第5話 国家権力系は信用するな
月城宅に向かう道中での車内。
「はぁ......これマズいわ。どんどん車が放棄されていて邪魔で辿り着けないかもしれん」
渋滞が起こり車を捨て逃げた後の為に道路が殆ど塞がっており、ほぼ歩道を走っている状態である。
「にしても人間どこ行ったんだ?悲鳴も爆発音もしないぞ?まあめちゃくちゃ叫ぶゾンビとかまだ見ていないし、みんなどこかに屋内に隠れているのかな。ゾンビはたまに後ろから追ってくるけど車に勝てる訳ないから何とかなっているけど............」
そう喋っているとサイレンをつけていないパトカーが逆走してくる。
「だっ!?なっ何で警察が逆走を!?」
小谷は急ブレーキをして避けようとするとパトカーから拡声器で話しかけられる。
「そこの車停車しろー路肩じゃ無くて良いからその場で早くしろ」
と言うので月城は小谷に言う。
「無視しろ小谷。どう考えても異常だ、相手は銃を持っているんだぞ!出て行ったらどうなるかわからない、映画なら軍人や警察官は信用できない存在だ。それに何よりこっちはパトカーが見えた時には違反していない、だがパトカーは逆走という違反の中でも危険な事を堂々としている、おかしいだろ!!そしてパトカーってのは基本2人で乗るんだよ、あれ1人だぞ更に怪しいだろ」
とオタク知識と常識観点から助言する。
「......いや、俺の車はネットで拡散されている違反者だし普通に摘発しようとしているんだろ......」
そう言いながら真面目な小谷は停車してしまった。
「ば、馬鹿野郎!こんなアウトブレイクの中でたった1人で職務を全うする警察官がいる訳ないだろ!そもそも運転しながらナンバーを調べられるか?それに逮捕されて留置所に入れられたら終わりなんだぞっ!」
「そうよ、ツッキーの言う通り無視して
と彼女も言うが揉めている間に警察官は車の前まで来ていた。そして銃を引き抜いてこちらに向け言う。
「ドアを開けろ!食糧を全部だ!全部渡せ、国民より我ら訓練された者が生き残るべきだ!」
と窓に向けて拳銃を向けてくる。
「チッ......ほら言っただろ......」
「俺も公務員だから職務を全うする人もいるかなと思って......すまない」
そう言うとドアを開けるなり小谷の髪を掴んで地面に引っ張り転ばせる。
「ぐふっ......クソ野郎が、食い物なら渡すから俺以外にこれ以上何もするな」
「ちょっとふざけんじゃないわよ!」
そして橋本が怒る。
「黙ってろ、そこのデケェ外人!荷物を外に運び出せ」
「えっ私?」
と困惑していると先程より大声で怒る。
「良いから早くやれ!この淫売のクソ白人が」
そう言いながら銃を構え続けるのを見ていた月城は違和感を感じた。
(ん?あれ......そもそも警官の銃じゃなくないか?それに服のサイズもあってない様に見える......)
