第18話 ロリババア

 円卓の一番奥の長老と思われるエルフが、エヴァのゲンドウのように肘を円卓につき、両手を組んでこちらを眺めていた。円卓のメンバーは7人いたが、全員女性だった。彼女らの言葉は重々しく、場の雰囲気も大変重かったが、全員人間でいうところの10代中盤から後半の見た目であったため、場の雰囲気とちぐはぐな感じがした。

 「お主たちはマサユキの使いなのか?」

 心を読んでいるはずだから嘘を言っても仕方がない。

 「私は井上、彼は田中と申します。お目通りいただきありがとうございます。我々は賢者マサユキの信頼を得、その使いとしてこの場に来ています。しかし、我々の真の目的はそれではありません。この世界の人々を蹂躙し、殺しつくしているマサユキを倒すためです。」

 「嘘はないようじゃな。じゃあ、その動機はなんじゃ。」

 「我々も転生者です。今までのマサユキの行動を見るに、自分の脅威になりそうな転生者は皆殺しにしています。我々、特に田中はレベル上昇が著しい。隠れて暮らしていてもいずれ魔力探知で見つけ出されて殺されるでしょう。だったら、懐に飛び込んで逆に討伐してやろうと思った次第です。」

 「それで『ロリババア』が必要である、と。で、その『ロリババア』とは一体何なのじゃ?そんなものこの里にはないぞ?」

 我々転生者の考えていることや言葉、文字などはこちらの世界の言葉、文字に自動変換されているが、「ロリババア」という言葉はその概念そのものがないらしい。言葉を選んで慎重に説明する必要がある。間違っても、現世の同人誌などを想像してはいけない。

 「えっと、『ロリババア』というのはですね、年齢の割に若く見える女性のことを指す言葉でして、、その、簡単に言うとエルフの皆様のことです。」

 「エルフか。エルフならわざわざこんなところまで来なくても人里近くにもたくさんいるはずじゃが、、そうか。マサユキが絶滅させたんじゃな。口惜しいことじゃ。」

 エルフの長老は着物の袖で目元を拭った。田中もつられて涙ぐんでいた。

 「しかし、この里のエルフを連れて行っても、同じことが繰り返されるだけじゃぞ。何か策があるのか。」

 「そこで、『ロリババア』が必要なんです。」

 「??話が見えんが。」

 「失礼ながら、お年を召したエルフの皆様は我々の転生前の女性に大変似通っています。」

 「我々エルフは人間族とほぼ同じ見た目であるが、耳など特徴的なところは似通っていないぞ。それだったら普通に人間族でよいのではないか?」

 「いや、この世界の人間は我々の世界の人間と致命的に違う部分があるんです。それは、その・・」

 俺は口ごもったが、当然心は読まれている。

 「性器、じゃな。いやはやなんとも。」

 「そうなんです。転生人とこの世界の人間、獣人その他種族とでは凸と凹が丸っきり合わないんです。マサユキの転生前の人生も概ね把握しておりますが、彼は男女の営みというものを知りません。この世界で強大な力を手に入れてから頻繁に淫行に及んでおりますが、性器と性器を合わせるということしか知らないからか、おそらく魔法で自分の性器を巨大化させ、強引に突っ込み、多数の犠牲者が出ているものと思われます。」

 「おお、いたわしや。我々の種族にもたくさんの犠牲者がでたんじゃな。」

 改めて長老は袖で涙を拭った。田中もまたしても涙ぐんでいる。

 「ただ、800歳のエルフの方に協力してもらって、この世界では年齢を重ねれば重ねるほど、我々の世界の女性に近づくことがわかりました。長命のエルフ族だから可能なことです。できれば1000歳前後のエルフ族の女性を紹介してもらいたい。」

 「ここにいる全員、1000歳を超えておる。わしは1200歳じゃ。しかし、それとマサユキ討伐とがどうも繋がらん。説明してくれ。」

 俺はおもむろに咳払いし、プランの説明を開始した。

 「転生時に与えられるギフテッドを考えるに、『童貞性』があると思われます。ここにいる田中も童貞ですが、暗殺者としてのレアスキルを与えられています。この世界での成長も著しい。我が祖国では、30歳を過ぎて童貞だと魔法使いになれる、という伝承がございます。マサユキはまさにこれ。この世界に転生したことによって賢者と呼ばれるレベルまで魔力を開花させたのです。だったら、その童貞性を奪ってやればいい。マサユキはこの世界で好き勝手していますが、凹凸の合わない性器に身勝手に射精しているだけです。真の意味で童貞性を奪取することによって、魔力を大幅に引き下げることができると考えています。」

 長老は腕を組み熟考した後、口を開いた。

 「確かにその可能性は考えるに値する。しかしそれだけで奴を倒せるとは到底考えられない。プランはそれだけなのか?」

 「私もこれだけでマサユキが倒せるとは考えておりません。プランは大きく4つ用意しています。全ての手順を踏んで、最後に私の使用できる『バニシング』で元いた世界に追放しようと考えています。」

 「『バニシング』とな?そんな低級魔法が入るとは思えん。」

 「すべての段取りを経れば、私の『バニシング』はマサユキに効きます。確証があります。大枠は皆様にお伝えします。ただ、インプロビゼーションの要素が多くなってしまうので、臨機応変に対応できる機転の利くアクターをお借りしたいです。」

 「わかった。エルフ族の存亡がかかった仕事じゃ。ここは我々が直接やろう。特に最前線で奮闘するのはわしじゃ。他の眷属は年齢が若すぎる。」

 長老自らやると聞いて俺はしり込みした。

 「いや、キャラの作りこみもありますし、、」

 蚊の鳴くような声でつぶやいた。

 「わしじゃ不満かえ?何ならテストしてくれ。容姿、性格、口調、あらゆるものは希望通りにできるはずじゃ。早速お主でやってみようじゃないか。」

 長老は立ち上がり、着物をたくし上げた。身長は155㎝くらいだろうか。

 「いや、ま、ここは公衆の面前でもありますし・・」

 俺は顔の前で手をバタバタさせた。

 「じゃあ、奥の間でやろう。ついてきなさい。」


 「わしの身体、いかがじゃったかな?」

 「舌使いも膣も完璧でした。膣の具合は私の世界での処女と遜色がなかったです。まごうことなきロリババアです。。」

 俺は全裸であそこだけ手で隠して俯きながら答えた。

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