第4話 グールプ内で1番弱い奴死にがちで怖い

 2人はなんとか暗い道中のゾンビっぽい人に気が付かれない様にコソコソ動き回り石などを投げて気を逸らしたりして友人宅に着いた。


「ふぅ......ハイド系ゾンビゲームやっている気分だった......リアルだとこんなにキツいなんて.....筋トレしとけばよかったなぁ......あ、すみません。ブランさんここです。ここに私と同期の小谷って男と橋本って女がいます〜」

 そう言いながらアパートの方に指を刺す。


「あら?本当に失礼ですがご年齢に釣り合わない良い場所にお住みの方ですね?」

 と歩きながら大きめの綺麗なアパートを見て言う。


「あー、橋本が剣道道場の講師?で小谷は公務員だからじゃないですかね?給料良いのか知らないですが」

 (気持ちはめちゃわかるけど本当に失礼なの笑うわ、ブランさんお淑やかで綺麗な顔しているけど中身割と雑な人なのかな)

 

 そう喋りながらアパート入り口に入り、呼び出しの装置で番号を入れて待つ。すると即座にドアが開き機械からは早く入れと一言だけで切れてしまった。


「ああ......ブランさんがいる事言えてない......まあ大丈夫ですよ、もし......ほぼあり得ないですがダメなら安全な場所に向かうのを手伝いますから......」


「そこまでしなくて大丈夫です!自分を優先してください!」

 そう言いながらエレベーターに乗ろうとするので止めた。


「ブランさんちょい待ってください!もし中にいる時に止まったり、外で暴徒やゾンビに出待ちされていたらおしまいです!」

 と腕を掴み言う。


「あー映画でも殺人鬼が待っていたとかありましたね〜〜助かりました!では階段で早く行きましょう!」


「まあ......私の被害妄想に近い感じですけどね〜先頭お願いします、後方から駆け上がるゾンビは木刀で叩き落としますので」

 と言い緊張状態が続く中恐ろしい程になぁんンにぃも起きずに部屋に無事辿り着いた。


「定番なら壁の穴とかから脳みそ剥き出し系化け物とかが這い出て来るのに......いや、木刀如きでは対応できないだろうから良いけど............いや、あれゲームでもショットガン無いと無理だぞ......」

 そう言いながら真顔でインターホンを連打する月城、それを見て若干恐怖して困惑するブラン。


「え、えぇ〜?流石に押しすぎじゃないですか......?」


「あ、いや。ここ接触悪くて反応しない事が多いのでいつもの事なんですよ〜」

 と笑いながら説明しているとドアが開く。


「随分と遅かったじゃ......デ......デッカッ!!誰?誰なの?ねぇはじめ〜ツッキーが学生の子連れて来たよ〜」

 ブランの身長などの大きさに驚き彼氏に呼びかける橋本。


「声が大きい!良いから中に入れ、どうせツッキーがいつもの善意で助けたとかで連れて来たんだから大丈夫だろ、多分」

 と妙に友人を信頼している小谷は2人を招き入れると早々にブランは自己紹介をする。


「お邪魔します、私〇〇高校3年生のアレクサンドラ•ブランです!ボクシングとかしているので自衛は多少できますのでよろしくお願いします」

 と玄関で深く頭を下げるブラン。それに対して驚く小谷。


「JK高身長外人ボクサー......って事はあの有名なベアクロウの異名を持つアレクサンドラか!」


「え?有名な方なの?」

 とスポーツに特別興味がある訳じゃ無い月城が聞く。


「高校の大会で日本一になったミドル級の選手で今後が期待されていた人だよ。テレビにも出ていただろ?お前変な時間に早起きするからニュースはよく見るとか言っていたじゃん」


「いや、薬が変わって今は9時くらいまで起きれない......てか、それより何か申し訳ない気持ちに......なんかチビが守るとかほざいて申し訳ないです......」

 (俺以外みんな運動できるの......これ俺死ぬじゃん............それよりイキリ倒し過ぎて恥ずかしい......)


「え!?いや、興味ないジャンルは知らないのは当たり前じゃないですかぁ......私だって興味のないヒーロー系作品は全く知りませんし気にしないでください!何より私のことを思い遣ってくださった事は事実ですから!」


「ありがとうございます......」

 (人間できてるなぁ......これ小谷ハーレム路線のポストアポカリプス系作品だな......俺は死に役になる前に離脱しよう......離脱したネームドキャラは外伝で語られなければ生存で終了だからな......俺ってそもそもネームドキャラ?)

 そう色々悲観的に考えていると小谷が言う。


「2人とも玄関で会話していないでリビングに来なよ、ブランさんも実家だと思ってゆっくりして............あ、そう言えばご家......」

 そう言いかける前に月城が割って入る。

「ああ!!思い出した!荷物はまとめた!?早く俺の家に行かないとだから休息は少しだけにしないと!!」

 

(事情知らねえから仕方ないけど聞かないでくれ......家族全員失っている子なんだから思い出させないようにしないと............そんなことになったら、もし俺なら耐えられない......)

