第3話:マホロ、目標を決める!
──キセキのストーンって知ってる?
なんでも一つだけ自分のお願いを叶えてくれる、まぼろしの石なんだって。
キセキのストーンを手に入れるために必要なことは、ただ一つ。
それは『キセキのカケラ』と呼ばれるカケラを百個集めること。
この『キセキのカケラ』が百個集まったとき、それらが一つになって、はじめてストーンに変えることができるのだとか。
……と、いうことは、私がこの人間界でやらなくちゃいけないことは一つ!
「キセキのカケラを百個集めて、それをストーンに変えて、そして“フェアリス王国に帰らせて!”ってお願いすればいいわけね!」
学校から帰って、おばあちゃんが経営している花屋のお手伝いをしながら、自分のやるべきことをおさらいしていく。
まほうつかいが人間界で良い行いをすると生まれるとされる、『キセキのカケラ』。
たとえば何かをしてあげたときに感じる『感謝』の気持ちや、『嬉しい』、だとか、『幸せ』という気持ちが、キセキのカケラとなって現れてくるそうだ。
「要するに、学校中のみんなから感謝されればいいってことでしょ!?なんだ、簡単なことじゃない」
「マホロ、お花の水替えはできたかい?」
「こ、これからするところ!」
売り物用のお花が入っている容器には、たくさんのお水がたっぷり入っている。
このお水を毎日、朝と夕方に入れ替えてあげなくちゃいけないのだけど、その作業がすっごく大変なの!
容器は重たいし、お水はピチャピチャ飛び散るし……最悪!
こんなの、まほうが使えたら一瞬でできちゃうことなのに。
「ねぇ、どうしておばあちゃんはまほうが使えない人間の世界なんかで暮らしているの?」
フェアリス王国でも最強のまほうつかいで、元女王様をしていたくらいおばあちゃんのまほうはすごいものだった。
まほうの本を何冊も出しているし、弟子もたくさんいた。
おばあちゃんの教え方はすごく上手で、みんながおばあちゃんを尊敬していたのに。
いくら人間界のごはんがおいしいからって、こんな不便なところに住みたいだなんて意味が分からない。
「確かに、まほうで簡単にできてしまうことを、自分の手や足を使って時間をかけてすることは大変なことだけれどねぇ」
「でしょう!?」
「でもね?ゆっくりと時間を使って、一から何かを作っていくことで、その人の『想い』や『気持ち』も一緒に込めることができるんだよ」
「……想いや、気持ち?」
「ほら、昨日おばあちゃんがマホロに作ってあげたお守りがあるだろう?あれは、『マホロがこの人間界でケガや病気をしませんように』っていう、おばあちゃんの気持ちが込められているんだよ」
「そう、なんだ」
ランドセルにつけている、おばあちゃんお手製のピンク色のお守り。
なんのまほうも込められてはいなかったけど、あの中にはおばあちゃんの気持ちが入っているってこと?
よくわからないけど、私のことを思って作ってくれたものは……ちょっとだけ嬉しいかも。
「ありがとう、おばあちゃん!私がフェアリス王国に帰ったとしても、たまにはおばあちゃんの家に遊びに来てあげるからね!」
「ハハハッ、それは嬉しいねぇ」
おばあちゃんはそう言って笑いながら、いくつかの切花を小さなお花のブーケにしていく。
黄色のひまわりに、オレンジ色のガーベラ。
うす桃色のコスモスや、赤色のダリアが一つに束ねられたブーケはすごくきれいだった。
まほうの国にもお花はあるけど、どちらかといえば、まほうの調合に使う薬草やハーブのほうが多い。
……お花を見てたら、なんだか元気になった気がする。
「よーし!明日からたっくさん、キセキのカケラを集めるぞー!」
目標は、一ヶ月以内に百個集めること。
こんなにも早く私がフェアリス王国に戻ってきてら、きっとお母さんやアカデミーのみんなはビックリするに違いない。
「フェアリス王国のみんなを驚かせてやるんだから!」
……今に見てなさい?
私が優秀だってことを、みーんなに見せつけてやるんだから!
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