第4話 アルフェルト=ロイ暗殺事件3
帝都郊外、少し寂れてしまっているその場所に短髪の黒髪の青年に見えるメイと右眼を隠して弱弱しい少女に見えるロイがノビをしていた。
「意外と簡単に屋敷が買えましたね。ロイ様。」
「ええ、想定外です。身分を確かめたりしないのですね。」
ボロ屋敷を眺めながらメイはため息をついた。
元々はそれなりに立派な屋敷であったのだろうが、主がいなくなってしばらく経過したのか、庭は雑草が生えて小さな森のようになっており、屋敷は汚れが目立っていた。二人は気が付いていなかったが、少しぼったくられていた。
「それにしても、ボロ屋敷ですね。まあ、仕方ないですけど、どうしますか?私多少なら修理とか出来ると思いますよ。資材があれば。庭はもう、伐ってどうこうなるか分かりませんが。」
「いや、良い、少なくとも外観や多くの中は、ボロボロで良いと思います。」
「何でですか?」
「お金がかかるのと、なんかボロ屋敷のほうが怪しまれないかなと思って、それに今はそこまで滞在するわけじゃないし。」
「まあ、確かに。それなら過ごす部屋だけなるべく掃除しますか?掃除をしましょう。ロイ様」
「じゃあそれで、指示をくださいお手伝いします。」
ロイとメイはそんな風にしゃべりながら、庭をかき分けながら屋敷に入った。
屋敷の中は埃が被っていたが外装よりは綺麗であった。前の住民が置いていったのか、いくつかのものが残っていた。
「意外とキレイだ。」
「そうですね、では、掃除をしましょう。ロイ様。掃除をしながらで良いので教えていただきませんか?ロイ様の事。」
「……興味ありますか?」
どこからか箒を見つけてきたメイに箒を渡されながら言われたロイは首を傾げた。
「ありますよ。流石に、6歳にしては賢すぎます。」
「……良いですけど、これは二人だけの秘密でお願いしたいです。」
(まあ、僕はこの人に決めたし、選択肢なかったけど。良い選択だった気がする。)
「それは、契約魔法の約束って認識ですね分かりました、ロイ様。」
「そうですね。前世の記憶が蘇って、いえ正確に言えば、本来の アルフェルト=ロイは既に亡くなっていて、僕の魂が…」
「難しい話は分からないのですけど、つまり前世の記憶があると」
魔法が一切使えないメイは、魔法の話が分からないのでサッと話を切り、簡潔に尋ね返した。
「そういうことです。」
「じゃあ、何歳ぐらいですか?」
メイは前世の記憶がある事実を直ぐに受け止めていた。
「前世が、40ぐらいで亡くなったので」
「年上じゃないですか。クソガキではないんですね。」
「いや、今は6歳なので。それに……いや、大丈夫です。」
「……何ですか、その間。複雑なんですけど。では、後は、そうですね。ロイ様は前世は凄腕魔法使いか何かですか?」
「凄腕……まあいろいろあって契約魔法以外の魔法を使えないので、凄腕かどうかは分からないですけどね。魔法使いではありました。」
前世で契約した、契約魔法の効力を底上げする代わりに契約魔法以外使えなくなるという契約は、ロイの魂にされていたものであり、生まれ変わっても効果は継続されていた。
「なるほど、魔法使いですか。」
「……では、僕も聞いて良いですか?メイはこの国の人に恨みを持っていますか?」
ロイは真剣な表情で、掃除をする手を止めて、訪ねた。
そのロイの表情を見て、メイは手を止めた。
奴隷の母を持っていたが、奴隷身分から逃げ出したことで回避出来たメイであったが、それでも異民族でこの国で過ごすのは難しく、暗殺者として生計を立てていた。彼女がそれをしていたのは、彼女が強く、それ以外の仕事が無かったこともあったが、この国に対する恨みもあった。だから皇族であるロイの暗殺も受けたのだ。
しかし、ロイというバグに出会った。
自分を引き入れようとする異常な存在に出会った。
だから、彼女はそこに賭けることにした。
「……持っていないと言えば嘘になりますけど。まあ、未来の皇帝が作る新しい国には民族平等の国を作ることを求めますよ。」
「……それは、まあ僕の夢なので」
「やっぱり、あなたに賭けて良かったです。」
男装していたメイであったがその笑う姿は,ひたすらに美しかった.