 そう必死に話す月城、だがブランもバカではないので察していた。

 

 (ありがとう、月城さん......心も護ろうとするなんてやっぱり騎士ナイト様だよ)

 

 と思い小谷の方を向く月城にバレない程度に微笑んだ。


「ああ、ほぼ問題ない。逆にそちらの家に行く事について話したのか?」

 大事な話なので思惑通り逸れた。


「いや、既読が無い。だから......だから!早く行きたいんだ、俺の親は災害の備蓄にうるさいタイプだから充電切れはあり得ない。もしゾンビが......もし暴徒が俺の家族に何かしたのであれば、事によっては俺の命を失ってでも相応の報復してやる」

 いつものふざけた雰囲気では無く本気マジな目つきで落ち着いた口調で話す。


「きっと大丈夫。気休めにしかならない言葉でごめんね......早く行こう、一。私たちの両親の安否は取れたんだから今度は大切な友達の大切な家族の番」

 そう橋本が言うと自分のリュックを背負い自前の木刀を持った。


「ああ......俺はボストンバック二つにリュックを二つ持つから護衛してくれ。中身はしっかりツッキーのアドバイス通りの中身だ」

 そう言うと総重量何十キロもありそうなバックを持つ。


「わ、私も何か手伝います!文字通りお荷物にはなりたくないです!」

 とやる気を見せるブランに月城が言う。


「じゃあライトを照らしたり見張りをお願いします、護衛は剣道経験の私達が木刀で頑張ります......と言ってもやっぱり武器無しは怖いな。小谷、橋本ー何か武器無い?」


「えぇ!?そうだね......あ!」

 そう言うと剣道関連の道具が置いてある場所を漁り細めの木刀を出す。


「これは昇段試験用の木刀だから軽いからどうかな?気休め程度だけど」

 そう言いながら手渡され物珍しそうに持ち眺める。


「刀みたいなの憧れていたのでありがたいです!頑張ります!」

 そう喜ぶ姿を見て月城は勝手に安堵した。


「素振り用じゃないから鍔もあるしね......学校用のバッグが振る時邪魔だろうから小谷の首に引っ掛けておきましょう」

 そう言うと置いていたバックの持ち手を小谷の首に掛ける。


「ぐぇえ!これ中学生がふざけてやるやつだろ!......まあ軽いから問題ない。いつか、ここに戻れると良いのだが......」

 そう言いながら玄関に向かう彼に月城が言う。


「戻れるさ......それと誰かが入ったかわかるように仕込みをしておく」

 そう言うと紙を手に持った。


「ん?何すんの?」


「これをドアに挟んで出て行く、一度開けられると挟まっていた紙が玄関に落ちるからわかる。漫画で見た気がする知識だから当てになるかどうかわからんけどやるだけやろう」

 そうして仕込み、その後全員玄関から出て施錠してアパートのエントランスまで行くと見たくもないモノがそこにはいた。


「ヒィッ‼︎блядь‼︎」


「なんだこりゃあ............どうすんだよ......」

 施錠されたガラスの扉越しに3人のゾンビが居た。立ち尽くすモノ、何故か寝転び続けるモノ、解除をしようと装置のボタンを押しまくるモノだった。月城は漠然と思った。

 (あーこの作品での俺の役目は終わりかな。ここで友を守り死ぬのかな、嫌だ怖い)

 精神不安定の月城は絶望感に打ちひしがれていた。


「あのボタン押しているやつヤバいぞ......しっかり3桁打ち込んでその部屋のやつが許可したらドアが開くぞ......」


「知ってた?そもそもあれってドアの隙間に紙を刺すだけで解錠できるんだよ。ねぇ?裏口って絶対あると思うんだけどそっちから行こう」

 とここでクソみたいな豆知識を披露するがまともな意見もする月城。これについて住人の小谷が言う。


「あるけど当然施錠されているし、乗り越えられるほど低い柵じゃないから良い策じゃないよ朔」


「くだらない韻は踏まないで正面突破するよ」

 そう言うとバッグを全部落として長さの違う木刀を2つ持つ橋本。


「えぇ!?二刀流!?宮本武蔵!!かっこいい!!」

 とはしゃぐブラン


「そう、こいつは日本にほぼ師範は居ない(※現実でもほぼいません)二刀流を我流で行い大成した珍しい剣道家なんですよ」

 そう言いながら自分の持ち物を置き中段の構えを取る月城。


「今思えば剣道の小手をボクシングの手袋?代わりに持たせた方が良かったかもな......じゃあ開けるぞ!俺らなら乗り切れる!」

 そういう小谷の手には家具をバラして取った鉄の棒があった。


「い、いくぞ......」

 (あー畜生......俺も小谷みたいに主人公イケメンムーブしたい......くだらない事は考えるな死んでも良いような奴は俺だけなのだから......)

