第15話 異世界キャバクラ
「やっぱ転生ものだと王道の『転ゴブ』なんだけどさあ、なんかこうグッとくるものがないよなぁ」
「そうですよね。ただ俺つえー!っていうか。」
「そうそう。俺つえー!ってのもいいんだけど、もう一捻りというかさ。あの、魔王になるところも悲しさを感じたい。恋愛要素もなく、人間ドラマ的なものが無いんだよなぁ。『あのすば』は逆に人間ドラマしかなくて、でもエロもなくて・・」
マサユキと田中の周りには色々な種族の女が侍っており、オタトークに相槌を打っている。マサユキはそのデップりした腹を揺らし、楽しそうに話している。転生してから、いや、転生前でもこんなに得意げに話せたことは無いのだろう。田中も仕事柄老人の話を延々と聞かされてるからか、相槌を打つのが上手い。俺は二人から少し離れた席で獣人族の娘からお酌を受けていた。
「いやでも、俺がいた時代の日本からドンピシャで来てくれて良かったよ。話も膨らむね。鈴木君も飲んでるか?」
マサユキから突然話を振られた。
「はい!いただいてます!」
「そういえば鈴木君はなんで死んだの?」
「あ、まぁあまり言いたくないんですけど‥自殺です。社畜でパワハラ受けてまして。」
前世で自殺を考えていたことも事実だ。自殺の方法にも詳しい。
「色々悩んでたんだね。まぁ、働いたら負けだよね。」
マサユキはぐいっとワインを飲んだ。ヒキニートだったからか、仕事関係の話には触れようともしなかった。
「そういえば鈴木君のスキルは何なの?転生後に貰ったでしょ?」
「いや、それがわからないんです。転生後に太田くんと廃墟をうろうろして、聞き込みしたんですけど、なんかギルド?に登録しないとわからないみたいで。で、そのギルドがなくなってまして。」
「ああ、それは俺がぶっ壊したんだよ。なんだか生意気な奴らばっかだったから。すまんかったな。」
「太田くんは才能があるからなのか、『隠れる』がすぐ使えたんですけどね。私は転生してもタダの人ですよ。ハハハ!」
夜もふけ、大宴会もお開きのタイミングになった。
「よし、お前ら、好きな女連れてけや。好きな娘いるか?」
田中はドギマギし始めた。
「いや、大丈夫です‥」
「なんだよ、お前童貞かよ!傑作だな!いいか、女にはチンポ突っ込んでやればいいんだよ!」
腰を振るジェスチャーをしながら、醜悪な笑顔でマサユキは田中の童貞弄りをした。生前はマサユキも童貞だったのだろう。初めて味合う優越感に浸っていた。
「鈴木はどうなんだよ?」
「私ですか?私は、その、お金で。でもピンサロです。」
「なんだよ、お前も童貞じゃんかよ!童貞兄弟!」
マサユキは俺たちを何度も童貞いじりし、俺たちが必死で演技する童貞的反応を楽しんでいた。
「今日はありがとな。明日からも頼むよ。」
そう言ってマサユキは取り巻きの娘を引き連れて上機嫌で寝室に行ってしまった。じゃあ俺たちもあてがわれた部屋に戻ろうか、と思ったら残っていた娘たちに引き止められた。
「あの、私たちを好きにしてください。」
田中は全力で首を振った。
「いやいや、そんなことできないよ!」
「でも、誰かを抱いていただかないと賢者様に殺されてしまいます。何卒お願いします。」
その場にいた娘全員が土下座を始めた。こうなったらしょうがない。田中は娘たちをみてとても不憫に思ったらしい。
「そうか、そうだよね。じゃあそこの娘だけ来てくれるかな。怖いことはしないよ。」
一方、俺はそれなりに性欲があるから、この機会にやりたいことをやろうと思った。
「俺はじゃあ、獣人の君と、エルフの君と、普通に可愛い君に決めた。俺に奉仕してくれよ。」
俺がそう言うと田中は少し俺に怒っているようだった。
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