第12話 カケル学園

 「大賢者閣下!些細承知いたしました!明日には手配完了させていただきます!」

 王の間から退出し、王宮の廊下を歩きながら私は頭を抱えていた。すでに国王、王族は皆殺しにされているし、宰相以下高級官僚もあらかた殺されている。殺された理由も酷かった。賢者が考えた「学園ごっこ」の準備手筈が悪かったからだ。そもそも我が国にも他の国にも「学園」なんて概念は無いのだ。普通、仕事は丁稚奉公で覚えるものだろう?だから当時の宰相は賢者の曖昧な説明をうまく消化して、辺境のエルフがやっていた魔法教室を参考に「学園」を作り上げた。王宮を改造し、「講堂」を作り、教師、生徒を配置した。そして賢者へお目通りした。ここまでは良かった。賢者も「箱」には満足したようだった。だが、周りを見回して顔が憤怒に変わった。

 「なんで俺の同級生が全員男児なんだよ!あとあのヨボヨボの教師はなんだ!俺をなめてるのか!」

 ということで、宰相は即業火に包まれた。この失敗を踏まえて、次の宰相は役者を全員若い女性で揃えた。これはこれで賢者は満足し、全員をレイプしていた。あらかたレイプが終わると「こういうことじゃねぇんだよ!幼馴染の同級生との淡い青春とかそういうのなんだよ!」と癇癪を起こし、担当宰相は焼かれた。次の宰相は「ダンジョンで実る同級生との淡い恋愛」をテーマに脚本を書いた。キャストも厳選を重ね、一人の美少女を選出した。ダンジョンに取り残された2人は、ドラゴンに襲われる。美少女が自分を犠牲にして賢者を守ろうとした瞬間、賢者が覚醒してドラゴンを退治、その後二人は結ばれる。完璧な台本のはずだった。しかし、ドラゴンが現れたタイミングで何故か賢者が欲情し、美少女のレイプを始めた。その際、美少女が咄嗟に「変態!豚!」と賢者を罵ってしまった。美少女はレイプの後殺され、責任を取らされて宰相は焼かれた。


「これは一人の青年が世界を覆す物語」ごっこ

「学園の異端児」ごっこ

「いけ好かない貴族を懲らしめる」ごっこ

「侵略者を退け、世界に平和をもたらした」ごっこ


 などなど色々とストーリーが作られたが、結局どこかに難癖をつけられてその都度宰相は業火に焼かれた。

 上級貴族があらかた死んてしまったので、下級貴族の私が次の宰相になってしまった。で、オーダーを実現する羽目になったのだ。テーマは「魔法が使えない異端児が魔法社会で無双する」。もう何がなんだか分からないよ。どうすれば良いんだよ。

 執務室に戻り、テーマが書かれた紙を前に頭を抱えていたら傍らから声が聞こえた。


 「助けて欲しいですか?」

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