第4話:マホロ、キセキのカケラ集めスタート!
「──そう。だからまずは大きな面積と小さな面積をタテ×ヨコで出してあげて、引いた数字が答えになるってわけ!」
「わぁ、ほんとうだ!正解!ありがとう、マホロちゃん!」
「マホロちゃん、頭いいんだね!」
「この前の算数の小テストも一位だったよね?」
「体育の五十メートル走でも一番速かったの、マホロちゃんだったし」
「へへっ!他にもわからないことがあったらドンドン聞いてきてよね!」
──カランッ、コトンッ。
あぁ、またキセキのカケラの転がる音がする!
今日はもうすでに三つもキセキのカケラをゲットしちゃったんだ!
朝は日直だったアスカの仕事を手伝ってあげたでしょ?
掃除当番だったナズナの代わりにトイレ掃除もしてあげた。
あとは、ユリがふでばこを忘れたって言っていたから、鉛筆と消しゴムを貸してあげたりもした。
そして放課後の今、仲良くなったクラスメイトたちに算数の宿題を教えてあげている。
算数はまほうの国でも同じように勉強していたから、楽勝だ。
「マホロちゃんってなんでもできちゃうんだね!羨ましい〜!」
「まぁね〜」
でも、実はそんな私にも苦手な科目がある。
それが……国語だ。
中でも漢字だけはすっごく苦手。
フェアリス王国には『ひらがな』と『カタカナ』、それから『まほう文字』と呼ばれる呪文を書くときに使う用の文字がある。
だけど、『漢字』だけはこの人間界に来てはじめて知った。
だから家に帰って、毎日漢字をひたすら勉強しているのは私だけの秘密だ。
「ありがとう、マホロちゃん!これで明日の宿題はバッチリだよ!」
「あたしもー!ありがとね!」
「いいのよ!どういたしまして!」
とはいえ、この調子だと本当に一ヶ月もあればフェアリス王国に帰ることができちゃいそうね!
はぁ、早く帰りたいなぁ。
人間界ではまほうの勉強ができないから、その分だけアカデミーのみんなに遅れをとってしまう。
せっかくまほうアカデミーに入学したときからずっと一位の座を守ってきたのに、まさか追放されるなんて思いもしなかった。
「(ちょっと同級生を石とカエルに変身させちゃっただけじゃない。なのに追放の罰だなんて、大袈裟すぎなんだから!)」
あのときのことを思い出して、また心の中で『ふんっ!』と怒りをぶつける。
見てなさい?
私が大きくなって、いつかフェアリス王国の女王様になったら、今まで私のことをからかってきたヤツら全員、絶対に許さないんだからね!
「じゃあマホロちゃん、あたしたちクラブ活動に行くね」
「クラブ活動?」
「マホロちゃんはどのクラブに入るかまだ決めてないんだっけ?」
「そういえば、小林先生に入りたいクラブがあったら教えてねって言われてたんだった」
この一宮小学校では、四年生になると、週に二日、水曜日と金曜日の放課後はそれぞれ自分の好きなクラブに入って活動するんだって教えてもらった。
体育クラブに、裁縫クラブやお料理クラブ、科学クラブに算数クラブに音楽クラブ……。
面白そうなクラブがたくさんあったはず!
「みんなは何クラブに入っているの?」
「あたしはお料理クラブ!アスカは体育クラブで、ユリは裁縫クラブ!」
ナズナが代表してみんなの分のクラブを教えてくれた。
「お料理クラブは料理を作るのよね?裁縫ってなに?」
「裁縫クラブはね?ミシンを使ってナップサックとかエプロンとか、あとはかわいいバッグやポーチなんかを作ったりするんだよ!」
そう言って、ユリは手に持っていたリボンがたくさんついた手提げぶくろを見せてくれた。
「これも裁縫クラブで作ったものだよ!リボンがいっぱいでかわいいでしょ!」
「す、すごいのね!こんなの自分で作れるの!?」
「そうだよ!マホロちゃんも興味があったら裁縫クラブにおいでよ!」
「あ、ちょっと!マホロちゃんは運動もできちゃうんだから、体育クラブのほうがいいって!」
「そんなこと言ったら、一番人気のクラブはお料理クラブなんだからね!マホロちゃんは一番が大好きって言ってたし、ここはお料理クラブに入るべき!」
「いやいや、体育クラブのほうがいいよ!なんたって、体育クラブにはマオくんだっているんだからね!」
「なっ!それはズルい!反則だし!」
「ちょっとぉ、みんな引っ張らないでよー!」
アスカとナズナとユリが、私を取り合ってグイグイと引っ張ってくる。
みんな楽しそうに笑っている様子を見て、心がまたホクホクとあたたかくなった。
授業が終わって、こうして放課後になっても友達が周りにいてくれるなんてはじめて。
まほうアカデミーにいたときには考えられなかったことだ。
周りの子たちが放課後遊びの約束をしていたり、グループになって楽しそうな話をしていたりするのを、私はいつもただ見ているだけだった。
『いいもん。私はみんなと違って勉強で忙しいんだから』
『遊んでる時間なんてもったいないだけだし!』
ずっと、そんなふうに思っていた。
“私はみんなと違う”。
そうやって他の人に強く当たって、みんなを突っぱね続けていたら、本当に友達ができなくなって、私は少しずつ一人になっていったんだ。
「じゃあマホロちゃんもクラブが決まったら教えてねー!」
「また明日ね!」
「……うん。また明日」
アスカやナズナたちは、ばいばいっと大きく手を振って教室を出ていく。
ポツンと誰もいなくなると、余計に寂しい気持ちが膨らんでいってしまう。
「……って、ダメ!暗い気持ち反対!」
私は“あの”優秀なマホロだよ!?
ウダウダと悩んでるヒマなんてないんだから!
今は一個でも多くキセキのカケラを集めなくちゃいけないんだ。
「よーし!今日は一人で学校探検でもしーちゃおっと!」
グッと握りこぶしを天井に突き上げて、ランドセルを背負いながら元気いっぱいに教室をあとにした。
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