予言されていた終焉の魔女に転生。人類の敵みたいだけど誰かを恨む気持ちなんてない……はずだから平和に暮らそうと思ってたのにそっちが攻めてくるなら戦うしかないよね

第9話

「取り敢えず、名前、聞いていい？」

　私はさっき助けた？　女の子にそう聞いた。

　事情はよく分からないけど、帰る場所が無いみたいで私に着いてくることになったから、名前くらいは知っておかないと、と思って。

「……シエ。あなたは？」

「私は真だよ。よろしくね、シエ」

「マコト？　なんか、男の子みたい。マコでいい？」

　まぁ、元男だし、男みたいなのは当然っちゃ当然だと思う。

「シエがそれで呼びやすいのなら、なんでもいいよ」

「うん。なら、これからよろしく、マコ」

　お互い自己紹介が終わった。

　それはいいんだけど、これから、どうしよう。

　シエはなんでか受け入れてくれてるけど、普通は人間じゃない私を受け入れてなんてくれないだろうし、やっぱり、行くなら人が居なくて安全に暮らせるところ、だよね。

「人が居なくて、平和に暮らせるような場所がどこにあるかとかって知ってたりしない？」

「……そんなところ、無いよ」

　まぁ、そうだよね。

　シエに聞いたのはダメで元々って感じだったし、特に私は何かマイナスな感情を抱えることは無かった。

「……役に立てなくて、ごめん」

　それなのに、シエは気にしてしまったのか、暗い表情をして、そう言ってきた。

　……あんまり認めたくないけど、私の方が背が低いからこそ、その暗い顔がよく見えた。

「い、いや、私だって知らないし、別に何とも思ってないから！」

「……ほんと？」

「う、うん！　当たり前でしょ」

　良かった。

　ほぼ無表情ではあるけど、さっきみたいに暗い顔ではなくなったし、大丈夫なはず。

　そう思って、私はシエとあの男が来た方向とあの街が無い方向に向かってシエと一緒に歩き出した。

　ずっとここにいる訳にはいかないからね。

　……私はともかくとして、シエは食事が必要だろうし、食べられる物も探さないとだし。

「ねぇ、マコ」

「ん？　なに？」

「なんで、そんな何かを避けるような歩き方をしてるの？」

　そうして歩いていると、私の歩幅に合わせて隣を歩いてくれていたシエがそう聞いてきた。

「……あ、えっと、これは……」

　正直、あの時の感情なんてもう思い出したくもないから、話したくなんてないんだけど、シエとはこれから一緒にいる以上、話しておいた方がいい、よね。

「その、私、魂が見えるんだよ」

「魂？」

「うん。……それで、その魂に私が触れると、私は強くなるの。ただ、その代わりにその魂の死んだ時の恨み？　みたいなあんまり良くない黒い感情？　が私の中に入ってきて、おかしくなっちゃうんだよ。だから、あんまり触れたくないんだよ」

　なるべくなんとも思っていない風を装って、私はシエに向かって話した。

「おかしくなるって……なんでもない。分かった。わざわざ、話してくれてありがとう」

「ううん。気にしないで」

　さっきも思った通り、これからは少なくともシエが私から離れていかない以上は一緒にいるんだし、話しておいた方がいいと思ったから、話しただけなんだから、シエが気にするようなことでもないと思って、私はそう言った。

　シエは魂を避けている私にそれ以上何かを言ってくることなく、相変わらず歩幅を私に合わせながら、隣を歩いてくれている。

　……この世界に来てまだ全然時間なんて経ってないけど、いきなり人に攻撃されて、わざとでは無いとはいえ、人を殺してしまったりもして、私も色々と精神的に追い込まれていたのか、私を怯えたり攻撃してきたりせずに隣を歩いてくれているという事実がどうしようもなく嬉しかった。

　私って単純なのかな。