第3話 ど定番の死&ど定番の出会い

 3人はガソスタにダメ元で行く途中に会話をしていた。


「あれ〜〜まだゾンビは有名じゃないのかな?友達とチャットできるから多分回線戻ったし渋滞もないからSNSで調べたけど暴動が日本で何箇所か起きたとかなんとか、そして特に大きかった騒動は............って私達がモールの中爆走している動画出回っているじゃない!も、もし逮捕なんてされたら留置所で何もできず食い殺されちゃう......お母さんたちの無事は確認できたのに......」

 と憂う橋本。


「むぅ......映画ならいきなり感染爆発ゾンビフィーバーなんだが............もしかしてウイルスや細菌、寄生虫をばら撒いたり漏らしたりしたんじゃなくて、感染者自体を各地に野放しにした......とか?この広まりの遅さはやっぱり感染者そのものをばら撒いているのか......?それも潜伏期間や発症のタイミングと良くわからない。モールの奴らはもう狂っていた、だが襲われたと見られる人達は蹲ったり、足を引き摺り痛がって逃げようとしていた、つまりまだ意識がある......どっかのZ映画と違って10秒発症では無いのだろう......それより俺は家と連絡取れないなぁ」

 とオタク特有の早口で話す月城。


「俺らにそう早口に言ってもわからねえよ......あとそれより家の方が重要だろうよ......」

 と困惑する小谷。


「要は完全パニックになるまで時間があるかもしれない、今物資を集める必要がある......が秩序があるからまだ現金とかがかかるのが難点......そもそも自衛隊や警察が本気を出せばこの広まる遅さなら排除出来るかもしれないが、日本以外の国でこう言う事例があるか調べても本当のヤク中の暴走だけ。つまり、日本だけ変なことが起きている......これは本当にまずい、映画だと生き残るもクソも無く最悪の展開に............」

 とネガティブになる彼に対して橋本が聞く。


「最悪ぅ〜?アウトブレイクだかパンデミックが起こるより?」


「そう......そのパンデミックが問題でね。現状で日本でしか流行っていない凶悪な病原体。今日本に核を撃ったりして更地にすれば大勢の世界の人類は救われる、つまり功利主義って奴だよ。俺ら少数を害して世界の多数を救う、これをやられたら俺らはゾンビだらけの中で生き残るもクソも無いんだよ............っ!これが目的で他国が日本に病原体をばら撒いた可能性もあるぞ!日本には核シェルターがほぼ無い、だから撃てば終わり。それに宣戦布告しないで世界からの支持を集めて日本を滅ぼせるからな......」


「考え過ぎだ......と言いたいが今日一日あんなの見ちまったからなぁ......あ、あそこ安いし空いているから入るわ」

 そう言うと通貨なんてケツ拭く紙にもならないかもしれないのに安い場所を選ぶ、スイスイと楽々とガソリンを補給し始める小谷。それと念の為木刀を持って降りている月城。


「早くしよう、ここはいつも人通りが多い。飛沫感染をするなら人混みは最悪だ。流石に空気感染は無いだろう、至近距離で感染者を始末した俺らが正常なのが証拠だ」

 ここは店が密集している地帯であり人通りも多く車も良く通る、だからガソリンスタンドがあるのだが。


「ああ............今の時間は夕方4時過ぎくらいか。俺の家はここから10分前後で着く、その後ツッキーの家に行く頃には遅くて5時過ぎか。暗くなると奴らがぱっと見で見分けがつかないから嫌だな」

 そう言いながら給油口に突き刺し入れている。店員が近づいて来るのに小谷が気づき向くと話しかけてきたが明らかに顔色が悪い。


「あ、あのぉ......その木刀?は、ははしまってもらえますか?通報し、しま、すすよ......」

 呂律が回っていない、店員の手を見ると露骨な程に深い噛み跡がある上に変色している。明らかに感染は進んでしまっている。


「す、すみません〜ちょっと私達剣道やっていまして、止まったついでの車の積荷の整理中でして......」

 ギリ許されそうな言い訳をする、言い訳ばかりの人生の月城。

 そして小谷に向いて小声で言う。

 「小谷もう切り上げて金払って出ろ、早く」

 (マズい、モールで倒した奴と肌の色近いぞ......)

