第2話

「……はぁ、はぁ、はぁ」


 足と焼かれた体が痛い。

 ……でも、そのおかげ……では無いけど、あの人たちが攻撃を仕掛けてきた理由は何となくわかったかもしれない。

 ……だって、今も焼かれた体と足元を気にせずに走って逃げてきたせいで石を踏んだりして怪我をした足から、じゅうう、と音を立てて煙のようなものを出しながら、回復……再生していってるんだから。

 こんなの、明らかに人間ができるようなものじゃないと思う。

 ……もしかしたら、私が気がついていないだけで外見にも人間だったらありえないような何かがあるのかもしれない。


「あっ」


 自分が人間じゃなくなったことや話し合いも無しにいきなり攻撃をされたことだったりを色々と考えていたせいか、私はなんとなく今まで避けてきていたふよふよと浮いていた魂? みたいな感じのものにぶつかってしまった。

 実体は無いみたいだったから、ぶつかったって言うのはおかしいかもだけど、とにかく、その瞬間、周りにあった空気? みたいなのが可視化されて、ふよふよと浮いていた魂みたいなものに収束していっていた。


「……何これ」


 普通に考えたら、怖い光景ではあると思う。

 でも、不思議と私に逃げる気は起きなかった。

 再生していってるとはいえ、火傷や足の怪我が痛いからかもしれない。

 今のところ追っ手はきてないとはいえ、精神的にも、体力的にも限界だから、どこかで休みたかったからかもしれない。

 ……分からない。分からない、けど、私は目の前で行われている何かが終わるまでここを動く気にはなれなかった。


「う、うわっ……」


 そうして眺めていると、突然魂みたいなものに可視化された空気? みたいなものが収束されるのが終わって、急に私の方に向かってきたかと思うと、私の体の中に入っていった。


【怖い、助けて、嫌だ、死にたくない、なんで私がこんな目に……】


 名前:無し(名立真なだちまこと

 種族:アンデッド(?)

 年齢:0ヶ月

 レベル:5

 戦闘力:2050

 魔力量:10500

 スキル:魂の可視化、魂の吸収、暗黒魔法適正、暗黒魔法耐性、不死

 称号:終焉の魔女


 その瞬間、頭の中に負の感情と共にそんな声が聞こえてきたかと思うと、目の前にはゲームとかでよくあるステータスってやつが現れた。


 ……色々と情報量が凄いけど、取り敢えず、予想通り私は人間では無いっぽいね。

 そして、今のは多分だけど魂の吸収ってやつ、だよね。

 レベルが上がってるのは魂を吸収したからかな。

 前世はもちろん、今世でも何かを倒したりなんかした覚えなんてないし、それ以外にレベルが上がる心当たりなんてないからさ。


 レベルが上がるってことは強くなるってことだし、魂みたい……いや、この魂達は積極的に吸収していった方がいいのかもしれない。

 私に生き物を殺してレベルを上げるなんてことが出来る気がしないし。


 ……でも、本当にいいのかな。

 レベルが上がって強くなるのはいい事なんだろうけど、魂を吸収した時に流れてきた言葉……いや、感情はあまり良くないものな気がする。

 マイナスな言葉や感情ばかりだったし、良くないのは当たり前なんだけど、そういうのじゃなくて、そんな感じの魂を吸収していけばいくほど私もおかしくなりそうっていうか、言葉では上手く言い表せないけど、やっぱり良くない気がする。

 私は別に強くなる必要なんて無いし、もうこの魂は無視していこう。

 さっきの人たちに火傷を負わされた復讐をしたい、みたいなことも思ってないし。


「ぐぁっ」


 そうして、色々と考えが纏まってきたところで、私の肩に矢が刺さった。

 どこかから誰かに打たれたんだ。


 どうせ治る。そう分かっていても、痛みは当然ある。

 矢が肩に刺さった痛みで反射的に私は足を一歩前に進めてしまい、その場に前のめりに倒れ込んでしまった。

 その時、また魂みたいなものに触れてしまった。

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