「それは、まあ僕もですけど。」
「ロイ様の夢は、それは?前世からの夢ですか?」
「まあ、ある意味で……」
今までハキハキと答えていたロイだったが言葉を詰まらせた。それから下を向いた。
「なるほど、まあ私が皇后になるまでには、そこら辺の過去を教えてくださいね。ロイ様」
メイは、そう言って笑いながらもテキパキと掃除を再開した。
「……まあ、そうですね。分かりました。」
「では,そっちは今は、良いので、この後どうするかとか。教えてください。ロイ様。」
「…別に呼び捨てで大丈夫ですよ、普段は。多分、この後僕を殺した犯人探しが始まります。」
「私じゃないですか?どうするんですか?ロイ君。」
「……もう一回聞きますけど、前の拠点はバレるんですよね。」
「まあ、私の顔はバレてなくても。あの姿はバレてますから。」
「何で?」
「ずっとあの姿で過ごしていたので。」
「何で?」
「まあ、危ないんですよ。異国の血筋の女性っていうのは」
ロイは、小さく唇を噛みしめて下を向いた。自身の想像力の不足を恥じていた。
「……すいません。ふう、まあ、拠点がバレるなら好都合です。そこで、犯人の性別を女性と強く認識させます。」
「そこは男性で良かったと思いますけど、ロイ君。私が男装して変装するの二度手間では?」
「……それは、まあ諸説ありますね。」
実際、メイの拠点で性別を男性と思わせるだけで良かった。
わざわざ女性と認識させて、メイが男装する必要など無かった。
ロイの小さな失策だった。
それでも、何もしないよりはマシであり、一時的に滞在していた彼女の拠点でロイはしっかりと偽装工作したことは良い策略だった。
「……もう今更ですし、もう、偽造工作終わりましたもんね。私がロイ君を殺した報酬を騙し取ってる間に、私の拠点でなんかしてましたもんね。」
「まあ、そうですね。そこは、もうどうしようもないので、話を進めますけど、国は、犯人をしばらく探しても犯人が見つからないので、多分適当な人を見つけて、まあ公開処刑にでもすると思います。」
「……終わってる」
「……まあ、はい。そこに僕と二人で登場しましょう。」
「偽物って言われませんか?」
「血とかの身体の一部があれば、魔法で皇族の血を継いでるか分かるので。それで確認してもらえば良いです。」
「なるほど、じゃあ、それまでは、何をするんですか?」
「バレないように、待つぐらいですかね。」
「……暇ですね。ロイ君。何も出来ないんですか?」
「じゃあ、買い物でも行きますか?本とか地図があれば、次の手を考えられます。」
「……バレないですか?ロイ君」
バレる可能性はあったが、メリットもあった。現状の情報収集である。
「……まあ、食料はどうせ買いに行かないと行けないので。それに相手の動きも見たいので、バレないように静かに買い物に行きましょう」
「分かりました、ロイ君。掃除を終わらせてから行きましょう。」
「そう言えば何で最初に殺しに来た時と口調が違うんですか?」
「あっちはキャラです。それにずっとあの感じ嫌じゃないですか?私は、ロイ君の皇后になるのでね。こっちのほうが良いでしょ。」
「確かに、まあどっちでも良いですけど。」
「何ですか?それ。まあ、では、さっさと掃除をしましょ。」
ロイとメイは少し能天気に笑いながら掃除を続けていた。
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