 

 それを聞いて察したのか満タン寸前だったがやめて支払い始めるが、来たことがない会社のガソスタだった為に支払いがもたつく。

「チッ......ここ現金だけかよッ......それもタッチパネルの反応が悪いんだけど......」と呟く小谷。


 店員は苦しそうに脱力して立ちこちらを見ている。まだ会話できるか質問がてら月城が試みる。


「あのー?その手の噛み跡?はどうされたのですか?大丈夫ですか?」

 木刀を片付けてしまったので小谷早くしろと思いながら質問する。


「へ、へぇ?ああ、朝かりゃあよ、酔っ払いに絡まれてから、絡まれへてて......な、なんかかここくす、すぐったくっててかゆ......かゆかゆかゆかゆかゆくすかゆぅ?かゆいいかゆいいい」

 段々と言葉がおかしくなりど定番の様に狂い始める店員、腕の噛み跡を掻きむしり過ぎて筋肉が剥き出しになりながら喚き抉り散らし始めた。車内にいた橋本はパニックで泣きそうになりながら何かを2人に言うが当然聞こえない。


「小谷ィ!早くしろ!だが支払いは絶対しろ、警察に目をつけられたら面倒だ!」

 手遅れな気もするが、そう言いながら一心不乱に腕の肉をグチュグチュ千切る店員の後ろに行き足を蹴り跪かせる。


「俺はニートと言えど引きこもりじゃあないが力はもう学生時代みたいにないんだヨォ!!......ったらあっ!?............はぁ......よっこいしょ......」

 そう言いながら回し蹴りをして店員を倒したが、情けなく自分も転けたが受け身は取れて即立ち上がった。倒されたのにビクビクしながら腕の肉を抉り続けるあまりに骨よ綺麗な白色までも露出している。目は毛細血管が破裂して血が滲んだ恐ろしい顔で涎を垂らしているのであった。その隙を逃さず車に乗るが、それを見て哀れむと同時に感染したらアレになると恐怖した月城。そして小谷はなんとか支払いをしてお釣りは受け取りに行く暇もなければ店員も多分いないので運転席に飛び乗ったら橋本が泣いて言う。


「良かったぁ!なんとも無いよね?大丈夫だよね?」

 それを聞きながら発進し答える小谷。


「まじツッキーに感謝だぜ......なぁ?大丈夫だろ?俺もお前もよお?」


「ああ、血液も付着しない様にあの腕には気をつけたからね。一応今アルコールスプレーかけてるけど効くかなぁ......と橋本心配ありがとよ、お前の大切な彼氏ちゃんはちゃんと助けたぜ!」

 も自慢げに冗談を言うが月城に蹴り倒された店員に、まさかの別の店員が駆け寄っているのが見えて道路に出る前に小谷に車を停めさせて木刀を持つ月城。

 

「え?ちょっ!なにしてんの!良いから早く行こうよ!」

 真っ当な事を言う橋本に対し月城が言う。


「助けられる何かを見捨てたら夢見が悪いんだよぉ!まあ薬で夢見ねぇけどヨォ!!小谷先に行って荷物纏めてろ!どうせ徒歩でもそう遠くない、後で追いつくから先に行け!!」

 そう言いながらもう1人の店員の為にドアを閉め振り返らず走った、幸いエンジン音が聞こえ離れていったので安心する月城。


「そいつから離れろォッ!!!」

(あーあ......柄にも無い無駄な正義感で動いてしまった......それに本当に後から追いつける奴は猛者とか主人公格って相場は決まってんだよなあ......作品では勇気を振り絞ったモブの末路は酷いもので......)

 内心後悔しながらも両手で木刀をしっかりと持ち走りかかるともう1人の店員がペイントボールを投げつけてくるが普通に外れた。月城はかなり驚く。


「危なっ!?」


「く、来るな!!こんな風にクソ野......先輩を傷つけるなんて!!もうけ、警察は呼んだからな!」

 と状況を理解していない店員Bが言う。


「もうそいつはそいつじゃないッ!!!よく見ろおお!どう見ても正気じゃ無いんだから離れろ!」

 そう叫ぶとほぼ同時に店員AがBに気付き、おぎ上がり血塗れの腕で引っ掻こうとするがBは長袖を着ていた為に傷はつかなくて済んだ。


「な、何しているんすか先輩!俺が救急車呼んだんだから動か......ヒッ⁉︎⁉︎血!?目......目がぁ!」

 Aは目の色が濁り口から何故か血のようなものを垂らし始めていた。このやりとりをしている間に月城は2人に近づけた。


「血液の飛沫に注意してくださいっ」

 そう言いながら木刀でAの喉元を思い切り突くと奴は後ろにのけ反る。そして追い討ちに首を押すように横から殴りAを倒すと同時に踏みつけ喉元には木刀を突き刺すがバタバタ動く為に月城は体勢を保つのに苦しむ。


