【関係者激白!前代未聞の警察内部資料流出事件の真実!】

以下の内容は、○○県警内部資料流出事件の犯人である真中亮太の死亡を受け、それから一週間後に東名テレビが夕方ニュースの番組内にて放送したものを文字に起こしたものである。真中は同事件を起こした後、その行方を完全にくらましてしまい、その消息は不明である状態が長く続いていた。その後彼は遺体で発見されることとなるものの、彼の死亡が確認された後、彼が死に至るまでの詳しい足取りが順につかまれていくこととなり、その内容は各種テレビや新聞などのメディアで詳細に報道されていった。しかし流出した資料はあまり重要度の高いものではなかったため、それほど世間からの関心を集めることはなく、各メディアも数字をあまりとれない現実を見て次第に報道から撤退していった。


この番組も当時の流れに乗る形で報道が行われ、ここではかつて真中と同じ警察本部で働いていたというXX達哉【※注釈1】氏に対してインタビューが行われる形で進行していった。その内容を以下に転記する。


――――――――――


ナレーション「警察内部の資料を流出させるという、前代未聞の事態を引き起こした男、真中亮太。男は何を思い、何を考えてそんなことをしてしまったのか。今回、我々取材部は真中亮太の事をよく知るという一人の男に接触することが叶った。果たして、真中はその胸の内にいったいどんな思いを抱えていたのか。その真相に迫る」


レポーター「XXさん、この度は我々の取材にお答えいただき、ありがとうございます」

XX「あまり話せることもありませんけど、よろしくお願いします」


ナレーション「真中をよく知るというこの男。実は真中とかつて同じ職場で働いていた同僚の一人だ。真中が内部資料を流出させたあの時、まさにXXは真中と一緒にいたという」


レポーター「まず、真中さんについてお聞きします。一体どんな方だったんでしょうか?」

XX「普通の真面目な警察官ですよ。警察を志したのだって、困っている人をとにかく助けたいから、って言ってましたね。休みの日も勉強や体のトレーニングなんかを入念に行っていましたし、まさに警察官の鑑、みたいなやつでしたね。働きすぎて病気になることだけを周りは心配していました」

レポーター「それを聞くと、真中氏はとても内部資料を流出させるような人ではないという風に思われるのですが、そのあたりはどう思われますか?」

XX「もちろん私も同じ思いですよ。だから最初にその話、内部資料が外に出回ったって話を聞いた時は、どこかのろくでもない奴が流したんだろうって思いました。それがまさかあの生真面目な真中が流していただなんて、とても信じられませんでしたね。私だけでなく、彼の事を知る人間ならみんながそう思ったことと思います」


ナレーション「真中がこんなことをするとは思えなかったと語るXX氏。では果たして真中氏の目的とは、一体…?」


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ナレーション「これまで闇に包まれてきた真中氏の行動。今回、XXさんが初めてその思い口を開いた」


レポーター「真中さんは、どうしてそんなことをしたのでしょう?」

XX「彼は何も考えずにこんなことをやるような男ではありませんから、なにか理由はあるんでしょうけど…。ただ、いろいろ考えてみたんですけど全く思い当たるものがないんですよね…」

レポーター「いろいろ考えた、というのは?」

XX「例えば、例えばですよ?流出した資料が国際的犯罪組織にまつわるものであるとか、本部内の汚職に関わるようなものであるとか、あるいは第三組織に壊滅的な被害をもたらすような内容が記載されている資料であったなら、その動機は推測しやすいと思うんです。でも真中が流出させた資料は別にそう言ったレベルの物ではないというか、ただの一交差点に関する事故の報告書でしょ?それをわざわざ自分の身を危険にさらしてまで流出させて何になるっていうんですか?誰が得をするっていうんですか?もちろん真中自身にだって何の得にもならない事でしょう。だから全く動機が分からないんですよ」

レポーター「その動機は、XXさんたちにもお話にならなかったんですか?」

XX「そうです。全く」


ナレーション「真中氏の動機は、彼の事を近しい距離から見てきたものでもさっぱり分からないという。しかし、騒動の後の真中氏には妙な印象を抱いたと、XX氏は語る」


XX「真中が資料を流出させた後、すぐに行方をくらましたと言われていたでしょう?でもあれは実際には少し違っているんです」

レポーター「違う、というのは?」

XX「実は真中は、あの後しばらくは本部にいたんです。どこにも消えてはいませんでした」


ナレーション「なんと、ここでXX氏は我々に衝撃的な事実を語った!騒動を起こすと同時に行方知れずだと言われていた真中氏は、実際にはそうではなかったというのである!」


XX「実は…。騒動の直前くらいからかな?真中は妙な言動を見せ始めたんですよ。ただもちろん彼は一介の警察官であるわけで、国民の見本となるような見てくれを求められるわけです。しかしそれが危うくなってしまっていった。ゆえに上の方々は、彼を表に出さずに専門の病院に入院させることとしたんです。で、入院の日が間近に迫っていた時、真中は事件を引き起こしたわけです。その後は当然そのまま病院送りになって、治療を受けることになりました。が、広報部は警察官の精神病には非常に敏感ですから、行方をくらましたってことにしたんです。まぁ別にそれで困る人もいませんし、私もそれでいいのかなって思ってました。その方がご家族にも説明しやすいですしね」


ナレーション「当取材部はついに、新事実を聞き出すことに成功した。取材班は続けて、さらなる真実の追及にかかる」


レポーター「なるほど。では、その真中氏の妙な言動というものについて詳しくお話を聞かせていただけますか?」

XX「なんて言うんですかね…。急に大きな声で叫び始めたり、本部の壁に大きな文字で落書きをし始めたり…。まぁ、そういうやつです」

レポーター「その内容、覚えておられますか?」

XX「「俺は身代わりだ!!!」とか、「アンキュウってなんだ!!!」とか…。最後の方はちょっとひどくて、「XXはこの手で全員殺さないといけない!!」とか言い始めたり…」


ナレーション「その事を話すとき、XX氏はややその表情を暗くしていた。相当に深刻な状態だったのだろう」


XX「事件の後は、もっと不気味になりました。急にフロアの床にひざまずいたかと思ったら、そこらにあるホコリ?かなにかを一生懸命両手を広げて集め始めるんです。毎日清掃員さんが掃除して綺麗にしてくれているのに、それを言っても全くわかろうとしないで…。その事も医師の先生に相談したら、おそらく強迫性障害でしょうと…。専門の先生にそう言われてしまったら、もう我々にはどうすることもできませんからね。ただただ彼の状態が回復してくれることを祈るしかできませんでした」

レポーター「では、最後に彼の様子を見たのはその時が最後だったと?」

XX「そうなりますね…。なにせ、あの後真中は病院を抜け出してしまって、本当に行方不明になってしまったんです。私が次に真中の事を聞いたのは、まさに彼が遺体で発見された時でした」


ナレーション「動機不明の内部資料流出に、真中氏の精神異常。取材を進めれば進めるほど、ますます謎は深まっていくばかり。果たして我々は、不可解で不気味なその真実にたどり着くことができるのか。次回、XX氏はさらなる衝撃的な言葉を我々に告げるのであった!」【※注釈2】



――――――――――


【※注釈1】

放送上では実名にて報道が行われていたものの、この名字は管理人様が調査を行っているものと同じものであったため、同じ名字の方への風評被害を防止するためにここでは伏字にさせていただきます。

【※注釈2】

ただし、次回放送の時はプロ野球中継延長のため放送中止となり、以後今回の特集の続きが放送されることは現在に至るまで実現していない。

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