月城はブランの荷物運びを手伝うと言い木刀を縦に背中に刺して隠して外に出た。チビであった為にあまり警戒されておらず成功した。そしてカマをかけてやろうと話しかける。
「ねぇ警察官さん?その拳銃セーフティーがかかっているけど?大丈夫ですか?」
「あ゙ぁ゙?あん??ん?」
そう言うと銃を右左眺め始めた。その瞬間、拳銃は偽物だと判断し木刀を抜刀して剣道の小手打ちの様に手を思い切り弾き銃を手から落とさせた。
「その種類の銃にセーフティーなんかねぇよ、ど素人が。ブランさんを淫売呼びしやがって。てか、そもそも警察官の使うモンのモデルガンかエアガン使えよバカ」
そう言うと股間に手加減して殴り相手は蹲る。
「ぐぅぅ......チキショー!!何でいちいちそんなのがわかるキッショいオタクいんだよ............さっきは上手くシメていったのに............」
そのさっきは上手くいったと言う発言に怒る月城。
「さっき......?このカスが、初犯じゃねぇのかよ。お前大体服とか服と車どうしたんだよ」
そう言いながら蹲る男の警棒を奪う。
「死んでた奴から奪って......そして殺して奪って上手くトントン拍子で進んでいたんだよぉ......痛えぇよ......」
「死んだ人は痛みも苦しみも感じられねぇんだぞっ」
そう言いながら警棒で顔面を殴り歯をへし折られる。月城のあまりの怒りや行動に3人は呆気に取られていたが小谷は車に戻る。そうしている間に拡声器で叫んだりした為に闇夜からゾンビ達が走り出てくる。
「慈悲だ、安心しろ。俺は殺さない」
そう言いながら手錠で柵と男の腕をつなげて小谷の車に急いで乗り込み発進しろと言う。
「た、助けてぇー!!これじゃあ殺しているのと変わらないっ!!」
そう殺人をして略奪を繰り返そうとしていた男が泣き喚く。
「じゃあ死にたくないなら息を殺して静かにしてろ、俺らの車に全部ゾンビが着いてくるだろうからよ」
そう言いながら手錠の鍵を男の前に投げつけて走り去っていく4人。
「............流石に可哀想じゃないですか?」
「俺も誰も死んでほしくないし悪人にだってそう思う。だから助かる術は伝えた......しかし......うむ......」
そう俯き頭を抱える月城。精神安定剤が切れてきて情緒不安定な為に、今の行為が正しかったのか今更後悔の大きな波に飲まれている。それに対してブランは想定より落ち込んでいる事に困惑すると橋本が言う。
「ツッキーは障害者手帳取れるくらい酷い躁鬱、不眠症、解離性障害の精神の病に身体には酷い過敏性腸症候群、アトピー性皮膚炎、喘息を患っているの............ごめんね。でも狂人だとか悪い人だとかじゃないから安心してね。イジメられていた人を無条件で助けるくらい優しいから............そう言う人ほど病んじゃうんだよね......」
とかなり病弱な事を説明する。
「......分かります、優しい人だって事は。......失礼ですが、何故手帳は取られないのでしょうか?」
(イジメ......私と同い年だったら私の人生は............いやそれより、そんなに酷いんだ......薬とか今後どうするんだろう)
その問いに本人が答える。
「俺が欲しいのは手帳じゃなくて家庭なんです。完治してみんなと同じ様に仕事をして、どこかで運命の人と出会って子供を授かって......とにかく普通の人と同じ生活をしたかったんです。だけど......こんなに普通が難しいなんて思わなかった!それに、もうこんな世界では手帳も家庭もクソもないですね............それと私の薬は死ぬまで飲まないといけない可能性が高いんです。今後物資が限られてくる世界だと数年で薬の消費期限が切れて眠れなくて体調を崩しておしまいです............ああ、何浮かれていたんだろう、こんな世界になったら生きていけないじゃないか......関わる人全ての人にとっての枷になってしまう......俺も誰かの脇役じゃなくて主役になりたかったなぁ......」
ネガティブそのものになる勢いで負の感情が溢れ出す月城は年下の前で情け無く涙を少し流す。車の中の雰囲気はお通夜状態であるがブランが言う。
「なりましょう、主役に」
と月城の手を取り目を見つめるブラン。
「ん......え?」
「ありがちな事を言いますが、誰だって自分の人生の主役なのです。自分の人生に白い花を咲かせましょう。よろしければ私は避難所などには行かず手伝える事は手伝います」
(会って助けてもらってから少し惹かれていた。しばらくこの人の側に居てどんな人か知りたいな)
吊り橋効果なのか少しだけ惚れているブランは月城がどんな人間か更に知る為、助けてもらった恩を返せるくらいメンタルケアをしようと心に誓った。騎士と呼んだからには姫は、姫としての役割を全うしなければと。
「良いのです......か?ならばありがたいです......全員で日本が落ち着くまで生き残りましょう。そうだ、俺もこんなに凹んでいる場合じゃないよな!」
単純なところがあるで気分が少し回復した。それを聞いて前席に座る2人も安心した。そうして色々しているうちに月城の自宅に到着したのである。
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