「この人の出血が多過ぎて下手にトドメが刺せないっ!ちょっと!店員さんよぉ?何か棒............おい!待てよ!ふざけんじゃねぇ!1人で逃げんな!!」

 店員は助けてもらった癖に逃げたのである、情けは人の為ならずとはならず。そしてBは叫ぶ。


「ありがとよぉ!!クソ先輩は死んだも同然だし、お前は俺の代わりに死ね!!だが俺は生き延びてやるぜぇえ!!......!?うわあああああ!!!?」

 Bが前を見ずに月城に罵倒しながら走っていたら制御不能になった爆速のトラックが突っ込んで来て思い切り轢かれぐちゃぐちゃになり、部品がこちらに思い切り飛んできて店員Aの頭が吹っ飛びトラック自体にも火がつき始めた。


「あーあ......映画だとそう言うの絶対に死ぬのに......トラックの人も窓から見る限り......手遅れか......にしても主人公バリに運が良かったな............」

(この流れになったおかげで死に役はあのクソ野郎になった訳だ、ラッキーかな)

 そう言いながら念の為に刀をAの膝に何度も何度も突き立て破壊し走り始めた。それでも這いつくばりそこそこの速度で追ってくる様はさながら頭部がほぼ無いテケテケの様だと恐怖した。


「ああ!!クソクソクソッ!何故動く!??これじゃあ俺の家に帰れねぇ!!この惨状がプレゼントか?チキショー!!」

 ガソスタの大事故で人が集まり、案の定運転していた感染者がいた為に一気に感染が広まる。だが前述した通り感染直後は正気な為に追ってきたりはまだしていない。走り進むと近くに交番があることに気づく。


「おっ!悪いけど警察官が死んでいたら銃を拝借したいの......だ......が............やめよう」

 ちょっと覗くとゾンビ関連で負傷した人が何人も居り保護されたと思われるので、その場から必死に離れた。何よりもう発症しそうな者もいた為。


「あー!!ゲームみたいにその辺の原付とか車奪いたい〜〜そろそろあの場から離れたから目立つし歩くか......もしゲームのゾンビみたいに速く動く物に反応するなんて事があったら困る」

 とブツブツ呟きながら彼らが住むアパートに着きそうになるところで、向かいの道で長身の白人の?JK?が傘で?馬鹿でかい太った男2人?を殴ったり突いたりしているのが見え何か叫んでいた。


「助けてっ!!誰か!またおかしくなっちゃった!!」

 と割と流暢に叫んでいた。それに対して(デッケェねぇーちゃんとデッケェーデブ2人いる!?)と絵面のインパクトに驚くが冷静になる。

 もう暗くて変質者なのかゾンビなのかわからない為急いで近寄る......最悪な事に誰が見てもわかる程に汚いゾンビだった。月城はこうなればとヤケクソでカッコつける。


「お嬢さん!大丈夫ですか!後ろに下がっていてください!!」

 (ゲームの負けイベや、小谷の悲しい追想のシーンになりません様に......にしてもこの人達は本当に全部デカいなぁ)

 そう言いながら剣道の中段の構えを取り、芸無く突きをする。理由としては一瞬の攻撃のために相手に掴まれない、ノックバックや致命打になる可能性があるからである。


「うらぁ゙あ゙あ゙ぁ゙あ゙!!!」

 必死に肉のつきにくい関節を狙う、打撃では骨折による無力化や神経断裂しかほぼ狙えないためだ。だが相手はかなりのデブであった為にあまり意味を成していない。しかし、デブな上に発症直後の為か動きが鈍い為になんとか1vs2が成り立っているが乱雑に振られた腕が当たり、道にあるコンクリートの壁に打ち付けられその威力に驚愕すると共に苦しむ。


「がぁあっ!??痛えよぉ......ゲームなら1/4のHP持ってかれてんぞ......だがあの子の為にも下がる訳にもいかないんだ......」


 少し涙目になり構えを取る。JKは逃げずに後ろで心配そうに見ているが、それに気づく事はない月城はどっかに逃げたと思い込んでいる為に本音をつい言ってしまう。


「畜生なんでこんなにデブなんだよ!防御力全振りが......にしても柄にも無くカッコつけちまったよ......あの子JKかなぁ?それにしても綺麗な子だったなぁ、でも多分どっかで安全に逃げれただろう!自分で自分を励まさないとやってられん!!家族も気になるしっ」