 そうして地獄の門は開かれる。

 

「汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ......」

 とダンテの神曲の地獄の門の一節を呟く月城。

 そして開かれたが全くと言って良いほどこちらに興味を示さない。あまりの事態に拍子抜けする3人に月城は言う。


「気を抜くな、映画だとここが最初の正念場だ!」

 そう言うと通路の端の石をエントランス内部に投げつけた。


「ぐぶぶふるっ」 「がぎぐっつうへ!?」

 とボタンを押し続ける奴以外は石に向かって飛びかかるが特に何もない石とわかると同じ行動をまた取り始めた。


「こっわ......あの間をすり抜けて行っちゃえば良いっしょ!って完全に思っていたよ......これどうすんの......」


「こいつらは空間認識能力がかなり下がっているのか視力が悪くなっているのかわからないが反応出来る範囲はそこまで広くないみたいだ。だがモールであった奴らとはまるで違うからこいつらにも個性があるのだろう............橋本......行くぞ。安心しろ、死んでも守る」


「きゃー2人にも死んでも守るなんて言われちゃったよ〜......笑えないから、これが死亡フラグって奴でも言うよ。絶対にここを生き残りツッキーの実家まで行くよ」

 そう言うと構え直す。


「ブランさん、フラッシュライトを奴らに当ててください!そして当てながら後退してっ!」

 そう言われて当てるとボタンの奴だけが開いた扉から走って来た。


「こいつ走るのかよっ!」

 そう言いながら小谷は鉄の棒で殴ろうとするが避けられ覆い被さられかける。月城は向かうが間に合いそうに無い。


「なっ!マズッ......」

 そう焦り倒れるところを近くのブランが思い切り蹴り上げて奴は転がって行く。


「ナイスッ!首や関節を狙え橋本!」


「わーってる!ナメんなッ」

 首に一撃、それを上から二撃だったそれだけで首の骨は砕けた様だ。


「やっぱり現役は強い......俺って口だけじゃないか......」


「知識ある指揮官や研究者って考えろ!」

 と励ます小谷に、

「それ大体中盤で死ぬんすよ......酷いと序盤で転けて持った銃で自爆とか......でもありがとよ」

 と少しメンタル回復した月城は残り2体の処理作戦を伝える。


「あの二体は音ではないかも、こんなに動き回り騒いでも来ない......これは空間認識能力が低下して鈍臭くなり自分と物の距離がわからない。だからわかりやすく目の前にいきなり現れた石にだけ反応した......だが困った事に普通ゾンビ映画ならそれに食いつき続けてその間にトンズラできるんだけど............それに棒立ちの方は初撃で始末するとして寝転がり動き続けている奴が問題だ。なんせあれを続けられたら転ばされてしまう、それにいつ起き上がるかも予測できない。だから橋本と小谷が棒立ちを確実に仕留めて、俺は1人で殺すつもりでやるが足止めをメインでやる」

 自己犠牲的な作戦に3人は否定的であった、特に役割のないブランが怒る。


「もっと自分を大切にされたらどうでしょうか?貴方には守るべきご家族がいるでしょう?」


「っ......ああ、ブランさん済まねぇ............じゃあ俺の手伝いを頼んでも良いですか?」


「喜んで」

 そうして話を合わせて決行。


「はーっ!!!」

 慣れない木刀で脛に向けてフルスイング。


「あんたに恨みは無いし可哀想なのはわかっているけど......」

 そうブツブツ言いながら木刀を横に持ち首を上から押さえつけて仰向けで固定する事に成功。


「ぶるぶるるがばぅば!」


「あーやめてくれ......俺だってやりたくねぇんだよぉ......」

 顔を背けて罪悪感に苛まれてる所で橋本が頭部を殴った。

「くたばれぇっ!!!」

 その瞬間に月城は木刀を退け後退、そこに鉄の棒を首に何度も突き刺す小谷。そして全く動かなくなりいつもの処置をしてバックを持ち車に走り飛び乗る。


「やったー!みんな生きている!!」

 と横にいた小谷に抱きつく橋本。


「死ぬ様な事言うな!!俺が1番死に役ポジなんだから!!」

 と前を見て言っているとブランが、

「本当に良かったです!!」

 

 と言いながら橋本に流されて月城に思い切り抱きしめてしまった。2人は気まずくなったが顔を見合いなんとかなった喜びで笑った。


「法律守りながら飛ばすぞっ!」

 と笑顔でエンジンをかけて発進する。

 

 こうして、こういう時の死に役には無い友情パワーでその場を凌ぎ、法律違反済の車でガラガラの道路を放棄された車などを避け進む一行であった。

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