第3話 アルフェルト=ロイ暗殺事件2

「騒ぎになってますね。」

裏路地で、フードを深く被って変装しているロイは、そう小さな声で自分で流した「アルフェルト=ロイが暗殺された」という話の拡散具合と混乱を具合を確認してから、少し歩き帝都の郊外誰も来ないような静かな場所まで歩いた。帝都は混乱しており、国民の多くは事情を聴くために王宮の方に進んだので郊外にはほとんど人が残っていなかった。


ロイが立ち止まると隣で、フードを深く被り服装を変えたメイが小さく首を傾げた。

「……ここまでする必要がありましたか?事件にしたせいで、私はもう自分の拠点に戻れませんよ。多分、そのうち捜査の手が回るので」

左手には金貨が入った袋を持ち、右手には、いくつかの荷物を持っていた。手の甲には、謎の紋章が浮かんでいた。


「必要です。というか、あの拠点は、捨てましょう。良い罠になるので」

彼女は、ロイの指示で自身が拠点としていた場所を放棄することにした。正確に言えば、ロイは操作によって拠点が見つかると考えて、時間稼ぎの為の罠を用意した。


「はぁ、では、もっと良い場所に住ませてくださいね。ロイ様」


「まあ、死ぬまでには。」


「……私のほうが9歳年上なので、なるべく早くお願いしたいです。なんでこんな回りくどい方法を普通に暗殺されかけたって告発すれば良いのでは?皇族ですよね。」


「無理でしょ。もし、仮に正直に言ったとして、暗殺は100歩譲って認めてもらっても、暗殺しに来た人を引き込みましたは通用しないですし、メイも僕のとこから逃げた使用人はたぶん死刑になりますよ。それは、嫌ですし。」


「……まあ、確かに、そうですね。でも、そこ不思議なんですよ。多分、私が暗殺しに行くことが屋敷のロイ様以外には伝わっていましたからね。だから全員逃げていましたし、人望ないですね。」


「そこは、問題ですよね。それに、なんで屋敷の人を逃したのかが分からないです。そのせいで考えること増えたし。いや、まあ結果的に悪だくみ出来る時間が増えたんですけどね。」

ロイは、使用人が全て逃げたおかげで、メイを引き込み、こうやって時間を作ることが出来た。それから、から国を作るための計画を考え始めた。彼は現実主義者であった。だから、今のままでは何も出来ないことを理解していた。


「それでも、しばらく死んだフリをする意味がありますか?犯人は分かっていますよね。告発は出来なくても方法はありそうじゃないですか?方法は知らないですけど。」


「そもそも、犯人は分かってないですからね。」


「第3皇子では無いのですか?」

メイは、血筋的に異国の人間であり、政治には疎い人間だったが、生き残っているロイより上の兄弟が誰かぐらいは知っていた。


「多分、違う。あの人にそんな知能がない。神輿は軽いほうが良いってことだろうな。まあ、今の皇帝よりはマシだと思うけど。」


ロイは記憶の中を思い出してそう言って下を向いた。彼の記憶の中で皇帝は暗君であった。今は色に狂い、人としての理性があるか怪しく、皇帝としての使命や義務などを感じている様子はないように見えた。第三皇子は、世間知らずであった。彼は何も知らなかった、世間の常識を恐らく認識していないのだろう。だから、操縦しやすく、次の皇帝位を第三皇子に継がせようとする官僚や諸侯の動きがあったのだろうとロイは考察していた。


「……なるほど、では第3皇子のその周りの誰かがってことですか?ロイ様?」


「多分、まあ全く想定外の可能性がありますけどね。まあ、そのうち分かりますよ。」


「どうやってですか?お金を使って調べるとかですか?今あるのは、ロイ様が暗殺出来たって事で受け取ったお金とプラスアルファだけですけど、足りますか?」

メイはそう言って、持っているお金を眺めた。


「それは、別に使うので、僕の右眼を使います。」


「……魔法ですか?私、魔法は良く分からないんですけど、凄いですね、ロイ様。それに、何というか、全部有効活用しますね。」


「まあ、リソース足りてないから。そう言えば、依頼人って一人何ですか?いや、少し気になって」


「最初は違ったんですけど、紆余曲折いろいろあって一人になりました。ああ、昨日も確認されましたけど。顔はバレてませんし、性別もバレてませんよ。拠点はバレては居ませんけど、本気で探されたらバレるって感じです。これ重要ですか?」


