予言されていた終焉の魔女に転生。人類の敵みたいだけど誰かを恨む気持ちなんてない……はずだから平和に暮らそうと思ってたのにそっちが攻めてくるなら戦うしかないよね
シャルねる
第1話
「……え? あれ、俺なんでこんな洞窟? みたいなところに……ん? なんだ? この声……俺の声、なのか?」
訳の分からないことが多すぎて、俺は一気に捲し立てるようにそう言っていた。
そしてそのまま、両手を頬に当てた。
ぷにぷにとしている頬っぺに柔らかい手。……うん。声からして察してたけど、俺の体じゃない。
……まさかとは思うけど、転生ってやつ?
「だとしたら、俺、死んだのか?」
そう言いつつも、あまり死んだことに喪失感は特に無い。
……と言うか、現実感が無いって言う方が正しいかな。
「あー、あー、俺……俺……私……」
見た目は分からないけど、明らかに声が女の子で可愛い感じなのに俺なんて一人称じゃおかしいかと思って、俺……私は一人称を変えることにした。
自分の性別にも未練なんて無かったし。
「転生したってことにも納得……と言うか、理解したところで、改めて、これは何?」
私は私の目の前をふよふよと浮いている魂? みたいなものを見つめながら、そう言った。
こんなのが目が覚めた時からずっと目の前にあったら現実感が無いのなんて仕方ないよね。
……霊媒師か何かに転生したのか、俗に言う異世界ってところに転生したのか、どっちなんだろう。
んー、分かんないや。分かんないことは置いておいて、取り敢えず、この洞窟? を出て誰か人に会いたいな。
それで自分の容姿とかも把握したい。
一応、髪の毛は腰のところに届きそうなくらい長いみたいで綺麗な白い髪の毛だってことは自分でも確認できたけど、それ以外が全然何にも分からないからさ。気になってるんだよ。
「光が見えてるし、あっちが出口だよね」
そう呟いて、私はふよふよと浮いていた魂? みたいなやつを無視して洞窟の出口に向かって歩き出した。
外に出ると、当然と言えば当然なんだろうけど、そこは全く見覚えのない森の中だった。
今更だけど、私、裸足だ。
ちょっと痛いけど、仕方ないかな。どこか人のいる所へ行って、靴を貰うか借りるかしよう。
街の場所に心当たりなんてあるはずもないから、私はそのまま適当に歩き出した。
すると、歩いている途中にもふよふよと浮いている魂? みたいなやつが何個か浮いていたけど、相変わらずそれを無視しながら。
「あれが街かな?」
そうして歩いていると、高い壁のようなものが見えてきて、私はそう呟いた。
「あのー、すみませーん」
時間帯の問題なのかは分からないけど、あんまり人は賑わってなさそうだったから、私はまだ結構街から遠かったけど、門番の人っぽい人達に向かってそう言って声をかけた。
体が女の子の体になったからか、想像よりも大きな声は出なかったけど、無事に門番の人たちに声は届いたみたいで、何やら慌てた様子で私の方に指を指して話をしていた。
一応、服は着てるみたいだし、あの距離から私が裸足なのとかは気が付かないと思うし、森の中から女の子が一人で出てきたのにびっくりしてるのかな。
……と言うか、車の音とか全くしないし、もうここは異世界確定だよね。……今更だけど。
……取り敢えず、あっちの話が終わるまでここで待ってればいいのかな。
それとも、私もあっちに行けばいいのかな。
私が行かないことには話が進まないし、行った方がいいに決まってるか。
「ま、待て! そ、そこで止まれ!」
そう思って、街に向かって進んでいると、私はそう言って声をかけられた。
良かった。一応言語が違う可能性も考えてたから、話が通じるみたいで本当によかった。
「はい」
「き、貴様は何者だ!?」
一人がどこかへ行ったかと思うと、もう一人が私に槍を向けながら声を張り上げてそう聞いてきた。
何者って……何者なんだろう。
普通にただの女の子だと思うけど。
「女の子だと思うけど」
一応顔を柔らかい手でぺたぺたと触りながら私はそう言った。
自分の見た目も分かってないし、ここは異世界なんだから、魔族か何かって可能性もあったからね。
結果は普通に人間だと思う。
だって、特に人間とは違った部分なんて確認できなかったから。
「き、貴様のような女がいてたまるか!」
……え? 私、なんかめちゃくちゃ失礼なこと言われてない?
もしかして、そんなことを言われるほどに可愛くないのかな。
ちょっとショックかも。
「えっ……熱っ!」
私が内心でショックを受けていると、その瞬間、街? を守るように囲っている壁の上から複数人の杖を持った人が顔を覗かせたかと思うと、一斉に杖を上に掲げた。
その瞬間、大きな火の玉が出来上がったかと思うと、物凄い速度で私の方向に飛んできた。
物凄い速度とはいえ、距離もあったし、避けようと思えば避けれたと思う。
でも、私はまさかそれを私の方に飛ばしてくるなんて思ってなくて、避けることはできずに、体を焼かれた。
なんでいきなりこんなことをしてきたのかは分からないけど、私は直ぐにその場から逃げ出した。
このままじゃ殺されると思ったから。
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