札見せびらかすな。スットコドッコイにするぞ?
そもそも池でマグロは釣れねえはずだろ。そう思ったが、この世界は常識がまるで通用しないので口には出さなかった。
俺がいる事に気がついたのか、スットコは池にダイブしていった。
◇
五月と再会を果たした後、彼女は突拍子もなく喋り始めた。
「大学生になったら、髪型の制限が取っ払われるんですよね? 現役大学生さん」
「ああ、そうだな。みんな金髪や茶髪、なんなら男で長髪なやつもいる」
「私も大学生になったら髪を染めるかパーマかけてみるのも一興かもしれません」
「え?」
「よくよく考えたら、そういうことできるの大学生のうちですし」
五月は手を髪に当てながらそう呟いている。慈愛に満ちた表情でサイドテールに括られている髪を見ながら。
「そ、そうだねぇ……」
違うんだよぉぉぉ!? 五月はそのままでかわいいんだよぉぉぉ!
ていうか、サイドテールも大概校則違反じゃあないのか!?
言えよ俺。ほら言えって! 可愛いって言えってぇぇぇ!?
なんでひよってんだ俺は。たったの4文字だろ!?
おかしいなぁ。いつものテンションだったら言えてるんだけどなぁ……
あと俺、パーマはおばさんみたいで嫌いなんだよ!
ドラマで見た頑固なおばさんで認識が固定化されてんの!
タバコ吸っておじさん座りしながら怒ってる、あの人を連想させるんだ。
ひよってる場合じゃあねぇ!
なんとしてでも止めなければ!
「ああ、なんだ。俺的にはパーマはちょっと……」
「いいじゃないですか。パーマ。チックロックで出てくる人たちみんな可愛いですし」
「俺がよくない!」
「ええ」
「失礼、本音が漏れ出た」
まてよ、考えてみろ俺。五月がパーマをかけた姿を思い浮かべてみるんだ。
……ギリっいけるな! よし、覚悟完了!
「フフッ、分かりました。仕方ないですね! パーマはしません!」
「えっ?」
「パーマの話題をしてからずっと苦悶の表情でしたよ。服装にもちゃんと気を遣ってるお方がその反応なら、きっとパーマはダサいのでしょう?」
「ああ、その。そうじゃあなくて、別に君がパーマしてもいいんだけど。俺の好みからは外れるかなってだけで」
「そうですか。それなら尚更ですね」
五月はフフッっと笑った後、雪まつりの会場へ入っていった。このあと、パーマ関連の話は一切しなくなった。
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