第10話
そうして、シエと隣同士で歩いていると、辺りが暗くなってきてしまった。
……暗くなるまで歩いたとはいえ、私は背の高さ的に歩幅が小さいし、シエもそれに合わせてくれている。
つまり、そこまでの距離は進めていなかった。
……とはいえ、私はもう人間じゃなくなってしまったからともかくとして、シエは明らかに疲れているようだった。
「そろそろ、休もっか」
「……私はまだ、歩ける」
「私が疲れちゃったから」
「……ありがとう」
シエは私の言葉にそう言ってお礼を言ってきた。
私が疲れたって言ってるのに……私が人間じゃないから、別にまだ疲れてないってバレてるのかな。
まぁいいや。今はそんなことより、重要なことがある。
「シエ、お腹空いた、よね?」
そう、食事だ。
私は人間じゃなくなってしまった影響でお腹なんて空かないけど、シエは違う。
シエは人間だから、当然お腹が空く。
「……別に、一日くらい平気」
朝食べてたんだとしても、お昼くらいからずっと歩いてるんだから、お腹が空いてない訳が無い。
「……これ、食べる?」
一応、ここに来るまでに何も無かった訳では無い。
そう。シエと相談して、万が一のことを考えて人間じゃない私が持つってことでその辺に生えていたキノコは回収してあったんだよ。……私の手の大きさとか的にそんなに沢山持っている訳では無いけど、何も食べないよりはマシだと思うから、私はそう聞いた。
「……流石に怖いよ。私も、マコもキノコについての知識なんて持ってないんだから」
……まぁ、そうだよね。毒キノコの可能性がある以上、やっぱり食べない方がマシなのかな。
「……私が毒味してからシエが食べるのじゃダメ?」
「ダメ。絶対」
まぁ、そっか。
仮に私が無事に食べられたとしても、それは人間じゃないからであって、人間のシエが食べたらどうなるかなんて分からないもんね。
……そもそもの話、死なないと分かってるとはいえ、私も毒かもしれないものを食べるのは怖かったし。
「なら、どうしたらいいのかな……」
「さっきも言った通り、一日くらい平気だよ」
「……でも、水分だって何も口にしてないんだよ? せめて水だけでも探さないとじゃない?」
「……一日くらい、平気だよ」
シエは私から目を逸らしながら、そう言ってきた。
最初に言ってきてた時から全然大丈夫って感じじゃなかったけど、今のは本当に大丈夫じゃなさそうだった。
とはいえ、私に出来ることは何も無い。
私は無力だった。
「……ごめんね」
「何が?」
「……なんでもない。ありがとう」
さっきもうそろそろ休もうと言ったばかりではあったけど、お互い話をしている途中だったからか、何故か、なんとなく、私もシエもまだ足を止めていなかった。
だからこそ、本当にもう、シエの為に休もう。
そう思ったところで、赤い木の実が私の視界に見えてきた。
「シエ、あれは食べれる?」
「……分かんない」
「なら、今度こそ私が毒味をしてみるよ。キノコよりはまだ安全だと思うから」
「あっ、待って──」
自分で言ってて何が安全なのかなんて全く分からないけど、私は小走りでシエから離れて、木の実を手に取った。
そして、何か余計なことを考えて怖くなってしまう前に直ぐに口の中に入れた。
さっき思った通り、私が口に入れて何ともなかったとしても、人間のシエにとっても大丈夫かなんて分からないけど、毒味をしないよりはマシだと思ったから。
「シエ、今のところは大丈夫だし、これならシエが食べても大丈──」
「……私、待ってって言った」
これなら大丈夫かも。そう言おうとした私の言葉に重ねるようにして、私に追いついてきたシエの不満そうな声が聞こえてきた。
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