第4話
「……ごめん、なさい……ごめん、なさい……ごめんなさ──はっ、夢……」
わざとでは無いとはいえ、私が人を殺してしまった日から三日が経っていた。
あれから私はあの街から逃げるようにして、今いる洞窟に辿り着き、時間を過ごしていた。
この体はやっぱり人間じゃないからか、食事の必要は無かった。
ただ、睡眠は必要なみたいで、今みたいに眠る度に私はあの日のことの夢を見ていた。
あの人を殺してしまった罪悪感以外にも、あの人はちゃんと街に運んでもらえたのかという不安、そして、人を殺してしまった私を討伐するために誰かが私を追いかけて来ないかという不安、そんな色々な気持ちがあの日からずっと私の頭の中をぐるぐると回っている。
あんな悪夢を見るのは、その不安のせいでもあると思う。
「……そろそろ、動かないと」
罪悪感や恐怖心からずっとこの洞窟から動けないでいたけど、本当にずっとこうしている訳にもいかないし、私は呟くようにそう言った。
……当然だけど、ここは安全って訳じゃない。……街から私を討伐するためにいずれはここにも人がやってくるかもしれないし。
「……えっ」
ゆっくりではあるけど、ここから動き出そうと私が体を動かすと、割と近めのところで何かが倒れるような大きな音? が聞こえてきた。
……何があったのか気にならないと言えば嘘になるし、もしも誰か人が何かに襲われているのなら助けてあげたいとも思うけど、また私が攻撃されるかもしれないし、行かない方がいい、よね。
私からしたら助けに行っただけでも、その人たちからしたら三つ巴になったと思ってしまう可能性だってあるし。
「……早く、離れよ」
それ以外にも、そこにいる人が私のことを討伐しに来た人だって可能性もあるしね。
そして、洞窟を出て、音がした方と街がある方向から離れるように歩き出した。
……どうせ目的地なんて無い……ことも無いか。一応、平和で静かに暮らしていける場所に行きたいから、そこが目的地だと思う。……まぁ、それでも、無理して危険かもしれない方に行く必要なんてないからね。
所々散らばっている魂に触らないようにしながら、歩いていると、後ろからドタバタと足音が聞こえてきた。
一瞬、誰かが私を追ってきたのかとも思ったけど、それだったらこんなに足音を立てるのはおかしいと思って、直ぐに違うと思い直すことが出来た。
それ以外にも、足音が聞こえてきた方向が街の方じゃなくて、さっき大きな音が聞こえた方だったからって理由もある。
まだ多分だけど、私を追ってきた人じゃないっていうのは良かったと思う。
でも、だったら、何が走ってきたの?
「はぁ、はぁ……く、クソっ! なんで、せっかくアイツらを囮にして逃げ切れたと思ったのに、その先にこんな化け物がっ!」
隠れた方がいいかな? と私がちょうど考え始めた辺りで、息を切らした太った男が黒髪の女の子? の手を引きながら草むらの中から出てきたかと思うと、私の姿を見るなり顔を青くして、吐き捨てるように太った男がそう言ったかと思うと、手を引いていた女の子を放り捨てるように私の方向に突き出してきた。
「儂の逃げる時間を稼げ!」
かと思うと、そんな言葉を吐き捨てて、そのまま音がした方向と私のいる方向とは違う方向に走り去っていった。
……太っているからか、全然早くない。
……それより、この女の子をどうしよう。
別に私は元々襲うつもりなんて無かったし、囮に使われても困るんだけど。
……取り敢えず、声をかけてみようかな。
そう思って、声をかけようとしたところで、私は気がついた。
その女の子の目に光が宿っていなくて、生きる希望を持っていないということを。
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