「逆に何で重要じゃないと思うの?後半の情報……まあ、足りない部分を補うのが,人が集まる理由ですね。」

(メイ、武力はあり、頭もそれほど悪くない、読み書きも出来るけど、でも、なんか戦略性があまりない。こんな感じか。いや、僕にない腕っぷしがあるだけで十分だ。それに、もう僕の右眼に選んだしな。どうせやるなら徹底的に、出来なかった理想を今回の人生自分の手で叶える。よし、)

ロイは、ため息を少しついてから


「バカにしてませんか?ロイ様」


「それは、お互い様でしょ。ひとまず、変装をしましょう。」


「これ以上ですか?私は、血まみれメイドで十分仮装したのですが。かなり嫌だったんですよ。」


「しょうがないじゃん、二人しかいないんだから。僕は血液の提供したじゃん。」


「私引いてますからね、現場を凄惨にするために、自分で手を切ったりして、魔法か何かで大量の血を用意して、少し引いてますから」

ロイの寝室は、まるでロイがズタズタに斬られたかのように、血が飛び散っていた。凄惨な現場を作成していた。


「しょうがないじゃん。リアリティの為に、それに、契約魔法の中でまだ対価に対して余裕があるから。」


「……よく分からないので、この話はやめましょう。それで、私はどんな変装をすれば?」


「とりあえず、帝都の中に拠点を用意したいので。髪切りましょ。」


「……女の子にデリカシーがゼロでは?それは、仕方ないですけど。ロイ様、どの程度、時間をかけて国を作るつもりか聞いてもよいですか?」


「えっ、今ですか?詳しくは後で話しますけど。今すぐ、皇帝陛下を廃位させたい気持ちはありますけど、無理なんですよ。失敗するので、僕が死んだから終わりなので、とりあえず今回は地盤となる土地の確保と発言権の確保と安全の確保が目標ですかね。なので、すぐには無理ですよ。本当に出世払いでいろいろ頼みたいです。」


「……まあ、分かりました。まずは、どうしますか?拠点ですよね、宿ですか?」


「屋敷を買おう。というわけで、お金を貸してください」

ロイは、そう言ってメイを見た。ロイは一銭も今持っていなかった。


「……出世払いを楽しみにしていますよ。ロイ様」


「その前に変装でしたよね。メイは、男装してください。まあ、これでさらにばれる確率減りますしね。服は、いくつかそれっぽいのパクってきたので。」

ロイは、無意識にメイの胸部を見て、それから真っ直ぐ目を見た。


「……クソガキ。はぁあ、分かりましたロイ様。では、私のお願いも聞いて貰っていいですか?」


「まあ、そういう契約で魔法を結びましたから、何ですか?メイ」


二人は契約魔法を結んでいだ。

メイは、ロイの眼となり、ロイを裏切らずに忠誠を誓うこと。

ロイは、メイの頼みをなるべく聞き、メイを何があっても見捨てないこと。

そんなあやふやな内容の契約魔法をロイは、代償を払って無理やり結んでいた。


そんなこと,メイの頼みはあまり断れなかった.

「ロイ様、女装しましょう。」

メイは、渾身の笑顔であった。


「何で?」


「身バレ防止のためです。私はロイ様に使える臣下の身ですよ。主の安全のためです。」


「……本音は?」


「私だけ、男装は不公平です。それに、言ってきますけど、私はまだ成長期なんですよ。」


「……分かりました、変装しますよ。それで、屋敷を買いましょう。」

ロイとメイは、帝都の街で反撃の動き始めた。

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