第20話 作品の題材ブレイカー

 荒れ果てた大宮駐屯地の中で繭から目覚めた人間。それは自分の身体を触りながら呟く。


「私は..................いや、俺、いやうち?あーし?アタシ?ボク......?おいどん?ん?自分の声が......えっ??なんでこんなにデカい胸があるの?えっ今数少ない覚えている男って言うのも違う?......あれぇ?股間にちんちんがある............あるっ!??待った、触った感じ穴が2つって事は女性器もあるぞ?私は男、女と多様性に配慮された方々しか世の中には性別がないはず。いや、何故か覚えているぞ、人間には時々奇形として両性の人間が生まれると......わからない、元々私は両性の人間だったのか......そもそも服ってモノがあるよね?何で私着てないの?待って、服を着るのが普通って言うのも間違い?どこまで覚えていない?両親は生物学的にいるが思い出せない、友人もいたと思う、恋人は............いないだろうな。それよりも臭い、本当に臭い。なんなの............っ!??ゴミ箱で鼻血を腐らせた時みたいな臭い............あれって死体?なんで?ちょっと本当に嫌なんだけど、よく見たら死体だらけじゃんっ......ヒュッ......は、早くここから出ないと............私も誰かに殺されちゃう......」

 

 そう言うと近くにある使えそうなバッグや装備(自分で使っていた物)を拾い、全裸でリュックを背負った。


「取り敢えず、誰か探さないと............と前に服を着ないといけない気がするし、顔を見ておきたいな......」

 

 スマホは拾ったが使い方がわからずカメラを起動できない、そして今は夜な為に反射で顔を確認するのも難しい。とにかく近くにあった衣類や靴はサイズが合わないので建物の方に素足で歩き始めた。


「......酷い、何があったの?ここって自衛隊の基地?だとするなら何故私はそんな場所に......」

 

 戦車や軍用車両が放置されていたり、壊れて横たわっているのを見てここがどこか察した。歩いて建物内に入った。そこは倉庫だった。


「......暗い......あれ、なんか見えてきた......ね?あ、思い出した。人の目は暗いところに慣れると見えやすくなるって事を」

 

 そんな事では無く眼の力のおかげで昼間と同じくらい見えている。そのおかげで倉庫内をうろちょろしていると衣類と書いてある箱を見つけた。


「い......る......い?読める!これは文字!そして意味もわかる!......じゃあなんでここで何していたか覚えてないんだ......家族もいる筈だけど全く覚えてないし......」

 

 そう言いながらガサゴソ漁り衣服、靴を身につけた。


「なんかおもちゃみたいに小さい服ばかりで変だなぁ」

 

 自分の身長の高さが特別な事を知らないので困惑しつつ、エロい下着と白いパンツとシャツ、黒いロングコートを着る。それとロングブーツを履く。


 コートはアメリカ人の男向けの1番上のサイズだったので着用が出来た。この時にデザートイーグルのホルスターを腰に装着した。


「ふぅ......私カッコよくて可愛いじゃない?鏡どこにあるかな」

 

 施設内を彷徨っているとトイレを見つけ中に入る。


「トイレ!したかったし、確かトイレには鏡はある!..................ぎゃあああああああああ!!?????」

 

 自分の眼球を見て恐怖のあまり叫ぶ。


「違う、絶対違う......これは絶対だ、この眼は普通じゃない............なんだよぉ......何があったんだよ私に............でも他のパーツは破茶滅茶に美人だな......それに多分スタイルもいい............なんでこんな目ん玉してんの......てか私の身長何センチだ?これ周りが小さいんじゃなくて私が馬鹿デカいんだ......」

 

 巨体女がブツブツ言いながらトイレを終えて外に出ると叫び声が聞こえてくる。


「尿......どっちからも出たし、トイレ流れなかったな............ん?叫び声?男の悲鳴?いや、雄叫び??とにかく行かないと、私みたいに困っている人かもしれないっ!」

 

 そう言いながら走り始めるが自分の足の速さに違和感を感じる。


「あれ?速い?こんなに速いっけ?それになんだか力が有り余っている気がするっ!走るのは楽しいんだ!......?運動はそもそもつまらなかったっけ?」

 

 記憶がごちゃごちゃして自分に疑問を持つ、そんな事を考えていると駐屯地から飛び出て声の場所に辿り着くと驚く。


「なんでどこの家も電気がついてないの?街灯は?それにゴミが散乱しているし......あ!何人かいる!すみません〜......すみません!??............?......っ!!か、顔が......」