 そう彼女に聞こえる声でキッショい事を愚痴りながら肉がつかない脛や肘などを集中攻撃していると彼女は口を開く。


「私い、いますよー!ありがとうございます、が、頑張って〜」

 そうきまずそうに手を振り鼓舞する。


「へっ!?あ、あ!はい。頑張ります!」

 マズい事言ったと思ったがクソ店員と違い逃げなかった事が嬉しくて、張り切って相手の脛をしつこく殴ると2人とも元々ノロノロなのがとても遅くヨロヨロし始めたので最後に顎に2連打し転ばした瞬間に逃げる事にした。


「もう逃げれると思うので逃げましょう!」

 そう言うと月城が言うとつい手を伸ばしてしまう。

 (やべっ俺別に足早くないし、調子乗り過ぎや)


 と考えていたが手を掴んで来たので、考えずにしっかり掴み走り始めた。ある程度離れて且つ友人宅に近い所で止まる。


「はぁ......はぁ......大丈夫ですか?カッコつけて手を伸ばしておいてアレですが運動不足な人間なので、もうキツいです。白い息ばかり吐いて恥ずかしいですね」

 そう月城は笑う。


「いえ、本当にありがとうございました......実はあれ私の兄達なんです......家族みんなおかしくなっちゃって......兄と逃げていたのですがおかしくなってしまって......まるでゾンビの様に理性が無くなり............恐らく犬に噛まれたから............」

 と家族を完全に失い泣き始めたのでなんとか慰めたのとデブの事を謝罪したが事実だからそこはどうでもいいと。そして名を聞くと共にまだ避難所なんてものはまだ無いので着いて来るか聞いた。


「そういえばお名前やご年齢はなんですか?」


「oh......傷心のあまり忘れていました。私の名前はアレクサンドラ•ブラン......ロシアとフランスのハーフです。そして18歳です、お兄さんの予想通りJKです......まあ制服なのでわかりますよね」

 そう言う彼女は二つの人種の美人の良いところ取りの容姿に、透き通る肌に綺麗な金髪にモデル体型の様な長身。更にお嬢様んところの学校の制服、月城からは完全に勝ち組の高嶺の花に見えた。


「ほへー......珍しいですね。それに日本語がお上手で......って私がまだ名乗っていませんでしたね、失礼。私は月城朔です、年齢は23歳です。それとこの後に行く場所が無ければ私の友人の家に避難しますか?多分受けいれて......それより事案になってしまいますかね............ただ貴女が今どういう状況かわかりませんが今の夜を外で過ごすのは危ないです............私たちの所に来ないにしても、余計なお世話かもしれませんが力になりたいと私個人は思います」

 と珍しく真剣に話す。


「何故......?今あったばかりの人を助けた後に更に助けようとするなんて?」

 そこまで他人に優しくする事に疑問を持ち頭を傾げ聞くブラン。


「いや......所詮は私は世の中にありふれたモブですが、私の様なカスみたいな力でも助けられる人が少しでもいるなら助けたいんです......と言っても貴女の方が身長も高い上にガッチリしていて私より強そうですが......」


「ふふ......私は身長184cmでボクシングとかしているんです。対人なら身を守れるので事案だとか心配しなくても大丈夫です......そもそも貴方を疑っていませんが。それにゾンビ映画だったらその優しさが身を滅ぼしますよ......それに!卑下はしない!!貴方はモブじゃない、こうやって孤独な私を助けましたから......」

 そう笑いながら両手を掴みブンブンとして言う。


「あ、ありがとうございます......ブランさんもゾンビとかの作品がお好きなんですか?」


「ええ、まあ時間が余る事ばかりで暇を潰す為見ていて、映画や漫画全般好きですが......その反応からするに貴方もお好きな感じですか?」


「おお!そうでしたか!なら話題は尽きませんね!では赤の他人に向ける信用よりほんの少しの信用を私達に向けてください!チビですがこの木刀で元剣道部の強さを示し剣士として貴方を守りましょう!............流石に調子乗った冗談って言うのはわかりますよね......?」

 恥ずかしくなって質問して更に恥ずかしい月城の顔は赤くなっていた。


「うふふっははっ!」

 と大笑いするが品性は保つ彼女は彼に向けては言う。

 

「そ、そんなに......?」


「いえ、こんなによくお喋りをしていただく方は私の周りにいなかったのでなんだか嬉しいし面白くて、では連れて行ってください。私の騎士ナイト様」

 そうして月城は彼女を助けたからには安全な場所に連れて行くまでスジを通す事を決めて誓ったのであった。

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