 

 顔の肉が禿げて筋肉剥き出しの男が鉄パイプを引き摺りフラフラと近づいてくる、その顔を見た時に恐怖した。


「うぎゃうああ!」 「うはずるる!」 「うごおっあ!!」

 

 3人のゾンビが女に近づいて行く、だが女は恐怖と理解不能な事態にフリーズする。


「な、何っなんで喚いて病院行かないでこんなところで立っているの......で、電話を......電話............あ!スマホ!!」

 

 近づいてくるゾンビを無視し呑気にスマートフォンをポケットから取り出す。スマホの画面は勝手に点灯し、待受写真には友人3人、両親との写真があった。


「......誰だ?これが家族か?それに、この馬鹿でかい人形みたいな男となんで写真撮ってんだ?」

 

 そんな事を呟いているとゾンビはもう目の前まで来ており鉄パイプを振りかざされる。


「うぐおああ!!」

 

 ブンッと空気を切る様な音を立ててぶん回すゾンビ。

 

「危なっ!」

 

 だが女は軽々と片手で受け止め奪う。


「......これは......うーん、確かゾンビ......多分これはゾンビだよね?殺してもノーカンだよね?」

 

 そう言いながら鉄パイプをゾンビの頭に目がかけてフルスイングすると頭が破裂して倒れる。


「うわっ......そうか、わかったぞ!ゾンビが現実で発生して人類は今隠れ潜んでいるから真っ暗なのか!」

 

 そう言いながら残り2人も瞬殺し鉄パイプを投げ捨てた。


「汚っ......思ったより私の力強いな。さてと............さっき拾ったモノを見直そうかね」

 

 そう言いながら道路に放置された車の上に座ってリュックを漁る。そうすると金塊と指輪の入った袋を見つけた。


「えっ......本当に私は何をしていたの?いつ手に入れたんだろう......ん?この袋には3つしか入ってない......メモがあるな......未奈用、サーシャ用、俺(朔)用............朔ってなんて読むだっけ、これが私の名前で俺は読める、つまり私は男だったと言う事だ......そして指輪を渡す様な間柄の人間が2人もいるのか?これ結婚指輪だよな?嫁が2人いるのか?嫁の人数制限って無いんだなぁ......まあいい、俺だけここにいたと言う事は、もう亡くなったのか私が見捨てられたのだろう......」

 

 そう言いながら数十万以上する指輪を何個も手につける。


「大量にあるからサイズはピッタリのが沢山あるな......取り敢えず左手薬指だよな?そこは空けておくか............会ってみたいが見捨てられていたのなら............どうすりゃあいいのよ......」

 

 そう悩んでいても始まらないと思い彷徨うことにしたが腰につけた銃に弾丸が入ってない事に気づく。


「これは銃だね、それも本物だ。私はこうなる前に撃ち切ったみたいだな......自衛隊の基地なら武器は沢山ある筈............探してみるか......」

 

 だがしかし武器などは逃げる際に持ち出されておりほぼ何も残っていなかった。深夜3時頃になるまでうろちょろしてデザートイーグルの弾をマガジン5個分、M24 SWSと言う狙撃銃とそれの弾を手に入れた。


「はぁ......単発の銃しかないか。この狙撃銃もスコープが壊れているから置いていったんだろうなー」

 

 そう言いながら素手で壊れた金属製の部品をもぎ取り投げ捨てる。


「まあ5発しか入らないし、このデカい拳銃メインかな......いや、狙撃銃の弾の7.62mm弾は200百発くらいマガジンに入れてないけど箱であるんだよな......臨機応変で行くか............さて、何を目標に私は生きれば良いか......探すか、私が指輪をあげたかった程愛した人を」

 

 そう言うと外に出ようと思ったが眠気がきた。


「んぅ......ねむ......さっき地下にベッドのある部屋があったな......荷物とかでドアを塞げば安全か......寝よう」

 

 そう言うと朔は自室兼病室だった部屋で眠りについた。そして目覚めると拾ったレーションなどを食べ慎重に外に出ると雨が降っていた。


「はぁ......雨かぁ......寝ないで旅立たなくてよかったと考えるのが1番かしらね......」

 

 そう言いながらマガジンに弾を詰めたりと外に出る準備を雨が止むまでした。


「ふぅ......昼過ぎくらいかな......あ、スマホには日にちがあった気がする............12/13の13:12か......行くか、生存者を探して情報を聞き出して私の家族を探しに、私が何者なのか」

 

 こうしてイヴの旅が始まった。

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